全く魅力のない「VALU」が投資先として人気を集めている、この国の金融リテラシーの悲惨

5月31日に、「人の価値」をVA(模擬株式)として、株のように取引できるサービス、VALUがスタートしました。このサービスでは、取引に日本円ではなく、ビットコインを使用します。

現在は確認できませんが、VALUの時価総額上位には、イケダハヤト氏や堀江貴文氏、はあちゅう氏がランクインしている模様です。時価総額1位のイケダハヤトVAはサービスの開始から、3日で20億円相当まで達し、イケハヤ氏はVAを放流することで1000万円の資金調達(荒稼ぎ?)に成功したようです。

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VAの価値を担保するのはしょうもない優待だけ

一般の株式会社が発行する株式の価値は、配当であったり優待であったり、議決権を通じた企業への支配権によって担保されています。一方で、VALUには、優待こそありますが、配当はなく、投資先の各個人の行動に影響力を行使できるような権利はないようです。

VALUの要となる優待は、発行主体の人がブログについてアドバイスしてくれる、人生相談に乗ってくれるというような(私の感覚では)どうでもいいようなものばかりです。つまりは、VAに投資する際には、完全なキャピタルゲイン狙いの投資が基本となってくるわけです。しかも、日本円ではなく、高ボラティリティなビットコイン建てでの取引となりますから、ビットコイン相場の上下動も見極めなければなりません。

株式には、企業の売上から割り出したEPS(一株あたり利益)という概念がありますが、VAには発行主体の人が生み出した売上だの利益といった概念はありません。株式会社の場合は、株式の発行によって得た資金は自社の事業の運転資金として再投資されますが、VAの場合は、資金は発行者の消費に回るだけです。どうでもいいような優待にしか、その価値を裏付ける要素がない今現在のVAは砂上の楼閣でしかありません。

ある日突然、VAの発行主体の個人が突然死することもあるでしょう。そうなったら、VAの時価総額は一気に奈落へ落ちるに違いありません。現段階だと、VAを投資家に売れるだけ売って、ガッポリ稼いだ後、サービスから抜けるというようなこともできるようです。

おわりに

円天や安愚楽牧場への投資と同じで、VALUは投資でもなければ、投機と呼べるような次元にも達していません。残念なことに、私のツイッターのタイムライン上でも、一部の株式投資家の方からVALUに投資したいというニュアンスの反応が見受けられました。

「仮想通貨バブルに乗って、VAを発行して稼ぐぞ!」と考えているのなら、全く問題はありません(私もできることならVAを発行したい)。しかし、本気で投資しようとしているのなら、再考の余地はあると思います。今のVAの好調な上昇基調を支えているのはイナゴマネーですから、今から後追いで参入していくことが、どれだけ危険かは、少しでも冷静な判断力を持っているなら、わかるでしょう。

VALUは、投資家に利益をもたらすサービスとして成立しておらず、ネット上の話題性のみで持っているようなものですから、10年後くらいには「兵どもが 夢の跡」式の古戦場跡のようになっていてもおかしくはありません。VALUに投資するかしないかは、各個人の自由ですが、何の魅力もなければ、知的好奇心もかき立てられないVALUに私が投資することはないでしょう。

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