こんにちは。
AINOW編集長の亀田です。
今回は全脳アーキテクチャ若手の会主催の人工知能 + 認知科学 + 神経科学 異分野交流会レポートをお届けします。
このイベントは、人工知能について、各学問の権威の方をお呼びして、知能を作るにはどうすればよいのか?様々な角度から意見を交換する場でした。人工知能というと工学や機械分野でのイメージが強いですが、自律した知能なくして人工知能とは呼べません。自律した知能をどうやって作ればよいか、各学問の意見を一緒に聞いて、考える貴重イベントをレポートしていきたいと思います!
会場はYahoo!のLODGE
とてもキレイで、こういったイベントにはピッタリのスペースでしたよ。
それではコンテンツをご紹介していきます。
全脳アーキテクチャ若手の会 代表 大澤 正彦
まずは初めに代表の大澤さんからご挨拶、Facebookの会員数も2年で1,500人を達成。
神経科学は中から人間を調べる、認知科学は外から人間を観察する、人工知能は作って確かめる、人の知能に迫ろうと思ったときに、関係ない学問はない、様々な学問の知見を持ち寄るべきとのこと。今までこのような学問を跨いだイベントがなく、大澤さんはこのイベントをやりたくて、全脳アーキテクチャ若手の会を立ち上げたと行っても過言ではないそう。
ドラえもんを作りたいという大澤くんの想いが詰まった挨拶に、会場の方々の心にも響いていることを感じました。
若手の会クロスオーバー
今回のテーマは「アテンション(注意)」
各分野から見たアテンションの定義や活用方法について、発表した後に議論を交わしましたよ。
認知科学の分野
認知科学的には仮説を立てて、人間の行動を観察していくので注意に関しては非常に重要であるとのこと。
世の中の無数の情報があり、人間は生きていく中で常に様々な情報に注意する必要性がある、このような視覚探索には「特徴探索」「統合探索」の2種類があるのだとか。これらは、特徴統合理論と呼ばれ「注意」は位置を介して特徴を結びつける役割がある。この理論を基に神経科学や工学の分野でさらに研究が行われたそうです。実際に色の付いた棒を探すという行為を用いて説明されており、探索行動をイメージがしやすかったです。
神経科学の分野
続いて、神経科学からみた注意について、神経科学では、注意を向けている時と向けていない時の神経細胞の動きを観察することで研究をしているそう。
脳は感覚入力のうち一部だけを優先的に処理をして外界の認知や行動の制御に用いている。注意には「外発的注意」と呼ばれる顕著な刺激に寄って受動的に生じる注意と「内発的注意」と呼ばれる能動的に制御し、特定の情報に向ける注意の2種類があり、具体的にはサルの注意を例に神経細胞の動きを解説頂きました。これらの注意の結果、Turning curveという感覚系ニューロンの応答特性が変わっていく模様も数理モデル化されているそう。
工学(人工知能)の分野
現在では人が画像・映像を見た時にどの部分に注意しているのか記憶して測定することができる。
画像枚数、多種多様な画像を集めて、その注視点を計測することで人間のような注意機関を獲得することができる。しかし、だまし絵のような人間が錯覚してしまうものは認識できない。
こで、深層学習を用いて近しい画像を大量に解析することで結果を収束させていく手法を取っている。最近は研究が少し止まり気味、静止画だけで本当にいいのかと思うところもある。
注意1つでも意見が異なるディスカッション
工学ではデータ駆動科学の正確さに問題があると思っていて、データとして確実ではないものは実装することができない。工学的な正解のある分野での「注意」は実装できているので必要ないが、認知や脳科学でいう感覚的な「注意」が入ることで正確性が上がるのであれば必要であると考えているそう。
一方、認知科学と神経科学では注意はとても重要な要素で、人間がなぜそう考えて、何を見ているのか理解する上で必要なるそう。人間の環境によっても変化するので正しい注意を理解する上ではデータの取得と認知を超えた部分も考慮すべきとの意見が出ました。
このように注意1つにフォーカスしても各分野で解釈の仕方が異なるのが現状です。しかし、より良い知能を作るには異分野での交流は必要になってくる。そこでお互いにディスカッションする事が大事ではと八木さん。
最後に注意は人工知能に必要かどうか、司会の芦原さんより投げかけられましたが
7割以上の方が必要と手を上げていらっしゃいました。
人工知能の未来 トークセッション
次のセッションは、玉川大学 大森先生、ドワンゴ人工知能研究所 山川先生による人工知能の未来について語るセッション。大森先生より神経回路学会のポジショニングマップが提示され、これまでの人工知能の歴史と現在の動向を振り返りが行われました。
先生方のプロフィールはコチラ。
玉川大学 工学部 機械情報システム学科 教授
玉川大学 学術研究所 所長
大森 隆司 先生
ドワンゴ人工知能研究所 所長
NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ 代表
人工知能学会 編集委員長
電気通信大学 大学院 情報システム学研究科 客員教授
