6月も中旬になり、就職活動をすでに終えた大学生も多くなってきましたね。先日、就活を終えたばかりの大学生に、突然、相談をされました。
大学生「タカギさんだったら、面接でこの問題、なんて答えますか?」
わたし「どんな問題だい?」(ワクワク)
大学生「『桃太郎で、鬼ヶ島に向かうとき、ひとりハズすとしたら、誰?』です。」
わたし「喫茶店だったら、6時間くらい話せる最高の問題だね!」(キタッー!!)
【目次】
この記事では、答えのないものをいかに考えるか、ということを、この「桃太郎クビは誰」問題を通して、考えてみたいと思います。
人によって、答えはそれぞれですし、正しい答えなど存在しない問題ですが、とても面白い思考問題だったので、記事にします!
直感で、「猿」に
就職での面接でされた問題だったそうなので、質問されてから、考える時間は、さほどないのが普通でしょう。ですから、わたしは、直感で「猿」と答えることにしました。
「猿」をハズすことから決定し、それから理由をつけていく、ということになりますが、就職面接における実践的な問答方法であると思います。
直感で「猿」としたのは、なんとなく、「人間ぽいキャラは、桃太郎がいるからいらないのでは」、というのが理由なんですが、それをいかに理屈で埋めていくのか、が面白いでしょうし、「対人競技」としての面接を楽しむためにも、直感で答え、それに論理を《あとづけ》していきます。
それでは、わたしが考える、「猿をハズす」プロセスをご紹介します。
まず、宗教・民俗的な観点で、誰が必要か?
桃太郎はおとぎ話です。その話の中では、鬼は存在することが前提となりますので、鬼が存在する世界ということを想像しなくてはなりません。
メルヘンを基礎としている世界である以上、メルヘンを分解する必要があると考えます。
鬼とは、もともと、中国の鬼(gui)という、大雑把に言えば、幽霊を意味していたものが、日本に渡り、形を与えられたものです。
日本の鬼のイメージは、ツノがあって、トラ柄のパンツをはいている、ドリフの雷様みたいな姿ですよね。おそらく、今回の就職面接官の方のイメージも、それと同様のものであると思います。
このイメージは、鬼門の方位である「丑寅」(「艮」「うしとら」)から来ているもの考えられています。「艮」という方位が、忌むべき対象として考えられていたことが、わかりやすい例を出しますと、明治期に生まれた新宗教の大本は、出口なおに「艮の金神」が神がかりしたことが教団発生のきっかけですが、これは「本当は、正しい神様なのに、他の神に追いやられた」というスティグマを表しているのです。
閑話休題、この「艮」という方位の反対側が、「申」「酉」「戌」であるから、桃太郎は、鬼ヶ島にお猿さん(申)とキジ(酉)とイヌ(戌)を連れて行くとする説もあるのです。
ここで、仮説として、鬼ヶ島という場所に向かうために、桃太郎は《方角的に》奇跡的なパーティーを組むことになっているとします。
この《方角的》に鬼に強いということは、メルヘンの中に隠された宗教や信仰であるとすれば、キャラクターたちにも、宗教的な強弱があるのではないだろうかと考えてみるのも必要なのではないでしょうか。
わたしは、ここで、犬(狗、戌)が宗教・民俗的観点において、優位に立っているのではないか、と考えます。狛犬や、狼など、魔除けと結びつけて考えられていますし、古くから、幽世と現世を行き来する力があるとされます。
猿や鳥を祀った神社や、儀礼は存在しますが、日本において犬に対する信仰が広く見られることから、ここでは、犬に一票とします。
戦略的に、鬼ヶ島決死戦を考える。
情報はあるのか?
鬼ヶ島へ渡り、鬼と戦うことを考えたとき、疑問に思うことが多々あります。それは、「桃太郎は、どれほどの情報を持っているのか。」また、「他の人々、特に軍事力を持つ人も、鬼ヶ島に対する情報を持っているのか。」というものです。
鬼の戦力、そして、鬼ヶ島までの距離などの情報が、桃太郎一行や村の人々は共有していたのか、という問題は、非常に重要なものです。また、姫や財宝は、どこに保管されているのか、もしくは、すでに「なきもの」となっているのかなど、この「桃太郎物語」では、奪還作戦に必要な情報についての記述がありません。
話は変わりますが、アメリカ海軍特殊部隊のNavy SEALsがビンラディンの殺害作戦を準備した際には、ビンラディンが潜伏する建物と全く同じものを建設し、徹底した訓練を行った上で、作戦を決行しています。桃太郎の鬼ヶ島での戦いも同様に、敵地に赴き、最低でも、姫、次に財宝を奪還することが目的であるはずです。情報収集を徹底的に進める必要があります。
そして、鬼が、地位が高い女性という人質にうってつけの「姫」を的確に攫い、財宝を盗んでいることから、彼らには人間に近い経済観念やジェンダー観念があり、それは高い知性を持つ可能性があること示唆している、と考える必要があるでしょう。
なぜ、桃太郎なのか?第二次鬼ヶ島征伐はあるのか?
また、 桃太郎が鬼ヶ島に向かい、お姫様と財宝をとりもどす、という物語ですが、桃太郎は、単に勇気があるだけの男であるのか、それとも、姫を助ける必然性を持ち合わせているのか、など、桃太郎の存在意義への疑問があります。
ここで、桃太郎が戦死する場合のことも考慮しないといけません。その時には、第二次鬼ヶ島征伐が行われる可能性もあるはずです。
それは、桃太郎というヒロイズムを第一義に考えるか、それとも、姫や財宝の奪還を第一義に考えるのかによって、異なると思いますが、わたしは、後者の考えを採用しております。
そのため、この第一次鬼ヶ島征伐作戦が、桃太郎によって行われ、失敗に終わった時のために、この戦いの様子や鬼ヶ島内部の情報を伝える役目を果たす存在が必要になると思います。
この役目をキジに担ってもらいたいと考えています。キジは、この物語で唯一、飛ぶことができるキャラクターなのです。自力での帰還も可能なのではないでしょうか。
彼を戦闘要員ではなく、情報収集、偵察要員とし、この作戦が失敗に終わったとしても、桃太郎の故郷に鬼ヶ島の状況を知らせる役割を担ってもらいたいと考えています。
武器の共有性はあるのか?
猿を選ぶ利点として高い知能、そして人間に近い道具の操作が考えられます。しかし、鬼の持つ金棒は、猿が用いることができるサイズではないでしょうし、桃太郎の持つ剣くらいしか、使えないのではないでしょうか
この作戦では、犬やキジは道具を使うことができないので、猿の能力に期待したい部分もありますが、鬼ヶ島では鬼が標準サイズであることを考えると、猿にが道具の操作を担うことがあるのか、少し疑問です。
猿を残す利点
その時、彼/彼女の高い知能は、この作戦にのぞむ桃太郎一行の戦力や様子を人々に伝えることに活用してもらいたいのです。
鬼ヶ島征伐作戦が失敗に終わったとしても、キジと猿の情報を合わせ、第二次鬼ヶ島征伐作戦を準備するのが良いのではないでしょうか。
ちなみに、猿やキジのイメージは、映画『男たちの大和』の松山ケンイチさんや、映画『君を忘れない』の池内万作さん、です。
最近では、戦地で戦友の死を記録する兵士を描いた『ペリリュー』という作戦もあります。
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今回の記事では、桃太郎の物語で誰をハズすべきか、について考えてみました。
みなさんは、誰をハズすべきと思いますか?
桃太郎を考えるための参考文献
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