機械学習、ニューラル・ネットワーク、ディープ・ラーニング……、今や人工知能に関するニュースを聞かない日はないほどになった。
はたして人工知能はどこまで進化するのか?“意味を理解する”人工知能は、実現できるのか?
人工知能学者として最先端を行く東大の松尾豊先生に聞く、「人工知能ってなんですか?」。(聞き手・構成:神崎洋治〔ITライター〕)
――人工知能が急激に脚光を浴びている今の状況を、どう感じられますか?
松尾 人工知能のアルゴリズムの多くはすでに60年以上前の1950年代から発表されていました。
そのなかには、たとえばロドニー・ブルックスの「サブサンプション・アーキテクチュア」のような考え方があります。
これは、昆虫のように、外の世界への反射的な反応の連続で、知的な振る舞いが実現できる、といった概念です。現実的な世界との対応を解決していくことから、人工知能を考えた。
他にも、立場は違いますが、マービン・ミンスキーや、ジョン・マッカーシーなどの科学者たちがさまざまなモデルを考え出しました。
強化学習の仕組みも昔からありました。今は、これらの多くは正しかったと思っています。
ただ、当時は「眼」がなかった。画像認識を飛ばしたまま、理論は先へ進んで行きました。
眼の機能は私たち人間を含めて、生物が生存確率を上げていくために必要な基礎となる能力のひとつです。
例えば「困難を乗り越える」「恋に落ちる」といった表現も、物理的に乗り越えたり、落ちたりするわけではありません。しかし、抽象的な概念にも、こうした視覚的、空間的な認知が関わっているわけです。
また、たとえば数学者は頭の中で絵を描いて考える人が多いと聞きます。人間には視覚から空間的な認知を得る能力が備わっていますが、生命や種の保存にかかわることだから、その能力があるのです。
人間のような高い知能の実現においても、やはり「眼」「ビジョン」による視覚、空間的な認知が基盤になるのです。