議会がなくなる?その理由は
あなたが暮らす町や村で、議会がなくなるかもしれない。これは、遠い将来の話ではなく、いま過疎の村で現実になりかねない事態です。議員のなり手不足が深刻化し、議会が維持できなくなる、いわば「議会クライシス」ともいえる状況に直面しているのです。一体なぜなのでしょうか。その理由を取材しました。
(高知局・野中悠平記者、ネットワーク報道部・岡崎靖典記者、角田舞記者、選挙プロジェクト・仲秀和記者)
(高知局・野中悠平記者、ネットワーク報道部・岡崎靖典記者、角田舞記者、選挙プロジェクト・仲秀和記者)
四国山地の中央に位置する高知県大川村は、鉱山が閉山された影響などで昭和40年代から人口が急減。ことし4月末時点の人口は405人で、離島を除いて全国で最も人口が少ない自治体です。
村では、議員のなり手不足が深刻です。平成15年には10だった議員定数を段階的に6まで減らしましたが、2年前の選挙でも新人は立候補せず、現職全員が無投票で再選しました。議員の平均年齢は70歳を超え、複数の議員が今期かぎりで引退したいとしています。
法律では、議員の欠員が定数の6分の1を超えた場合、再選挙を行う必要があります。
このため、2年後の選挙で現職2人が引退して新たな候補者が出てこなければ、再選挙が行われます。再選挙が繰り返されて多額の経費がかかるほか、村政が停滞して住民にも深刻な影響が及ぶおそれがあるのです。
村では、議員のなり手不足が深刻です。平成15年には10だった議員定数を段階的に6まで減らしましたが、2年前の選挙でも新人は立候補せず、現職全員が無投票で再選しました。議員の平均年齢は70歳を超え、複数の議員が今期かぎりで引退したいとしています。
法律では、議員の欠員が定数の6分の1を超えた場合、再選挙を行う必要があります。
このため、2年後の選挙で現職2人が引退して新たな候補者が出てこなければ、再選挙が行われます。再選挙が繰り返されて多額の経費がかかるほか、村政が停滞して住民にも深刻な影響が及ぶおそれがあるのです。
苦境に立つ過疎の村
四国山地の中央に位置する高知県大川村は、鉱山が閉山された影響などで昭和40年代から人口が急減。ことし4月末時点の人口は405人で、離島を除いて全国で最も人口が少ない自治体です。
村では、議員のなり手不足が深刻です。平成15年には10だった議員定数を段階的に6まで減らしましたが、2年前の選挙でも新人は立候補せず、現職全員が無投票で再選しました。議員の平均年齢は70歳を超え、複数の議員が今期かぎりで引退したいとしています。
法律では、議員の欠員が定数の6分の1を超えた場合、再選挙を行う必要があります。
このため、2年後の選挙で現職2人が引退して新たな候補者が出てこなければ、再選挙が行われます。再選挙が繰り返されて多額の経費がかかるほか、村政が停滞して住民にも深刻な影響が及ぶおそれがあるのです。
村では、議員のなり手不足が深刻です。平成15年には10だった議員定数を段階的に6まで減らしましたが、2年前の選挙でも新人は立候補せず、現職全員が無投票で再選しました。議員の平均年齢は70歳を超え、複数の議員が今期かぎりで引退したいとしています。
法律では、議員の欠員が定数の6分の1を超えた場合、再選挙を行う必要があります。
このため、2年後の選挙で現職2人が引退して新たな候補者が出てこなければ、再選挙が行われます。再選挙が繰り返されて多額の経費がかかるほか、村政が停滞して住民にも深刻な影響が及ぶおそれがあるのです。
町村総会とは
そこで、村が検討を始めたのが、「町村総会」の設置です。これは、議会に代わって有権者が直接、議案を審議する制度で、地方自治法に規定されています。これまで行政のチェック機能や、住民の声を政策に反映させるパイプ役などを担ってきた議会をなくし、有権者が一堂に会して予算や条例をみんなで決めていく仕組みを検討しようというのです。
引退したいけれど…
77歳の副議長、伊東喜代澄さんは、今期かぎりで引退したいと考えています。これまで何人かの住民に立候補を打診しましたが、断られ続けています。新たな候補者が見つからない状況で引退すれば、議会の存続が危うくなる可能性があります。
伊東さんは「議会の活動内容が十分に理解されていないことなどが今の状況につながったのではないか。町村総会の検討をきっかけに、村民が政治に関心を持ち、立候補を考える人が出てきてほしい」と、切実な胸の内を明かします。
