後部座席のシートベルト未着用 新車に警告装置を義務づけ

後部座席のシートベルト未着用 新車に警告装置を義務づけ
車の後部座席でシートベルトの着用が徹底されていないことを受け、国土交通省は自動車メーカーに対し、後部座席のシートベルトを着けずに走行すると、ランプとブザーで警告する装置を設置するよう義務づけることを決めました。
後部座席のシートベルトの着用は、9年前の平成20年に義務化されましたが、警察庁などが去年、全国で調べたところ、一般道での着用率は36%にとどまっています。

このため、国土交通省は自動車メーカーに対し、エンジンをかけた時に後部座席のシートベルトを着けていないと、運転席のランプで知らせ、さらに走行中にベルトを外すと、ブザーで警告する装置を設置するよう義務づけることを決めました。

国土交通省は今月中にも道路運送車両法の保安基準を改正し、3年後の平成32年9月から、新しく発売される乗用車や、軽ワゴン車を対象に設置を義務づける方針です。
警察庁によりますと、去年1年間に後部座席に乗車していて事故で死亡した人は全国で152人に上り、7割に当たる105人がシートベルトを着用していませんでした。

国土交通省は助手席に対しても、警報装置の設置を義務づける方針で、現在、運転席だけに義務づけられている装置の設置を、すべての座席に拡大することで、シートベルト着用の徹底を図りたい考えです。

本人だけでなく前方の座席の人も危険に

後部座席でシートベルトを着用せずに事故に遭うと、本人が死亡したり、けがをしたりするだけでなく、運転席や助手席など前の座席にいる人にも重大なけがを負わせるリスクが高まることが指摘されています。

後部座席でシートベルトを着用しなかった場合の危険性を検証するため、JAF=日本自動車連盟が、ことし3月に茨城県つくば市の施設で実験を行いました。

実験では、運転席と助手席、それに後部座席の左右に、それぞれ4体の人形を乗せ、運転席側の後部座席の人形だけシートベルトを着用しませんでした。車を時速55キロで走らせ、前方の壁に衝突させた結果、シートベルトを着用していない人形は前に投げ出され、衝突の0.1秒後には運転席の後ろに頭を打ちつけて、さらにシートごと運転席の人形を押しつぶしました。

この時の衝撃を分析した結果、後部座席の人は死亡したり、致命的な損傷を負ったりする危険性が高く、運転席の人も頭蓋骨が骨折するなどのリスクが高まることがわかったということです。
警察庁によりますと、時速60キロの車が壁などに衝突した場合、体は高さ14メートルのビルから落下するのと同じ衝撃を受けるということです。

一方、後部座席でシートベルトを着用していた人形は、体が前方に投げ出されることはなく、けがをするリスクが大幅に下がることが確認されたということです。

後部座席での死者 7割が着用せず

シートベルトの着用は、昭和60年に運転席と助手席で義務化され、平成20年には後部座席でも義務づけられました。
高速道路で後部座席のシートベルトをしていなかった場合、交通違反の点数1点の行政処分が科せられ、一般道での違反は警察官が指導を行います。

警察庁とJAF=日本自動車連盟が去年、全国でシートベルトの着用状況を調べたところ、運転席と助手席の着用率は95%を超えた一方で、後部座席の着用率は高速道路では72%、一般道では36%にとどまっていました。

警察庁によりますと、去年1年間に乗車中の事故で死亡した人は1322人で、シートベルトを着用していなかった人は42%の558人に上ります。
また、後部座席で事故に遭って死亡した人は152人で、69%に当たる105人がシートベルトを着用していませんでした。

警告装置 すでに導入済みの車も

国内の自動車メーカーでは、後部座席のシートベルト着用を促すため、すでに販売されている車にも警告機能が設置されている車もあります。

SUBARUでは一部の車種を除いて、走行中に後部座席の人がシートベルトを外すと、ルームミラー上部のランプが赤く点灯し、運転席のスピーカーから警報音が鳴る装置が設置されています。
さらに、このメーカーではシートベルトの着用を徹底させるため、3年前から一部の車種ではシートベルトをしないまま、走り出した段階で、運転席にランプとブザーで警告する装置も設置しています。
座席の重さや形状から後部座席に人が座っていることを感知するということで、この装置を導入しているのは、国内メーカーでは初めてだということです。

SUBARU車両研究実験部の上田圭介さんは「後部座席の人が走行中にシートベルトを外しても、ドライバーは気付けないので、着用率を上げるために装置の開発や導入を進めてきた。シートベルトは最も基本的な安全装備であり、必ず着用してほしい」と話していました。