©2010 The Gorilla Foundation/Koko.org, eNewsLetter May 2010 より。ココとパターソン博士の数々の写真の中で、一番美しい一枚だと思います!
パターソンは特にこの種の主観的な評価への傾向がある。
彼女はココに飲むと手話をしろと言う。ココは耳をさわる。ココはジョークを言っているのだ。彼女はおもちゃをかばんの下に置けと言う。ココは天井にかかげる。ココは意地悪しているのだ。彼女はココに甘いと韻を踏めと言う。ココは甘いと似たジェスチャーの赤と手話する。ココはジェスチャーでしゃれを言っているのだ。彼女はココに笑えと言う。ココは顔をしかめる。ココは「反対の理解」を見せているのだ。ペニーはココの写真を指さして聞く。「ゴリラ 誰?」ココは「鳥」と手話する。ココは「やんちゃ」なのだ。── 著述家マーティン・ガードナー (※1)
ココというゴリラが手話で話すと聞いたけど?
30年前に論争があり、まったく話せないと考える学者もいます。なぜなのか簡単な説明を動物行動学者のロバート・サポルスキー博士 (※2) がしています。
ココの能力については、正しく研究されていないので、本当のところは分かりません。
ココの「研究」は、組織的な科学の境界の外で行われてきた。調査機関というよりも私的な財団によって維持され、世間の雑誌で報告はされても査読を受けた文献では報告されない。── 心理学者マーク・サイデンバーグ (※3)
1,000語の手話ができるという話だけど?
あの手話はアメリカ手話 (American Sign Language) をもとに、ゴリラのジェスチャーやココが作り出した手話からなるゴリラ手話 (Gorilla Sign Language) ということになっています。
そして、ココと話せるのはパターソン博士と一部の助手だけです。アメリカ手話の話者もココが何を言っているのか分からないと言われています。
ココの物憂げな手話についての気まぐれな解釈の説明を要求されたとき、パターソンはこう力説した。ココと長年一緒に暮らすことによって、彼女だけがココの言葉を正しく解釈できるのだと。── 心理学者マーク・サイデンバーグ
2,000語の英単語を聞いて理解するという話だけど?
映像で見る限り、なんとも言えません。英会話が理解できる証拠とされる映像 (YouTube) もあります。しかし、「愛ってどう手話するの?」と聞かれても答えられない映像もあります。
フランシーヌ・パターソンもまた、ゴリラのココが口頭の会話を理解すると示唆しているが、彼女には文脈情報の強い影響を排除するためのテストデータが欠けている。── 霊長類学者スー・サベージ=ランボー (※4)
手話で話しているように見えるのは何なの?
詳しくは「神話の終焉」シリーズに書いています。
簡単に説明すると、言語学者トーマス・シービオクは、話していると錯覚しているだけだとしています。話していると信じるあまり、でたらめな手話から意味のあるものだけを拾い上げて解釈したり、意味をなさない手話をジョークや嘘だと解釈しているのだと言っています。
そして、ココもパターソン博士の視線や表情、声色などの合図を読み取って期待されるような行動をしていると言っています。
きちんと話しているかどうかのテストをするべきなのですが、パターソン博士は消極的なようです。
最後に、言っておかなければならない。これらのダブル・ブラインド テストは、パターソンによってごくまれにしか行われていなかった。── 言語学者トーマス・シービオク (※5)
嘘やジョークも言うって話だけど?
肯定的な人たちは、野生のゴリラも他のゴリラをだますような行動をとるので、ココの嘘やジョークも本当だと考えています。
否定的な人たちは、ココの間違った手話やでたらめな手話を嘘やジョークと解釈していると考えています。
パターソン博士: あなたの好きな色は?
ココ: 唇、偽の髪 (Lips, fake hair.)
パターソン博士: あら、あなた面白いわね!── 第二回AOL主催公開チャットにて
話すことに肯定的な意見はないの?
詳しくは「人はみんな賢い馬」シリーズに書いています。
簡単に説明すると、ゴリラの知能や人間の赤ちゃんとの比較などから話せるという主張を人類学者スーザン・チェバリエル=スコルニコフ博士が行いました。ココのひとりごとやゴリラ同士で話をすることなどが証拠だとしています。
ただ、肯定的な研究者たちも、パターソン博士の研究方法には困っているようです。
実験はいまだ続いているが、結果は選択的に発表されているので、もっとも同情的な科学者たちでさえパターソンの研究を擁護するのに困っている。── ニューヨーク・タイムズ紙「悲劇のチンパンジー」書評
子猫が死んだことを告げられて悲しむ映像は話せる証拠じゃないの?
