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皆さんいつも自分の作品を呼んで下さってありがとうございます。
突然ですが一部の人に言いたい事があります。
感想蘭にこの作品に対して批難したり中傷したりする方がいますが、そんな事を書く位なら読まなくて結構です。
こんな作品でも面白い、楽しみにしていると言ってくれる人もいるんです。
ですので、大人げないとは思いますが批難、中傷の酷いユーザーの方はブロック登録させて貰います。
今後一切何を書こうと自由ですが自分がそれを読む事はありません。
また登録を解除する気もありません。
最後に何時もこの作品を楽しんで読まれている皆さん、不快になるような事を書いて申し訳ありません。
このコメントは1週間ほどで消します。
それでは本編をどうぞ!!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
登場デジモン紹介に【デーモン】を追加しました
お気に入りが600件を超えました!
これからも皆様のご期待に添えられるように頑張ります!!
第24話:冷めきった怒り突然ですが一部の人に言いたい事があります。
感想蘭にこの作品に対して批難したり中傷したりする方がいますが、そんな事を書く位なら読まなくて結構です。
こんな作品でも面白い、楽しみにしていると言ってくれる人もいるんです。
ですので、大人げないとは思いますが批難、中傷の酷いユーザーの方はブロック登録させて貰います。
今後一切何を書こうと自由ですが自分がそれを読む事はありません。
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最後に何時もこの作品を楽しんで読まれている皆さん、不快になるような事を書いて申し訳ありません。
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登場デジモン紹介に【デーモン】を追加しました
お気に入りが600件を超えました!
これからも皆様のご期待に添えられるように頑張ります!!
医務室…
ココには太一によって【デーモン】から救い出された鈴が運びこまれていた
鈴
「…うっ………ハッ!?」
それから暫くして鈴が目を覚ました
千冬
「…起きたか?」
その隣には千冬が座っていた
鈴
「ち、千冬さん!?…ココは!…ぐっ!…か、体が…」
千冬
「あまり動くな。お前の体は激しい疲労とダメージを負っている。暫く安静にしていろ。」
鈴
「………はい…あの、千冬さん…」
千冬
「何が起きたのか聞きたいんだろ?」
鈴
「は、はい…何で私こんな所にいるんですか?」
千冬
「やはりお前も覚えていなかったか…」
鈴
「お前も?」
千冬
「…そうだ…簡単に言えばお前はオルコットと同じ状態になったんだ。」
鈴
「!?」
セシリアと同じ…それだけで鈴は自分に何が起きたのかすぐに分かった
鈴
「私の機体にも…【SINウイルス】が感染してたんですか!?」
千冬
「ん?【SINウイルス】?…ああ、そう言えばそうやって誤魔化していたな。」
鈴
「え!ご、誤魔化す!?」
千冬
「まあ、お前も当事者になったから言ってもいいか…【SINウイルス】って言うのは束が吐いた嘘だ。」
鈴
「う、嘘!!!」
千冬
「いや、嘘ではあるが嘘でも無いからな…」
鈴
「どう言う事ですか!!もっと分かり易く言ってくださいよ!!!」
千冬
「…スマン…説明しようにも私一人の判断で言っていいのか分からないんだ…何しろ突拍子もない話だからな…」
鈴
「………」
鈴は千冬の態度からどう話していいのか本当に分からないように見えていた
千冬
「どう説明すればいいのか…」
尚も悩み続ける千冬に鈴はどう声をかければいいのか分からずにいた
そこに…
太一
「なら俺が話す。」
太一がマドカとセシリアを連れてやってきた
