[PR]

 米企業などが課税を逃れる、タックスヘイブン(租税回避地)になっているとの批判が強まる英領バミューダ諸島のボブ・リチャーズ副首相兼財務相が朝日新聞の取材に応じた。主なやり取りは次の通り。

 ――なぜ、バミューダに海外から投資が来るのですか。

 「世界各国で企業経営の規制について様々な不確実さがある中、バミューダは確実性を提供している。我々はマネーロンダリングや腐敗などに使われないため、懸命にやっている。25年前までは主要産業といえば観光だったが、今は保険や再保険が柱で、観光がそれを補完する形だ。経済はかなり発展しており、第三世界ではない」

 ――資金を隠すような場所はないのですか。

 「バミューダに企業を設立する際、政府は事業内容や、実質的な所有者を確認する。情報は一般に公開していないが、日本を含む80カ国以上の国々と情報交換の協定を結んでおり、海外の税務当局からバミューダ企業の情報を求められれば送っている。完全とは言わないが、他の国より良いシステムを備えている」

 ――しかし、タックスヘイブンだとの批判が強まっています。

 「我々は企業の所得や配当に課税していないが、従業員の給与税という形で企業に課税している。税率が低い国であることは事実だが、汚いお金を隠すような仕組みは提供していない」

 「(課税逃れを許す)国際課税の仕組みは我々ではなく、G7(主要7カ国)など世界の大国が作ったものだ。バミューダの税制は100年以上前から続いており、(海外から)資本を取り込もうという狙いで作っていない。あらゆるものを輸入に頼る島国のため、税収の多くは関税で、バミューダにあわせた制度だ」

 ――国際課税の仕組みに問題があると。

 「地図上の点でしかないバミューダに責任があるというのは、全くおかしな話だ。(企業から)税金が十分に支払われていないというなら、(G7やG20などの大国が)自分たちの仕組みを変えるべきだ。バミューダのような小さな国が何も言い返せないと思って、スケープゴートにしているだけだ」

 「(国際課税の仕組みの)ポイントは、(大国の)民間企業の利益のためになるということだ。法律が許す限り、納税額を極力少なくすることは、利益を株主に還元しなければならない企業の義務で、それを変えたければ、法律を変えるべきだ」

 ――グーグルは、バミューダに拠点を置き、節税に使っているとされています。

 「私の知る限り、グーグルは不法行為をしておらず、各国間の税条約の網をかいくぐっている。バミューダにある拠点には従業員はいない。バミューダの法律事務所に年間いくらかを払っていると思うが、それだけだ。政府は彼らから何も得ておらず、明日に出て行かれても何も変わらない」

 ――バミューダは、各国が海外に暮らす人が持つ銀行口座情報などを自動交換する枠組みに参加を決めましたが、米国はまだです。

 「我々が世界の基準を作ることはできないので、基準ができれば、従わなければならない。だが、米国は世界最大の経済国だ。最大のプレーヤーが参加しない国際基準はうまくいかない」

 「米国の中のネバダ州やデラウェア州こそ、『タックスヘイブン』だ。彼らは、バミューダが企業設立の際に求める情報を得ておらず、企業の実質所有者すら知らない」(聞き手・寺西和男)