テレビ向けなどの映像は編集されているのではっきり分かりません。また、ナレーションによる解説が本当なのかも分かりません。
たとえば以前、日本のテレビ番組で放映された子猫の死を告げられる映像は、注意深く見てみると、違う場所でのいくつかの場面をつなぎ合わせたもので、ナレーションによって一続きの話にされていました。
「キャンディー 果物」や「水 鳥」のような (訳注: 類人猿の発話の) 例は、複数の解釈競争にさらされている。しかし、ココと子猫や、ワショーが子に手話を教えたと推測される映像の断片は、訓練者たちの絶え間ない注釈によって、純真な視聴者を信じ込ませているようだ。── 心理学者マーク・サイデンバーグ
ココはパターソン博士や助手以外の人とは話をしないの?
インターネットを通じて一般の人と話すイベントもありましたが、ほとんどがパターソン博士の解釈なしには理解できない内容でした。たとえば、こういった会話です。
司会者: MInyKitty が聞いてるよ。ココ、あなたは将来子供を産むの?
ココ: ピンク (pink)
パターソン博士: 今日はこの前に色についての話をしていたのよ。── 第一回AOL主催公開チャットにて
質問: 他の人たちとお話するのは好き?
司会者: 今のは Rulucky からだ!
ココ: すばらしい乳首 (fine nipple)
パターソン博士: 乳首 (nipple) は人々 (people) と韻を踏む。彼女は「人々」と手話できないので、似たようなことをしようとしているの。── 第一回AOL主催公開チャットにて
また、はっきりとした答えのある質問には答えられませんでした。
司会者: SBM87 が聞いてるよ。あなたの子猫の名前は? (そして犬は?)
ココ: 足 (Foot)
パターソン博士: 足はあなたの子猫の名前じゃないわ。
司会者: ココ、あなたの猫の名前は?
ココ: いいえ (No)── 第一回AOL主催公開チャットにて
否定的な人は、このようなパターソン博士の「豊かな解釈 (rich interpretation)」で話しているように見えるだけだと考えています。
肯定的な人は、人間でもこのような意味の分からない受け答えをする人はいるので、これだけでは話せないとは言えないと考えています。
「苦労のない 穴に さようなら」と答えたことについてはどうなの?
どうなんでしょうね…。
ただ、話すとされた類人猿は他にもチンパンジーやオランウータンなど数多くいますが、ココのように死生観や人生の意味、神について語るものはいません。多くの場合、物の名前を答えたり、自分の欲求や感情を伝えたりするくらいです。
たとえば、ゴリラのココがしゃれを言ったり他のいろいろな言葉遊びをしたり、死の概念があるということは、とても信じられなかった ── 私は、類人猿にもそういった抽象的な概念の能力があると思いたかったけれども。── 霊長類学者スー・サベージ=ランボー
というわけで…?
…とりあえず、ココに関する議論で主だったものだろうと思うものを書きましたが、他にも「これはどうなんだ?」とか「これも書いておけ」というものがあったらお知らせください!
テレビや雑誌などのメディア、そして「なんとか語録」みたいなブログで話すと言われていますが、もともと研究方法にも問題があったようですね…。
しかしながら、あらかじめ言っておくと、彼女の学位論文で報告されたデータと、出版され撒き散らされた記事の間には、基本的な混乱させるような食い違いがあるということを、われわれはここで指摘しておかなければならない。── 言語学者トーマス・シービオク
登場人物の補足:
※1 Martin Gardner。科学的懐疑論者で、疑似科学や超常現象の批判で有名な方だそうです。類人猿の言語教育を批判した本への書評からの引用です。
※2 Robert Sapolsky。神経学者で生物学者、人類学者、動物行動学者だそうですが、博学な方で話も面白い人です。類人猿が人の言葉を理解するということについては否定的な人です。
※3 Mark S. Seidenberg。大学院生時代、話すチンパンジーのニム・チンプスキーの研究に関わった方です。その後、ニムに手話を教えたローラ・アン・ペティットなどとパターソンの研究方法の問題を検証しました。哲学者のピーター・シンガーがニム・チンプスキーの実験を批判したことへの反論からの引用です。
※4 Sue Savage-Rumbaugh。言わずと知れた類人猿の言語能力の研究者です。サポルスキー博士も「きちんとした研究手法とテスト」だと評価し、「ひょっとしたら言葉に似た何かを話しているかもしれない」と評価する天才チンパンジー (ボノボ)・カンジの育ての親です。カンジについての著作からの引用です。
※5 Thomas A. Sebeok。言語学者ですが、博学者と呼ばれ、動物のコミュニケーションにも詳しく本も書いています。パターソンの批判への反論からの引用です。
引用部の出典:
KANZI: The ape at the brink of the human mind - Sue Savage-Rumbaugh (ISBN 978-0-471-15959-9)