千冬
「八神!」
太一
「事情は俺が話す。構わないな?」
千冬
「お前がいいのなら私には止める権利は無い。」
鈴
「え?どう言う事?」
太一
「お前の身に起きた事、そしてこの世界で何が起きているのかを話してやると言ったんだ。」
鈴
「この世界って…」
太一
「聞く気があるなら黙って聞け。」
鈴
「わ、分かったわよ…」
太一
「まずお前に何が起こったかだが………」
こうして太一は鈴に事情を説明した…
鈴が【七大魔王】の1体【デーモン】を宿していた事…
その【七大魔王】を倒す為に違う世界からやってきた太一自身の事…
そして、アグモンや【七大魔王】達デジモンの事…
太一
「………以上だ。」
鈴
「………」
太一の話に鈴は言葉を失ってしまった
内容が余りにも自分の常識を越える話だったからだ
だが…
鈴
「………異世界からの侵略者…【七大魔王】…【憤怒のデーモン】………そんな化け物が私の中にいたの…」
太一
「そうなるな。」
鈴
「ハ、ハハ…何よそれ…これじゃあ私…セシリアの事化け物なんて言えなかったじゃない…私も…化け物だったなんて…」
自分が【七大魔王】の1体【デーモン】を宿していた事にショックを受けていた
セシリア
「凰さん…」
鈴
「ごめんセシリア…私…あんな事言って…ごめんなさい…」
セシリア
「凰さん…わたくしはあの時言いましたでしょう?気にしなくていいと?」
鈴
「でも…私…アンタに酷い事言って…本当にごめん!!」
セシリア
「…では今の謝罪は受け取っておきます。ですからもう謝らなくていいですわ…鈴さん♪」
鈴
「…え?…アンタ…私の名前…」
セシリア
「はい♪鈴さんが名前で呼べと仰ったではないですか?もう過ぎた事ですし、これからはそう呼びますわ♪」
鈴
「セシリア…うん…ありがとう…」
セシリア
「…太一様もいい加減名前で呼んであげてはどうですか?」
鈴
「…あ…そ、そうだ太一…あ、あの…」
太一
「ん?」
鈴
「…まだお礼を言ってなかった…た、助けてくれて…ありがとう…」
太一
「気にするな。セシリアにも言ったが俺は俺のするべき事をしただけだ。」
鈴
「う、うん…あの…アンタはやっぱり名前で呼んでくれないのかな…」
太一はあの食堂での一件以来、一度として鈴を名前で呼ぼうとはしていなかった
太一
「………。まぁ、あの時は俺も言い過ぎたしな…丁度いい機会か…」
鈴
「じゃ、じゃあ…」
太一
「鈴…これでいいか?」
鈴
「うん♪ありがとう太一♪」
アグモン
「良かったね~♪」
漸く太一が名前で呼んだ事に笑顔になる鈴
そこに【デジヴァイス】からアグモンが出て来た
鈴
「わっ!?ア、アンタ誰!?って言うか何この生き物!?」
太一
「今説明しただろ?コイツが俺のパートナーデジモンのアグモンだ。」
鈴
「コイツがデジモン!?」
アグモン
「そうだよ~♪僕はアグモン!よろしくね~♪」
鈴
「よ、よろしく…凰鈴音よ…鈴でいいわ。」
アグモン
「よろしくね鈴♪」
鈴
「う、うん…」
アグモン
「どしたの?」
自分を見る鈴の様子がおかしい事にアグモンは首を傾けた
鈴
「いやその…さっきの太一の話からデジモンってもっと恐ろしい生き物なのかなって思って…」
マドカ
「ハハハッ!確かにな…だが、お前に憑りついていた【デーモン】は恐ろしい姿だったぞ。」
鈴
「どんな姿なの?」
千冬
「こんな姿だ。」
そう言って千冬は鈴に太一と【デーモン】の戦いの映像を見せた
鈴
「こ、これが【デーモン】!?…悪魔そのものじゃない!!…それと…こっちの青いのは?」
セシリア
「太一様のISですわ!」
鈴
「コレが太一!?…確かアンタのISはデジモンをモデルにした機体よね?」
太一
「モデルと言うか…デジモンそのものだ。本物と全く同じだからな。」
マドカ
「それも【デジタルワールド】を守護する聖騎士型デジモン…【ロイヤルナイツ】だ。」
鈴
「聖騎士【ロイヤルナイツ】…私が以前見かけた白いのと姿が違うわね?」
