USJ躍進担う「必然的に選ばれる戦略」の本質

マーケター森岡氏が「確率論」の考えを明かす

確率論を応用したマーケティングのノウハウを、USJにも応用した森岡毅氏(撮影:尾形文繁)
「データ・ドリブン・マーケティング」という言葉が流行している。直感や経験に頼るのではなく、データを基点に状況を認識し、マーケティング戦略を構築し、実行していくというプロセスのことだ。
そうしたデータ分析をマーケティングに活用してきた日本人の中で、カリスマと言われる存在が元ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)である森岡毅である。P&Gを経て、2010年に株式会社ユー・エス・ジェイに入社、独自の確率思考に裏打ちされたアイデアを次々と導入し、短期間でUSJの業績をV字回復させ、業界で「勝ち組」といわれるほどに躍進させた。
6月3日発売号の『週刊東洋経済』「今すぐ始めるデータ分析」でも取り上げている、いまやマーケティングの現場に欠かせなくなっているデータマーケティングの神髄について、その森岡氏がインタビューに応じ、語った。

「このままいけば、会社は倒産します」

東日本大震災が起こってUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の客足が激減したとき、私はそんなメッセージを社内に発した。今のペースで、キャッシュフローがある一定のレベルにまで下がったらどうなるか。分析すると、銀行からのコベナンツ(財務制限条項)に抵触すると判明した。そうなると、すべての投資に銀行の許可をもらわないといけなくなり、たいへんまずい状況に陥る。私の再建はこうした状況を理解することから始まった。

分析ができる人になりたければ、まずは会社の財務諸表をきっちり把握することから始めましょう、というのが私の考えだ。多くの人は、自己のプロジェクトとその周辺しか見ていない。しかしP/L(損益計算書)とB/S(貸借対照表)で会社の状態を把握し、それを入り口に進むべき方向性を考える癖をつけていくのがセオリーだ。

マーケターならば当然、トップライン(売上高)とボトムライン(純利益)、それらに影響を与えているビジネスドライバーを一つひとつ、解明していく必要がある。

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