若手の立候補に高いハードル
引退を希望する議員たちは、代わりに若い世代が立候補してくれることを望んでいます。
しかし、そこには高いハードルがあります。そもそも、村には、65歳以上のお年寄りを除いて、立候補できる25歳以上の住民は168人しかいません。
さらに、議員との兼業が禁じられている公務員などを除くと、事実上、議員のなり手は100人ほどに限られます。
しかし、そこには高いハードルがあります。そもそも、村には、65歳以上のお年寄りを除いて、立候補できる25歳以上の住民は168人しかいません。
さらに、議員との兼業が禁じられている公務員などを除くと、事実上、議員のなり手は100人ほどに限られます。
その100人についても、難しい事情を抱えています。
議員になれば、頻繁に議会などに出席する必要があるため、会社勤めの人が議員を続けるには会社を休まざるを得ず、仕事との両立が難しいのです。
村の森林組合に勤める36歳の福嶋基弘さんもその1人です。妻と2人の子どもがいて、月に15万円余りの議員報酬では、安すぎると考えています。
福嶋さんは「仕事が忙しくて兼業は難しいし今後、子育てにますますお金がかかるので議員になる自信はない」と話しています。
このほか、自分の仕事以外に、消防団や青年団などの地域の役員を複数掛け持ちする人もいて、立候補をためらう事情はさまざまです。
議員になれば、頻繁に議会などに出席する必要があるため、会社勤めの人が議員を続けるには会社を休まざるを得ず、仕事との両立が難しいのです。
村の森林組合に勤める36歳の福嶋基弘さんもその1人です。妻と2人の子どもがいて、月に15万円余りの議員報酬では、安すぎると考えています。
福嶋さんは「仕事が忙しくて兼業は難しいし今後、子育てにますますお金がかかるので議員になる自信はない」と話しています。
このほか、自分の仕事以外に、消防団や青年団などの地域の役員を複数掛け持ちする人もいて、立候補をためらう事情はさまざまです。
ことし中に方向性まとめたい
議員のなり手不足の対策が見えない中、大川村の和田知士村長は、12日の村議会で、「2年後に迫った村議会選挙で、立候補者が定数に足らない事態に仮になった時に備え、『村民総会』の調査を指示した。どうすれば村議会が維持できるのかを勉強し、ことし中に洗い出したい」と述べ、ことし中に町村総会の課題などを洗い出し、方向性をまとめたい考えを初めて示しました。今後、村や議会での議論が本格化する見通しです。
議会の危機全国でも
議会の存続が難しいのは、大川村だけの問題ではありません。
全国町村議会議長会によりますと去年7月時点で、大川村と同じく議員定数が6以下の町と村は、ほかに11あります。
これらの議会の議長に町村総会について聞いたところ、長野県王滝村は「過去に検討した」と答えたほか、北海道音威子府村、東京・青ヶ島村、奈良県黒滝村は「将来検討する可能性がある」と答えました。
多くの議長が「次の選挙で候補者が定数に届かず、欠員が出るのが不安だ」と述べたほか、「定数をさらに減らすことも考えている」といった声も聞かれました。自治体の規模にかかわらず、議員のなり手不足は、各地で深刻になっているのです。
2年前に行われた統一地方選挙では、全国373の町と村で議会選挙が実施されましたが、全体の23%にあたる89の町と村で無投票となり、このうち4つの町と村では欠員まで出る事態になりました。有権者の審判を経ないままでは、議会の正統性も問われかねません。
全国町村議会議長会によりますと去年7月時点で、大川村と同じく議員定数が6以下の町と村は、ほかに11あります。
これらの議会の議長に町村総会について聞いたところ、長野県王滝村は「過去に検討した」と答えたほか、北海道音威子府村、東京・青ヶ島村、奈良県黒滝村は「将来検討する可能性がある」と答えました。
多くの議長が「次の選挙で候補者が定数に届かず、欠員が出るのが不安だ」と述べたほか、「定数をさらに減らすことも考えている」といった声も聞かれました。自治体の規模にかかわらず、議員のなり手不足は、各地で深刻になっているのです。
2年前に行われた統一地方選挙では、全国373の町と村で議会選挙が実施されましたが、全体の23%にあたる89の町と村で無投票となり、このうち4つの町と村では欠員まで出る事態になりました。有権者の審判を経ないままでは、議会の正統性も問われかねません。