セシリア
「鈴さんが以前見た白いのと言うのは【オメガモン】様の事です。そして、今回の戦いで使用されたのは【アルフォースブイドラモン】と言う聖騎士ですわ。」
鈴
「【アルフォースブイドラモン】か…カッコいいわね!!」
太一
「そうか?」
鈴
「うん♪ねえ、もっとデジモンの事教えてよ!」
太一
「構わないが…」
それから太一とアグモンは鈴からデジモンに関する質問攻めにあった
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
暫くして鈴が太一とアグモンにデジモンの事を聞いてる時…
セシリア
「そう言えば少し気になったのですが…何故鈴さんはこんなに疲弊しているのですか?」
…セシリアがふと思い出したかのように聞いて来た
鈴
「へ?どう言う事?」
セシリア
「わたくしは太一様に【リヴァイアモン】から助け出されてすぐに目を覚ましましたし、動けました。【七大魔王】に同じ様に取り込まれたのに何故こうも違うのかと思いまして…」
マドカ
「言われてみるとそうだな…」
セシリアの疑問にマドカ達も同意した
すぐに動けたセシリアと違い鈴はすぐに目を覚まさず、今もベッドから動けない状態だからだ
太一
「恐らく鈴を取り込んだのが【デーモン】だからだろう。」
その理由を太一が予測した
全員
「え?」
太一
「セシリアを取り込んだ【リヴァイアモン】はこの学園以上の巨体だ。俺が奴の腹の中に入れる程にな。対して【デーモン】は【リヴァイアモン】程の大きさは無い。普通のISの倍くらいの大きさだ。」
千冬
「なるほど…【リヴァイアモン】ならどれだけ暴れてもあのサイズだから体内のオルコットに影響を与えなかったという事か…」
マドカ
「それに対して【デーモン】のサイズなら戦闘による外からの衝撃の類が体内の鈴にも影響を与えていたとしてもおかしくは無い…」
太一
「それと、超究極体に進化した事も影響しているんだろう。」
セシリア
「超究極体が?」
太一
「究極体を超えた究極体…それが超究極体だ。そんな強大な力を持つデジモンの体内にいて、ただの人間が無事でいる方がおかしい。」
鈴
「じゃ、じゃあ…もしアンタが【デーモン】を倒すのに手間取っていたら…」
太一
「死んでたかもな…むしろこの程度で済んだのは運が良かったと思った方がいいだろう。」
鈴
「ア、アハハハ…そ、そうなんだ…」
太一の救出が遅れたら死んでいたかもしれない
それを聞いた鈴は冷や汗を流し、その笑い声は乾いていた
千冬
「ん?それなら八神…お前は平気なのか?今回使った【アルフォースブイドラモン】も超究極体になっただろ?」
太一
「俺の【ロイヤルナイツ】は元からその辺りの事も考えて【イグドラシル】が造ったものだ。そもそもあの【デーモン】が取り込んだ人間を一々気にかけると思うのか?」
全員
「思いません!!」
太一の問いに全員が口を揃えて答えた
太一
「だろ?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
千冬
「あ!そうだ八神!実は私も聞きたい事があったんだが…」
今度は千冬が太一に尋ねてきた
太一
「何だ?」
千冬
「お前が【デーモン】と戦っている時にオータムから聞いたんだが…お前が11歳の頃にデジモンとの戦いで東京のお台場を廃墟にしたと言うのは本当なのか?」
セシリア&鈴
「へ?」
太一
「ああそれか…そうだな…そんな事もあったな…」
鈴
「ちょ、ちょっと待ってよ!それ本当!?」
マドカ
「本当らしいぞ?私もオータムと一緒に聞いた話だからな。東京のあちこちで戦って色々壊したと言っていたが…」
セシリア
「色々って…何を壊したんですか?」
千冬
「聞いた話だと…東京タワーは折れ曲がって…レインボーブリッジは半分落とされて…後はフジテレビが完全に破壊されたそうだ。」
鈴
「その3つって東京で特に有名な建造物じゃない!アンタなんて物を壊したのよ!!」