APOLOGIES TO THE PRIMATES - The New York Times
The Troubled Life of Nim Chimpsky - New York Review of Books
Koko On AOL, 11/29/2000
Transcript of the Chat with Koko, 4/27/98
Monkey Business - The New York Review of Books
More on Monkey Talk - The New York Review of Books
KANZI: The ape at the brink of the human mind - Sue Savage-Rumbaugh (ISBN 978-0-471-15959-9)
APOLOGIES TO THE PRIMATES - The New York Times
The Troubled Life of Nim Chimpsky - New York Review of Books
Koko On AOL, 11/29/2000
Transcript of the Chat with Koko, 4/27/98
Monkey Business - The New York Review of Books
More on Monkey Talk - The New York Review of Books
カテゴリ: まとめ
拝読する限り、どうやら嘘っぽいですね…。
今後本当に人間と意思の疎通ができるゴリラ(または他の動物)が出てきてほしいなあ。
物の名前を答えたり感情を伝えたりは他の類人猿たちもしますし、野生でもジェスチャーでコミュニケーションも取るので、ココちゃんもある程度は何か意思を伝えることもできるとは思うのですが…やはりきちんとテストを含めた研究がされないのがネックですね…。
ちなみにきちんとしたテストとデータによる研究をしているのがサベージ=ランボー博士のカンジくんとその仲間なんだそうで、話せる動物が出てくるとしたらおそらく彼らの中からだと思います。今後とも注目していきたいと思っています!
死の概念に関して疑問でした。コミュニケーション能力を備えた時点ですでに本来の野生の状態(人間不平等起源論の野生人のような状態)ではない、刷り込まれた状態だと考えていました。 スー・サベージ=ランボーという方は存じませんでしたが「思いたかったけれども。」という哲学的な引用に共感です。
嘆かわしいのは死に対して明確な答えを持たない人類がゴリラに死生観があると本気で信じて「心打たれた」とか、「感動した」とか小さいみそでろくに考えもせず調べもせず上澄みばっかり救ってるキモいのが多いことです。
ジジイが愚痴ってしまいました、、すいません。
/ , -‐- !、
/ {,}f -‐- ,,,__、)
/ / .r'~"''‐--、)
,r''"´⌒ヽ{ ヽ (・)ハ(・)}、
/ \ (⊂`-'つ)i-、
`}. (__,,ノヽ_ノ,ノ \
l `-" ,ノ ヽ 頼む、どうかゴリラを許してやってくれ彼は※3なんだ
} 、、___,j'' l
猫が死んだ、という話をしていた場所は動物園なのに、ココが手話をする場面は部屋の中・・・恣意的なものを感じずにはいられませんね。
個人的には手話ができるゴリラがいてほしいと思いますが。
海外のサイトを中心に色々調べて回ったけど
調べれば調べる程胡散臭い話がボロボロ出てくる
元従業員の話でンドゥメの扱いが悪いとか・・・
(公式の写真を見る限りはこちらも可愛がられてる様に見えるけど)
ココが何年も赤ちゃんを希望してるのに
ゴリラ財団はただ子供の人形を渡すだけで何も進展してなかったりとか
いろんな意味で興味深いゴリラではあると思う
サイト主は今もいるのかな?
客観的、科学的な検証を避けるあたり、
やっぱり眉唾なのかな、残念だけど。
『超訳』してるところはあるにしても最低限の感情と物事を識別するサインを会得してる可能性を否定するのはどうかと思う
仮にある程度は通じて理解してたにしても
チャットなので見られた無理やりな解釈が
余計な疑惑を抱かせてしまってると考える
ココに言葉を教えたパターソンが心理学者
否定してる側のマークなんとかもチンパンジーに言葉を教えた心理学者
どちらも門外漢どころか一番の当事者
ずーっと何年も子供欲しいと手話でお願いしてるらしいけど
未だ子供は産まれずスタッフからは赤ちゃんの人形を渡されるだけなんだな
もう婆さんの年齢なんだよなぁ・・・
もっと根拠ある学術的研究が行われることを望むよ。
ココを一般向けに公開すればすべてがハッキリすると思うけど
そういったことはやってないのかね?
むしろ溺愛しすぎて研究結果が歪んでしまってるのが問題視されてる程
ゴリラの語る死に興味が有るのか
或いは両方か
ここを覗いた方々の思惑は様々でしょうが
何れにせよ興味深い話ですね
コンゴと言う映画では変な装置を付けた喋るゴリラが出てきましたが、将来的に何等かの形で動物との意志疎通が出来るようになれば面白い発見があるやも知れません
ゴリラの能力の真偽もそうだけど良くないイメージが強いね