議会改革への1歩踏み出す
欠員が出た町の1つ、人口およそ5000人の北海道浦幌町は、議員のなり手を確保するため、対策に乗り出しました。
2年前の選挙では、議員定数を13から11に減らしたにもかかわらず、当初、立候補者は9人。告示日の前日にもう1人が名乗り出て、ギリギリで再選挙を免れた経緯があります。
危機感を抱いた議会は、なり手不足の解消に向けた議論を続けています。まず取り組んだのは、町民2000人を対象にしたアンケートで、町民が議会に何を求めているのかを把握しました。
その結果、「議員と町民の対話がない」という回答が多く寄せられ、議会は去年からスーパーマーケットなどを会場に住民と議員が気軽に交流できるイベントを定期的に開催しています。
2年前の選挙では、議員定数を13から11に減らしたにもかかわらず、当初、立候補者は9人。告示日の前日にもう1人が名乗り出て、ギリギリで再選挙を免れた経緯があります。
危機感を抱いた議会は、なり手不足の解消に向けた議論を続けています。まず取り組んだのは、町民2000人を対象にしたアンケートで、町民が議会に何を求めているのかを把握しました。
その結果、「議員と町民の対話がない」という回答が多く寄せられ、議会は去年からスーパーマーケットなどを会場に住民と議員が気軽に交流できるイベントを定期的に開催しています。
参加した住民のひとりは、「ふだんは敷居が高いが、こうしたイベントがあれば議員の人柄もわかるし率直に話をしやすい」と評価していました。
さらに、議会は子育て中の若い世代や会社勤めの人でも議員になりやすいよう、環境を整える検討も進めています。
アンケートで、なり手不足の原因について聞いたところ、「議員報酬が低い」などの回答が多く寄せられたため、報酬をおよそ6万円増やして23万円余りにする案を検討しています。
さらに、会社勤めをしながら議員活動をする場合には、会社に補助金を支給する案も検討しています。
さらに、議会は子育て中の若い世代や会社勤めの人でも議員になりやすいよう、環境を整える検討も進めています。
アンケートで、なり手不足の原因について聞いたところ、「議員報酬が低い」などの回答が多く寄せられたため、報酬をおよそ6万円増やして23万円余りにする案を検討しています。
さらに、会社勤めをしながら議員活動をする場合には、会社に補助金を支給する案も検討しています。
検討にあたる議会運営委員会の河内委員長は「必ず成果は出ると信じている。女性や若い人などいろいろな人が自分の考えを町民に訴える選挙戦になればいい」と話していました。
民主主義をどう守る?
設置に向けた検討が始まった町村総会について、地方自治に詳しい早稲田大学の片木淳教授は、「直接民主制を具体化したもので本来の民主主義の姿とも言え、積極的に評価したい」と指摘します。
その一方で、「有権者が村にどのような課題があるのかを日頃から検討し、対策を提案する姿勢がこれまで以上に必要になる。町村総会を運営するルール作りや、参加する有権者を確保する仕組みに加え、有権者が村政の運営に積極的に関わる覚悟をどこまで持つことができるかが今後の課題になるだろう」と述べました。
このまま、日本の人口が減り続ければ、議会の維持が難しくなる自治体が増えることも予想されます。民主主義の根幹を担ってきた議会をいかに存続させるのか、または、議会に代わって民意を政治に反映させていく町村総会の仕組みをどのように作るのか。
自治体によって人口や予算の規模などには大きな違いがあるため、それぞれの実情に応じた取り組みを今のうちから進めることが必要です。
その一方で、「有権者が村にどのような課題があるのかを日頃から検討し、対策を提案する姿勢がこれまで以上に必要になる。町村総会を運営するルール作りや、参加する有権者を確保する仕組みに加え、有権者が村政の運営に積極的に関わる覚悟をどこまで持つことができるかが今後の課題になるだろう」と述べました。
このまま、日本の人口が減り続ければ、議会の維持が難しくなる自治体が増えることも予想されます。民主主義の根幹を担ってきた議会をいかに存続させるのか、または、議会に代わって民意を政治に反映させていく町村総会の仕組みをどのように作るのか。
自治体によって人口や予算の規模などには大きな違いがあるため、それぞれの実情に応じた取り組みを今のうちから進めることが必要です。