太一
「人聞きの悪い事を言うな!壊したのは俺や仲間達じゃない!敵対していたデジモン達が破壊したんだ!!」
セシリア
「それでも破壊された事は否定しないんですね…」
太一
「事実だからな。」
マドカ
「付け加えるならその戦いは成熟期と完全体だけでやったそうだぞ。究極体は最後の戦いにしか出てなかったそうだ。その時点でお台場は廃墟にしていたらしい。」
鈴
「………マジで?」
太一
「マジだ!」
セシリア&鈴
「………」
太一の話にセシリアと鈴は言葉を失い、改めてデジモンの力を思い知るのだった
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
太一
「所で鈴…俺の方も一つ聞きたい事があるんだが?」
鈴とセシリアが落ち着いたので今度は太一が鈴に聞いて来た
鈴
「何?」
太一
「さっきも言ったが、お前には【七大魔王】の【デーモン】が宿っていた。」
鈴
「…うん…」
太一
「奴が司るのは【憤怒】…つまり【怒り】だ。お前はあの試合の時、一体何が原因で【デーモン】が目覚めるだけの【怒り】を持ったんだ?」
鈴
「【怒り】…か…そんなの決まってるじゃない…」
太一
「やはり一夏か…」
鈴
「分かってたの?」
太一
「あの状況でお前を怒らせるなんてアイツしかいないだろ?それに【デーモン】自身が自分が蘇ったのが一夏のお陰と言っていたからな。俺が知りたいのは一夏がお前に何を言ってそこまでの【怒り】を持たせたかだ。」
鈴
「…それは…少し長くなるんだけど………」
そして鈴は自分と一夏の間に起きた事を話した
鈴は昔、転校する際に一夏に『料理が上達したら毎日私の酢豚を食べて欲しい』と言う告白をしたらしい
ところがこの学園で再会した時その事を聞いたら『酢豚を奢ってくれる』と言って鈴の告白を間違えて記憶していた
その事で鈴は一夏に間違えて覚えていた事を謝れと言ったが肝心の一夏は何が間違っていたのか分からず謝ろうとしなかった
その後も売り言葉に買い言葉を続けて今日の試合の日にまでなってしまった
そして、試合中一夏を追い詰めた鈴は改めて謝る様に言ったが、一夏は謝るどころか勝手にキレた鈴の方が悪いと言って来た
その言葉で鈴の我慢も限界となり怒りが爆発
【デーモン】が復活してしまったという事だった
鈴
「………という訳…」
太一
「はあぁぁ~~…あの男…そこまで馬鹿だったのか…救い様が無いな…」
鈴からの話を聞き、太一は盛大な溜息を吐き、一夏の行動と言動に完全に呆れ果てていた
千冬
「スマン鈴!!…あの馬鹿が!!」
マドカ
「今回の事は明らかに一夏兄さんが悪い!!妹として謝らせてくれ!!」
鈴
「…別にいいわよ…二人に謝られても意味無いし…」
セシリア
「そうですわね…謝るなら張本人が言うべきですが…」
太一
「自分に非があるとも思ってないあの馬鹿が謝る訳無いか…」
太一とセシリアは鈴の話から自分が悪いと思っていない一夏が謝るとは考えられなかった
鈴
「…私もそう思う…」
そんな二人の言葉に鈴も同意していた
太一
「…千冬…前々から聞こうと思っていたんだが…お前アイツをどう言う育て方したんだ?いくらなんでも常識と言うものが無さ過ぎるぞ?」
千冬
「そ、それは…その…」
太一
「まさかとは思うが…放ったらかしにしたらああなったとは言わないよな?」
太一がそう言いながら千冬を睨むと視線を逸らし口籠り始めた
千冬
「…いえ、完全に放ったらかしと言う訳では…無いです…ただ…生活費を稼ぐのに必死でアイツの面倒をあまり見てなかったのは…本当です………」
太一に睨まれながら答える千冬だが、太一の威圧感に圧されたのか敬語になっていた
太一
「つまりお前は面倒は殆ど見ずに半分は放ったらかしにしていたという事か?お前それでも姉か?いくら親に捨てられたからっていくらなんでも放置し過ぎじゃないのか?鈴の話を聞くと一夏の鈍さの被害者は相当いるみたいだが?何故それだけの数が出るまで放っておいたんだ?同じ女としてその子達が可哀想だとは思わなかったのか?」
