上野動物園のジャイアントパンダが出産 平成24年以来

上野動物園のジャイアントパンダが出産 平成24年以来
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東京・上野動物園のメスのジャイアントパンダ、「シンシン」が12日正午前、赤ちゃん1頭を出産しました。上野動物園のパンダの赤ちゃんの誕生は平成24年以来、5年ぶりです。
上野動物園のシンシンはことし2月末に、オスの「リーリー」との交尾が4年ぶりに確認され、先月中旬には妊娠の兆候が見られるようになり、動物園は出産の可能性があるとして準備を進めてきました。

シンシンは10日の夕方から室内を歩き回る姿が見られ始め、先週末に中国から招いた専門家と協議のうえ、11日から職員が24時間態勢で注意深く観察してきたということです。

シンシンは12日午前10時57分に破水したあと、午前11時52分に赤ちゃんを1頭出産し、赤ちゃんの鳴き声が確認されたということです。性別はまだわからないということです。

午後0時40分現在、シンシンが右の前足で赤ちゃんを抱いているということです。授乳しているかどうかは確認中だということです。
上野動物園は当分の間、24時間態勢で赤ちゃんの発育を見守ることにしています。

上野動物園のパンダの赤ちゃんの誕生は、平成24年にリーリーとシンシンの間にオスの赤ちゃんが生まれて以来5年ぶりで、自然交配での妊娠・出産はこの時以来2例目です。この赤ちゃんは6日後に死んでいます。

上野動物園は午後3時半から、記者会見を開き、詳しい状況を説明することにしています。

来園者から喜びの声

東京・上野動物園の前では、赤ちゃんパンダが誕生したというニュースを聞いて訪れた人たちから喜びの声が聞かれました。

生後6か月の息子を持つ28歳の母親は「前に出産した時はすぐに死んでしまって残念でしたので、時間はかかりましたが、無事に生まれて本当によかったです。大きく成長していってほしいです」と話していました。

また、2歳の娘を持つ32歳の母親は「お母さんパンダにはお疲れ様と声をかけたいです。また家族そろって赤ちゃんと母親のパンダを見られる日を楽しみにしています」と話していました。

自然交配は極めて困難

「カンカン」「ランラン」の時代から、およそ30年間にわたって、上野動物園と共同でパンダの繁殖について研究してきた、獣医師の筒井敏彦さんによりますと、パンダの自然交配は極めて難しいということです。

理由は生態について詳しくわかっていない点が多いうえ、2月ごろから5月ごろにかけての繁殖期に、妊娠の可能性が高まるのは2日程度と短いためだということです。

さらに個体の数が少なく、ペアの相性が大きく影響するため、メスが発情しても交尾に至らないケースも多いということです。

出産に向けてさまざまな工夫

シンシンとリーリーの間には、5年前にも赤ちゃんが誕生しましたが、赤ちゃんは肺炎のため6日後に死にました。

それ以降も上野動物園では赤ちゃんの誕生と元気な成長を目指して、さまざまな取り組みを続けてきました。その1つが交尾に必要な筋力トレーニングです。リンゴなどの餌を上からつり下げ、餌を取ろうと後ろ足で立ち上がることで、足腰を鍛えます。

さらに、シンシンが出産後も落ち着いて赤ちゃんを育てられる環境作りも工夫しています。出産や子育てをする産室は縦4.8メートル、横1.8メートルの広さで、新たに鉄製の背もたれを3つ設置しました。

背もたれは半円形と三角形の2種類あり、好みに応じて使い分けができるほか、腰を下ろす床の部分は座り心地をよくするために丸みを持たせています。少しでもリラックスした状態で赤ちゃんに母乳を与えることで、赤ちゃんが元気に成長してほしいと動物園は期待しています。

赤ちゃんは2歳前後で中国へ

シンシンとリーリーの2頭は、平成23年からジャイアントパンダの保護や繁殖に関して中国の保護協会と共同研究する目的で、東京都が借り受けています。協定で期間は10年と定められ、東京都は毎年95万ドルを中国側に支払うことになっています。

シンシンとリーリーの所有権は中国側にあり、今回、生まれた赤ちゃんについても同様に中国側にあることから、将来的に中国に返されることになっています。時期については協定で満24か月と定められていますが、都と中国側、双方の協議で決められるということです。

国内の飼育状況

日本動物園水族館協会や各地の動物園によりますと、現在国内で飼育されているジャイアントパンダは、上野動物園の2頭と、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドの5頭、兵庫県の神戸市立王子動物園の1頭の合わせて8頭です。

このうちアドベンチャーワールドでは、平成15年に日本で初めて双子が誕生するなど、これまでに15頭のパンダが元気に成長し、このうち11頭が繁殖のために中国に渡っています。また、神戸市立王子動物園では平成20年に人工授精によって赤ちゃんが誕生しましたが、3日後に死んでいます。

知事 お披露目の日を楽しみに

上野動物園のジャイアントパンダ「シンシン」の出産について、東京都の小池知事は、「待望の赤ちゃんパンダの誕生、大変嬉しく思っています。皆さんとともにお祝いしたいと思います。健やかに育ち、お披露目できる日を、皆さん、楽しみにしていてください。名前を考えるのも楽しみですね」というコメントを発表しました。