玉川大学 脳科学研究所 特別研究員
人工知能学会 汎用人工知能研究会 主査
産総研 人工知能研究センター 客員研究員
山川 宏 先生
知能開発と認知科学・神経科学の歴史
まずは、知能の定義と歴史について2人の先生からそれぞれの立場からお話いただきました。
知能の定義は難しい、一番はじめは心理学から知的な行動を明らかにしてきた、その後、内部でどのように動いているか理解するために認知科学が登場した。それとは別に脳の構造理解から知能を知る学問だったのが神経科学、認知科学と神経科学も最近になって繋がってきたそう。各学会の立ち位置を整理すると以下のようになるそう。
AI技術を使いたい
→ 人工知能学会
脳ベースの知能を作りたい
→ 神経回路学会
知能のメカニズムを知りたい
→ 神経科学学会
→ 認知科学学会
自律した知能とは人間のようである必要はない
次に動物シーンと身体性についてお考えを頂きました。
大森先生からは知能について、人間のような身体性を持っていれば良いとは思うが、特別人間と同じような必要はないと考えているそう。目的に沿って作られるのではと思う。
山川先生からも、知能は自立性を持っているが体は工場のプラントであることは考えられる。体は人間でも知能のアーキテクチャは全く異なることもあるとも思う。もちろん、様々なシーンに対応できることが素晴らしい。最近の人工知能開発の観点では、人間と同じような価値観をもっている方が望ましいと世界的に言われている。その方が人工知能が人間と寄り添う際にお互いに理解がしやすくなるからだとか。
最後に参加者の方より、大森先生、山川先生はどのような人工知能を作りたいのか?シンギュラリティが発生するタイミングや起こったことをどう認識するのかといった質問が投げかけれました。
山川先生からの回答として、人に近い人工知能は作りたいが、人と同じである必要なないと考えている。数多くのAIは道具ではあるが、そこに自律性を与えるために現在研究をしているそうです。シンギュラリティの発生タイミングについては、各産業において順次発生し、本当の意味でシンギュラリティが起こったと認識するのは社会が混乱した時と推測されていました。
2047年知能へのロードマップ
登壇者
- 筑波大学 助教 大澤博隆先生
- 電気通信大学 特任研究員 倉重宏樹先生
- ドワンゴ人工知能研究所 上席研究員 水谷治央先生
ファシリテーターは大澤さん、各分野研究の最前線で活躍されている3人の先生に登場頂き、各々の分野から見た30年後の知能についてディスカッションして頂きました。まずは、各先生方より研究テーマのご紹介から。
まずは、大澤先生よりHAI(ヒューマンエージェントインタラクション)の研究についてご紹介頂きました。研究室時代に、ロボットに抱っこされて嬉しく感じた事から、ロボットとのコニュニケーションに興味を持ち始めたそう。
主にエージェント(人間らしさをもったロボット)の応用例の説明が大変おもしろかったです。
道具を擬人化したり、人同士を混ぜた遠隔地とコニュニケーションできるエージェントなどが紹介されました。大事なのは他者らしさについて調べること、相手の気持ちになって考える人工知能を作っていきたいとのことでした。
続いて、倉重先生より知能の発展の理解について、2047年に知能はどうなっているか認知神経科学の立場から考察を頂きました。
2047年ヒトの知識獲得や世界観形成を支配する「目的関数」がわかり、ヒトが自分や人類を何者にしようとしているのかわかったりするのではと考えているそう。また、段階的に知能は進化していき2019年、2023年と脳の構造解析が進み、人工知能も獲得できる知識量と処理速度が上がることで、知能の仕組みが明らかになっていくとお話されていました。
最後にコネクトームと汎用AI研究について水谷先生より
神経科学で研究テーマにしていた、コネクトームに関する仕組みを動画で非常にわかりやすく解説頂きました。ドワンゴ人工知能研究所に来る前は、脳内の構造についてパターンを明らかにしてきた、現在はコンピューター上に脳の回路と機能を再現するこの全脳アーキテクチャに魅力を感じて、コネクトームアーキテクチャから人工知能を作っている。WBAI(全脳アーキテクチャイニシアティブ)だけでは開発できないので、WBAハッカソンを開いて、汎用人工知能共創開発の場を設ける社会実験を一昨年から始めたそう。
ここで大澤さんより、テーマの投げかけ。
人工知能を作る上で必要な研究のバックグラウンドを持った御3方に公共の場でケンカしてほしいとのこと(笑)
まずはそれぞれの先生の世界観についてご意見を頂きました。
水谷先生は自分の想像を超えるのが世界観、仮説を持たずに実験する事を好むそう。
大澤先生は他者の持つエージェントの世界観と環境の世界観は別ではと考えているとの事。
倉重先生は知識獲得によって形成されると考えている、具体的には長期記憶になるのではないか。
再び、大澤さんより、注意のトークでもわかったように、1つのテーマをとっても意見が異なるのがサイエンス。サイエンスは各分野で1つのテーマがわかるとさらに広がっていくが、人工知能の開発においてこの広がりが続くのか、それとも収束するのか?