太一の言葉を否定する千冬だが、同時に肯定もしていた
それを聞いた太一は更に矢継ぎ早に問い質してきた
千冬
「い、いや…私も時々だがアイツにその事を言ってはいたんです…その…八神さんの言う通りその子達が可哀想だったから…で、でもアイツの鈍感さは生まれつき凄まじいもの…でし…て…」
太一
「…一応指摘はしていたのか…だがな…お前が放置した事が拍車をかけたんじゃないのか?」
千冬
「…その通りです…」
千冬の言い分を聞いて多少は納得した太一だがそれでも反論を許されなかった
そして千冬は見事に凹んでしまった
鈴
「こんな千冬さん始めて見たわ!?」
セシリア
「そう言えば彼…割と世間で知られている事もあまり知りませんでしたわね?…ニュースとか見ないのでしょうか?」
千冬
「…言われてみると…余りそう言うのは見てなかった気が…」
太一
「だからあんな常識外れの大馬鹿になったのか…全く…お前達はやはり姉弟だな…面倒な事はやらない怠け癖はそっくりだ…」
千冬
「…はい…言い返す言葉もありません…」
千冬は自分の私生活の事を思うと太一の言葉を言い返せなかった
太一
「マドカ…まさかとは思うが…お前も…」
マドカ
「私がこのズボラ女みたいな事をすると思ってるのか?」
千冬
「うぐっ!?」
太一
「だよな。まあいい…これ以上あの馬鹿の事を考えると頭が痛くなる………それで鈴…お前その馬鹿とこれからどう接するつもりだ?」
鈴
「どうって?」
太一
「今回の事があっても変わらずアイツと接していくのかって事だ。」
鈴
「あ…それか…」
鈴が答えようとした時…
コンコン!
オータム
「ちょっといいか?」
扉を叩く音がしたので全員がそちらを向くとオータムが立っていた
千冬
「オータム…避難させた生徒達は?」
オータム
「全員シェルターから出て部屋に帰らせた。…それから凰。」
鈴
「は、はい!何ですか?」
オータム
「お前のISを預からせてくれ。さっき束から連絡が来てオルコットと同じようにお前の機体も調べたいそうだ。」
鈴
「し、篠ノ之博士が!?わ、分かりました!」
オータム
「後、こっちに織斑が向かって来てるぞ。」
鈴
「え?」
太一
「どうする鈴?俺達はいた方がいいか?」
鈴
「………太一は…この部屋にいてくれない?…他の皆は席を外して欲しい…」
太一
「分かった…なら俺は隠れているから何かあれば呼べ。」
鈴
「…うん…」
太一はそう言って空いてるベッドの一つの陰に隠れた
オータムは鈴から【甲龍 】を預かると千冬達と一緒に医務室から出て行った
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
それから暫くして…
一夏
「鈴!!」
一夏が医務室に駆け込んできた
鈴
「…一夏…」
一夏
「大丈夫か!?」
鈴
「見ての通りよ。疲労感がするだけで体に異常は無いわ。」
一夏
「そ、そうか…良かった…」
【デーモン】に取り込まれた自分を心配してくれている一夏に鈴は今度こそ自分の否を認めて謝ってくれるだろうと思った
鈴はその時は笑って許してあげようと考えていた
だが…
一夏
「…俺にもっと力があれば…あんな化け物…俺が倒してやれたのに!!」
鈴
「………は?(コイツ…いきなり何言ってるの?)」
…一夏は鈴の想いとは別に違う事を言い出した
一夏
「…何で太一なんだ!…俺にも【ロイヤルナイツ】みたいな強い機体があれば…俺にも同じ力があれば…アイツが出しゃばる前にあんな化け物…俺が倒せたんだ!!………鈴もそう思うだろ?」
自分に謝るどころか太一に対して悪態を吐き、さらには同意を求めてきたのだ
鈴
「(まさか…コイツ!?)…ねえ一夏?」
一夏
「何だ?」
鈴
「アンタ、今日の一件…何が原因で起きたのか分かってるの?」
一夏
