最もよく口にする飲み物は何ですか? 私はコーヒーです。ランチの後に、取材の合間の時間調整に入ったコーヒー店で、会社でパソコン作業をしながら。毎日だいたい2~3杯は飲むでしょうか。原稿を書いている今も、横にコーヒーカップが置いてあります。
コーヒーに多く含まれるのは、カフェイン。一昨年の暮れ、九州地方の20代男性がカフェインを大量に摂取して中毒死したと報じられて以来、カフェインの健康影響が話題になってきているようです。食品安全委員会が5月25日に開いた報道関係者との意見交換会でカフェインが取り上げられたので、参加しました。
会合は、国立医薬品食品衛生研究所の登田美桜・安全情報部第3室長が、カフェインに関する諸外国での対応状況と中毒の課題について話し、続いて食安委の佐藤洋委員長が「コーヒーと健康」のテーマで話しました。当日の話や食安委が出している資料などを参考にしながら、カフェインの健康リスクを考えてみましょう。
カフェインは、コーヒー豆や茶葉、カカオ豆などに天然に含まれているほか、食品添加物としてコーラなどの清涼飲料水などに入っており、眠気防止などの医薬品にも使われています。覚醒、利尿、鎮痛などのメリットがあるのですが、中枢神経系が過剰に刺激されるとめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠、また消化器管の刺激により下痢、吐き気といった症状を引き起こすこともあります。
米国で10年ほど前から、過剰摂取が問題になっています。カフェイン添加のサプリメントや、「エナジードリンク」と呼ばれる体力・持久力の補給などをうたうカフェイン入り清涼飲料水が出回ってきたためです。特にエナジードリンクとアルコールを一緒に飲むと、酔いを感じにくくなり、酒量が増えてしまいがちです。登田室長によると、ガムやピーナッツバター(なぜに!)などにもカフェイン添加商品があるとのこと。子どもが食べるものにも及んでいるだけに、懸念が深まっているそうです。
今年5月にも、サウスカロライナ州の16歳の男子が高校内で急死し、検視官が「エナジードリンクなどのカフェイン飲料を一気に大量に飲みすぎた」と指摘していると報じられました(※1)。
いったい、食品にどれくらいのカフェインが含まれるのか、そして安全な量は?
まず食品別に含有量を見ましょう。
なお、東京都による市販飲料のカフェイン含有量調査では、エナジードリンク26点で1本あたり14~180mgのカフェインが含まれていました。東京都は健康・栄養調査に基づき、都民が食品から摂取するカフェイン量の推定もしていて、1日あたり2011年度は134.7mg、12年度は138.8mgでした。(※2)
では、悪影響を起こさない量はどれくらいなのか。食品安全委員会の山添康・委員長代理によると、カフェインを代謝する能力には個人差があり、また肝臓の中のカフェイン代謝酵素が増減するため、同じ人でも作用が強く出たり弱くなったりということが起きます。人によって、状況によって、差が大きいのだそう。そんなこともあってか、毎日ずっと摂取しても健康に影響が出ないとされる量(1日摂取許容量・ADI)は設定されていません。ただ、世界保健機関(WHO)やいくつかの国では摂取の目安量が示されています。
体格や食習慣も違うので、日本人にそのまま当てはまるわけではないでしょう。とはいえ、参考にはなりそうです。1日にコーヒー数杯を楽しむことを恐れる必要はないけれど、健康な大人でも、コーヒーに紅茶、ほうじ茶、エナジードリンク、チョコに栄養ドリンク、サプリ、とあれこれ口にしていると、1日に400mgは突破することがありそうな気がします。疲れている時ほど、「元気」をうたう商品が魅力的に感じることでもあるし。妊娠中の女性や子どもは、さらに注意が必要でしょう。
登田室長は、現状では医薬品やサプリメントも含め「カフェイン量が多い製品を、誰でも簡単に購入できる」と問題提起していました。エネジードリンクを飲むのは青少年が多いでしょうし、眠気防止の清涼飲料水やサプリなどは、受験勉強をしている小中高校生がカフェインのことを意識せずに手に取ることもあるのではないかと気になりました。
なお、パッケージにカフェイン量を表示してある商品も多いので、購入時にチェックしてみてください。カフェイン添加の商品には、表示を義務づけてもよいのではないかと個人的に思います。また、スターバックスやローソンなど、カフェインレスコーヒーをラインアップに加えるところも増えています。
関連のURL
※1 BBCの報道http://www.bbc.com/japanese/39933040
※2 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/hyouka/26hyouka2.html
食品安全委員会ファクトシート「食品中のカフェイン」
https://www.fsc.go.jp/factsheets/
農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html
欧州食品安全機関のファクトシート「カフェイン」
http://www.efsa.europa.eu/en/topics/factsheets/efsaexplainscaffeine150527
食品安全委員会「報道関係者との意見交換会」資料
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20170525ik1
<アピタル:食のおしゃべり・トピック>
1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)
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