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 埼玉県春日部市の玄関口、東武鉄道春日部駅。スカイツリーラインとアーバンパークラインが交差する県東部の拠点駅だが、駅周辺の中心市街地の活力の低下が深刻な問題になっている。街を分断する駅の改良の動きも出てきたが、具体的な時期や効果はまだ見通せない。

 狭く老朽化したホームや階段。構内を通過できる自由通路もない。高架化された北越谷以南や周辺の主要駅が活気づく中、石川良三市長は「春日部駅が春日部のイメージをダウンさせている」と認める。

 東口は日光街道が通り、かつては粕壁宿として繁栄。1985年開店のロビンソン百貨店を中心ににぎわいを見せた。だが、買い物客は郊外、市外へ流れ、ロビンソンを継いだ西武春日部店も昨年2月に閉店。にぎわいは消え、シャッターが下りた店も多い。

 公共機関や商業施設が集積する後発の西口と歩いて行き来するには、入場券を買って駅構内を通るか、駅の約200メートル南の狭い地下道や約300メートル北の踏切まで遠回りせざるをえない。その踏切もピーク時は1時間に最長56分も遮断機が下りる「開かずの踏切」だ。

 昨年度の市民意識調査でも、駅周辺が「にぎわいのあるまちだと思うか?」の質問に「そう思う」と答えたのはわずか4・6%。「どちらかといえばそう思う」と合わせても3割にとどまった。

 春日部市は旧庄和町と合併した2005年以降、人口が減り続ける。一方で南隣の越谷市や北隣の宮代町は増加。市は「近年、急速に拠点性を失いつつある」と危機感を募らせる。

 高架化と一体となった中心市街地の整備が不可欠として、市は02年度に鉄道高架整備課を設置。国も05年に「着工準備」を採択し、事業主体の県も約5億円を投じて調査。踏切の除去などの高架化は県、駅周辺のまちづくりは市、駅施設の改良は東武が中心になって改善の道を探ってきた。

 市の課設置から15年。ここに来て動きが出てきた。2月県議会で上田清司知事が、今年度中に事業化に向けた国との設計協議に入ることを明らかにした。

 大きな推進力になったのが、東武鉄道が昨年11月、県と市に提出した「輸送改善計画」。アーバンパークラインのホームを増やす。東武鉄道は「両線の直通列車のスムーズな運行や増発への対応」などと説明。東西の自由通路を設け、周辺10カ所の踏切をなくし、連続立体交差にする。

 市は「市街地の一体性を向上させ、駅周辺の回遊性を生み出す。様々な課題を解決できる」と歓迎する。

 ただ石川良三市長は「トータルで10年以内」と急ぐものの、現時点で時期は未定。費用分担など課題も多い。実現までの間、駅や東口をどうするのか。「活性化すると思えない」「今以上に西口に流れる」と冷静に見る市民も少なくない。(加藤真太郎)