「え?…何が原因って…俺 が 分 か る 訳 無 い だ ろ ?お前がいきなり束さんの言ってた【SINウイルス】ってのに取り込まれたんだぞ。」
それを聞いた瞬間、鈴は一夏が自分が原因だと言う自覚が無い事に気付いた
鈴
「………今の…本気で言ってるの?(太一や千冬さんが言うには【デーモン】は自分の復活の理由を一夏に話していると言ってた…)」
一夏
「何言ってるんだよ?お前が吠えたらああなったんだぞ?何か間違ってるのか?」
鈴
「…そう…それがアンタの答え(…コイツがこんな事を言うって事は…そう言う事か…)」
それはつまり一夏は【デーモン】に言われた事を忘れているという事だった…
一夏
「鈴?」
その瞬間…鈴の中で何かが一気に冷めていく感覚がした
鈴
「…一夏…アンタさ、私が昔言った約束…もう一度言ってくれない?」
一夏
「え?何だ急に?…え~っと…確か『料理が上達したら酢豚を奢ってあげる』だろ?それがどうしたんだ?」
鈴
「…アンタまだ思い出さないのね…もういいわ…間違いを教えてあげる。あの時ね、『料理が上達したら毎日私の作った酢豚を食べてくれる』って言ったのよ。」
一夏
「そうなのか?それが一体…」
鈴が間違いを正してもまだその意味が分からない一夏だった
鈴
「アレは私の告白よ。日本の『毎日味噌汁を食べて』って言う告白を酢豚に変えて言ったのよ。」
一夏
「………え?…告白?」
鈴
「そうよ…告白よ告白…愛の告白。アンタが好きだからプロポーズしたの。ココまで言えばアンタでも分かるでしょ?」
一夏
「…あ、愛の告白!?プ、プロポーズ!?り、鈴が…俺に!?」
ココまで言われて漸くその意味を理解した
だが…
鈴
「けどもういいわ…今度こそ忘れて頂戴。」
一夏
「え?」
鈴
「もうアンタを好きでも何でも無いから忘れろって言ってるのよ。」
一夏
「り、鈴?お前何言って…」
鈴の一夏を見る眼が完全に変わっていた
その眼は一夏が始めて見るとても冷たい眼となっていた
一夏との話から鈴の気持ちは完全に冷めきってしまっていた
鈴
「言いたい事も言ったから出てって…」
一夏
「…え?」
鈴
「聞こえなかった?出て行けって言ってるのよ…今はアンタの顔なんか見たくも無いのよ…アンタの鈍感さにはもう【怒り】も沸いて来ないわ…」
一夏
「ま、待ってくれ!?は、話を!?」
鈴
「アンタと話す事なんてもう無い…」
一夏
「り、鈴!?」
鈴
「出てけ!!!」
一夏
「!?」
鈴に出て行けと叫ばれた一夏は何も言う事が出来ずふら付きながら医務室を出て行った
一夏が出て行って暫くすると…
太一
「…いいのか?…ああ言った以上、お前はアイツの隣に立つ事はもう出来ないぞ?」
隠れて二人の会話を聞いていた太一が出て来た
鈴
「…構わないわ…私があんな状態になった原因の癖にその自覚が無いんだもの…しかもアンタの文句は言うし…【デーモン】に言われた事も忘れてるし…自分に都合の悪い事はすぐに忘れるなんてハッキリ言って最低よ…だから話してる内にアイツに対する気持ちも…【怒り】も…ドンドン冷めて行ったわ…それに今回の事でアイツの鈍感ぶりにはもう嫌気が差した…あんな奴こっちから願い下げよ…」
太一の問いに答える鈴は先程までと同じ様に冷めた口調で一夏に対する気持ちを話していた
それは一夏への想いが完全に消え去った証拠だった
太一
「…そうか…」
鈴
「…私の恋って何だったのかな…何であんな奴に惚れたんだろ…」
太一
「…さあな…それはお前にしか分からない事だ。」
鈴
「…そうよね………はぁ…わざわざ無理言ってまで編入したのに…何の為にココに来たんだろ………国に帰ろっかな…」
太一
「好きにしろ。…だが一つ言っておく。アイツに惚れたその時の気持ちが本物だったのなら、それは思い出として大事にしておけ。」
鈴
「太一………」
太一はそう言って医務室から出ようとしたが、一夏と出くわすのは不味いと考え窓から外に出て行った