水谷先生からは知能は壮大な研究なので広がると思う。宇宙を理解することに近いのではと思っているそう。しばらくはこの状態が続きどこかで1つに収束していくかも知れないとのこと。しかし、時間がなくなってしまったので、残念ながらここまで…
最後に何を明らかにしたら研究者ライフを締めくくれるかのか?先生方より一言づつ頂きました。
大澤先生は、知能のサイエンスと人間のサイエンスは分離してくるのではと思う。
倉重先生は知識獲得の世界観をテーマに適切な大きさと曖昧さをもってやっていきたい。
水谷先生は、とにかくマッピング脳の構造を明らかにしていきたい。
総括 (異分野交流会を振り返って)
最後のセッションは総括ということで、全脳アーキテクチャ若手の会の女子が集まり、トークセッションが行われました。
テーマは「分解 × 統合」。まずは、総括、各学問は研究を掘り下げて分解するものだと思う、しかしこれを繋げるだけではうまくいかないので統合する際に工夫をすることが必要でそのヒントが本日は見つかったのではと思うと感想を述べられていました。
次にさかき先生から、やはり専門的な研究論文は難しく一般の人にはわからないし読まない。
そして、論文が評価されないと研究は埋もれてしまうが、各学問の研究を繋げてより一般の人がわかりやすいようにするのが作家の仕事。研究者ではないアプローチで感動を付け加えることで人工知能の未来について伝えていきたいと感想を頂きました。
WBAIから板谷さんは、様々な研究はされているがどのコニュニティもそこまでパッとしない笑
何か1つのテーマに全力で向かう形が欲しいと。
そして、福岡から来た九州支部代表の上妻さん、文学部の認知心理学を専攻しているそう。
やはり様々な学問の交流が大事だと再認識されたそう。
最後は慶応大学の今井研究室からHAIを研究して、人間と会話できるロボットを作りたい大藤さん
本日のセッションは工学の立場からも再度考え直して行きたいと思ったそう。
後半は「統合」について、統合がアートだとしたらキャンパスに何を書くかだと思うので、それぞれどんなキャンパスで絵を書きたいか意見が交わされました。
さかき先生からは、君の名はがブームした理由にヒントが有ると思う。
あれは、一般の方から認知され評価されたからだと思う。研究に関しても一般にわかりやすい形で広がっていくとさらに資金も集まるのでは(笑)とのこと。
板谷さんからは楽園追放のAIを例に、人間とAIが寄り添っていくことがキャンパスの土台ではないか。
そして、上妻さんは今何をしているのか情報共有することをもっと意識すると統合がやりやすいのではと思う。キャンパスは社会に還元できるものがいいとの事でした。最後に大藤さんからは、研究者の立場から一般の人にわかりやすいものを伝えられるものがキャンパスだと思う。
最後は色んなメンバーが入り公開ディスカッション。
全脳アーキテクチャ若手の会らしい、アットホームな空間で知能について様々な意見が出て盛り上がりましたよ。
三宅さんの進行で本日の異分野交流がこのように「分解」と「統合」でうまくまとめられました。
まとめとして、さかき先生からは、このような会がもっと続いて、学生の参加がさらに増えるといいと思う。さらに盛り上げていきましょうと会場に熱いコメントが投げかけられました。
閉会のあいさつ
何ヶ月も前から準備に大忙しだった大会委員長の門前さんからは、日本をAIで良い方向に導くため、論文の社会実装をもっと盛り上げて行きたいと締めくくられました。
代表/副代表の交代あいさつ
これはサプライズで驚かれた方も多かったのではないでしょうか?
この日から、全脳アーキテクチャ若手の会の代表/副代表は大澤さん、島田さんから八木さん、松岡さんにバトンタッチされました。いつも顔を合わせている仲間ですが、改めて世代交代を目の渡りにすると感慨深いものがありました。
人工知能開発にかける想いが詰まった異分野交流のまとめ
大澤さんが抱いていた夢のイベントが実現できて、本当に楽しそうな顔をしていたのが印象的でしたね。アカデミアの世界ではまだまだ交流する文化は少ないのかもしれません。さらにビジネスとアカデミアになれば尚更です。
そんな壁を取り去って、本気で人工知能を開発したい方々が全脳アーキテクチャには集まっていると思います。認知科学・神経科学・人工知能の3分野に加えて、ビジネスの力も取り入れた強力なコミュニティになった全能アーキテクチャ若手の会から目が離せません。AINOWも全力で広報サポートをして、さらに研究を盛り上げていきたいと改めて思いました。
今回の大澤さんは近々すごい研究成果を発表するそう。
AINOWでは、大澤さんに密着して取材をしていきますので、こちらもご期待ください!