数学の問題はお金で考える。一週間で中学英語がやり直せる本
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『中学数学のつまずきどころが7日間でやり直せる授業』(西口 正著、日本実業出版社)の著者は、日本一の塾激戦地といわれているという千葉県の津田沼で、20数年間にわたり学習塾を経営してきた人物。本書で紹介されている手法の多くも、「数学嫌いな生徒にもなんとかわかってもらいたい」と知恵を絞ったものばかりなのだそうです。
数学のおもしろさ、楽しさを皆さんにお伝えして、数学嫌い、勉強嫌いを撲滅するのが私に与えられた大きな使命だと固く信じ、この本を執筆させていただきました。(中略)また本書は、数学嫌いをただ克服するだけでなく、それを克服したうえで、中学数学の難しいポイントをたった7日間でしっかりやり直し、そして成績を何とか良くしたいと考える人に向けて執筆しています。(「はじめに」より)
注目すべきは、著者が「うっかりミス」を減らすことの重要性を強調している点。
数学の試験で手も足も出ないような難問はあきらめもつきますが、うっかりミスは悔やんでも悔やみきれません。このようなうっかりミスの本当の原因は練習不足なのですが、「今回は、たまたま間違えた」と軽く考える生徒が非常に多いのです。そのような生徒は、毎回毎回うっかりミスを繰り返してしまいます。そこで、私は「基礎・基本を徹底的に反復練習して、数学の底力をガッチリ固めることこそが、うっかりミスを減らし、学力向上への一番の近道」と結論づけ、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)方式で毎日の指導にあたっています。
ちなみに「基礎がなによりも大切」であるという考え方が根底にあるため、数学用語の解説や、わかりきったような公式・定理も多数掲載しているのだそうです。つまり、「学びなおし」には最適だということ。そのなかから「1日目 苦手な中学数学をやり直すための第一歩」を見てみたいと思います。
数学の問題はお金で考える
数学嫌いな中学2年生がよくつまずく、次のような数学の問題があるそうです。
2ケタの自然数がある。この自然数の一の位と十の位の数を入れ替えたあとの数は、もとの数との和が77で、もとの数より9小さくなるという。もとの数はいくつか答えなさい。(8ページより)
こうした問題を見ると頭が混乱し、パニックに陥ってしまうということ。「もとの数を文字で表してみよう」と促すと、(xy)や(x+y)など、さまざまな答えが返ってくるというのです。そんなとき、著者はポケットに忍ばせたお金(10円玉3枚と1円玉4枚)を取り出して生徒に見せながら、「ここにお金があります。いま、金庫から出してきたばかりの先生の全財産です(笑)。さて、いくらあるでしょう?」と切り出すのだとか。
当然ながら、数学嫌いな生徒も「34円!」とリアクションします。そこで著者は、「なぜ、わかったの?」とまた質問するのだといいます。返ってくるのは、「10円硬貨が3枚で30円、1円硬貨が4枚で4円、合計で34円」との答え。
もとの数字を(xy)や(x+y)と間違えた生徒も、このようにお金をイメージして具体的に考えれば、間違えることはなくなるというのです。事実、学習塾を20年以上経営してきたなかで、こうしてお金を例にした質問に対して「34円」と答えられない生徒はひとりもいないといいます。たしかに、それはそのとおりでしょう。
しかし(xy)(x+y)のように漠然とした表現の問題になると、答えられる生徒は激減するというのです。それもまた、納得できる話なのではないでしょうか?
「2ケタの自然数がある。この自然数の十の位の数をx、一の位の数をyとする」は、
→10円硬貨がx枚、1円硬貨がy枚あると考えます。
→10円x枚で10x円、1円y枚でy円
→合計して(10x+y)円
→10x+y
ここまではわかりますね。
(9ページより)
今度は、「この自然数の一の位と十の位の数を入れ替えた数」は、
→10円硬貨がy枚、1円硬貨がx枚あると考えます。
→10円y枚で10y円、1円x枚でx円
→合計して(10y+x)円
→10y+x (←x+10yでもOK)
この2つの数の和が77なので、
(10x+y)+(x+10y)=11x+11yより、
→11x+11y=77……①
(9ページより)
次に2つの数の差ですが、「どちらが大きいか」に着目するのだそうです。
「入れ替えたあとの数は…もとの数より9小さくなる」とあり、
(もとの数)>(あとの数)なので、
(もとの数)から(あとの数)を引くと、
(10x+y)—(x+10y)=9x=9yとなることに。
その差が9なので、
→9x—9y=9……②
式①と②の係数(xとyの前についている数字)を小さくし、またyを消去するために、
式①÷11 + 式②÷9として、
x+y=7
+)x-y=1
2x=8
x=4 これを式①に代入して、y=3
重要ポイント
ここで問題を読み直して何を聞かれているのかを再確認!
(10ページより)
この問題で聞かれているのは、もとの数。十の位の数が「4」、一の位の数が「3」なので、「43」と答えるということです。(8ページより)
練習問題
さて、ここでは初級(中1レベル)、中級(中2レベル)、上級(中3レベル)、合計3問の練習問題が紹介されています。
①【初級問題】(中1レベル)
一の位の数が8である2ケタの数がある。一の位の数と十の位の数を入れ替えると、もとの数より27大きくなるという。もとの数を求めなさい。
②【中級問題】(中2レベル)
ある2ケタの自然数がある。一の位の数と十の位の数を入れ替えると、もとの数より54大きくなるという。もとの数を求めなさい。
③【上級問題】(中3レベル)
連続した3つの自然数のうち、最も大きい数と最も小さい数の積が真ん中の数の8倍より1小さいという。これらの自然数を答えなさい。
(11ページより)
練習問題の解答と解説
① 58
十の位の数をxとすると、もとの数は10x+8、あとの数は80+xと表せます。(もとの数)<(あとの数)より、
(80+x)—(10x+8)=27
これを解いて、—9x=—45 → x=5、聞かれているのはもとの数なので、58となるわけです。
② 17、28、39
もとの数の十の位の数をx、一の位の数をyとすると、
もとの数は(10x+y)、あとの数は(10y+x)となり、
もとの数)<(あとの数)より、
(10y+x)—(10x+y)=54、
9y—9x=54、両辺を9で割って、y—x=6 → y=x+6
計算できるのは、ここまで。
ここで、xもyも1ケタの自然数なので、
x=1のとき、y=7 → もとの数は17
x=2のとき、y=8 → もとの数は28
x=3のとき、y=9 → もとの数は39
x=4以上のとき、yが10で2ケタとなり不適(xとyは1ケタ、つまり0〜9なので、10は答えとして適さない)になるわけです。このように、計算だけでは答えが出ない場合もあるのだとか。
③ 7、8、9
「連続した3つの自然数」とありますが、ケタ数が不明なので、真ん中の数をxに。すると3つの数は(x—1)、x、(x+1)と表すことができ、(x—1)(x+1)—8x—1が成り立ちます。この式を解いて、
x²—1=8x—1
x²—8x=0
x(x—8)=0より、
x=0、8
x=0のとき、3つの数は−1、0、1となり、—1は自然数ではないので不敵。
x=8のとき、3つの数は7、8、9となり、適しているわけです。
(12ページより)
「中学数学からやりなおしたい」という思いを密かに抱いている方は、実のところ少なくないはず。ところが、「現実的に時間がなくて…」という問題もあることでしょう。しかし、たった7日間でクリアできるのであれば、ビジネスパーソンにも大きな利用価値がありそうです。気になる方は、一度手にとってみてはいかがでしょうか?
印南敦史