鈴はそんな太一の姿を見つめながら…
鈴
「………一夏より先に…アンタに会いたかったわ…」
先ほどまでとは違い、優しい笑みを浮かべながらそう呟いていた…
ココには太一によって【デーモン】から救い出された鈴が運びこまれていた
鈴
「…うっ………ハッ!?」
それから暫くして鈴が目を覚ました
千冬
「…起きたか?」
その隣には千冬が座っていた
鈴
「ち、千冬さん!?…ココは!…ぐっ!…か、体が…」
千冬
「あまり動くな。お前の体は激しい疲労とダメージを負っている。暫く安静にしていろ。」
鈴
「………はい…あの、千冬さん…」
千冬
「何が起きたのか聞きたいんだろ?」
鈴
「は、はい…何で私こんな所にいるんですか?」
千冬
「やはりお前も覚えていなかったか…」
鈴
「お前も?」
千冬
「…そうだ…簡単に言えばお前はオルコットと同じ状態になったんだ。」
鈴
「!?」
セシリアと同じ…それだけで鈴は自分に何が起きたのかすぐに分かった
鈴
「私の機体にも…【SINウイルス】が感染してたんですか!?」
千冬
「ん?【SINウイルス】?…ああ、そう言えばそうやって誤魔化していたな。」
鈴
「え!ご、誤魔化す!?」
千冬
「まあ、お前も当事者になったから言ってもいいか…【SINウイルス】って言うのは束が吐いた嘘だ。」
鈴
「う、嘘!!!」
千冬
「いや、嘘ではあるが嘘でも無いからな…」
鈴
「どう言う事ですか!!もっと分かり易く言ってくださいよ!!!」
千冬
「…スマン…説明しようにも私一人の判断で言っていいのか分からないんだ…何しろ突拍子もない話だからな…」
鈴
「………」
鈴は千冬の態度からどう話していいのか本当に分からないように見えていた
千冬
「どう説明すればいいのか…」
尚も悩み続ける千冬に鈴はどう声をかければいいのか分からずにいた
そこに…
太一
「なら俺が話す。」
太一がマドカとセシリアを連れてやってきた
千冬
「八神!」
太一
「事情は俺が話す。構わないな?」
千冬
「お前がいいのなら私には止める権利は無い。」
鈴
「え?どう言う事?」
太一
「お前の身に起きた事、そしてこの世界で何が起きているのかを話してやると言ったんだ。」
鈴
「この世界って…」
太一
「聞く気があるなら黙って聞け。」
鈴
「わ、分かったわよ…」
太一
「まずお前に何が起こったかだが………」
こうして太一は鈴に事情を説明した…
鈴が【七大魔王】の1体【デーモン】を宿していた事…
その【七大魔王】を倒す為に違う世界からやってきた太一自身の事…
そして、アグモンや【七大魔王】達デジモンの事…
太一
「………以上だ。」
鈴
「………」
太一の話に鈴は言葉を失ってしまった
内容が余りにも自分の常識を越える話だったからだ
だが…
鈴
「………異世界からの侵略者…【七大魔王】…【憤怒のデーモン】………そんな化け物が私の中にいたの…」
太一
「そうなるな。」
鈴
「ハ、ハハ…何よそれ…これじゃあ私…セシリアの事化け物なんて言えなかったじゃない…私も…化け物だったなんて…」
自分が【七大魔王】の1体【デーモン】を宿していた事にショックを受けていた
セシリア
「凰さん…」
鈴
「ごめんセシリア…私…あんな事言って…ごめんなさい…」
セシリア
「凰さん…わたくしはあの時言いましたでしょう?気にしなくていいと?」
鈴
「でも…私…アンタに酷い事言って…本当にごめん!!」
セシリア
「…では今の謝罪は受け取っておきます。ですからもう謝らなくていいですわ…鈴さん♪」
鈴
「…え?…アンタ…私の名前…」
セシリア
「はい♪鈴さんが名前で呼べと仰ったではないですか?もう過ぎた事ですし、これからはそう呼びますわ♪」
鈴
「セシリア…うん…ありがとう…」
セシリア
「…太一様もいい加減名前で呼んであげてはどうですか?」
鈴
「…あ…そ、そうだ太一…あ、あの…」
太一
「ん?」
鈴
「…まだお礼を言ってなかった…た、助けてくれて…ありがとう…」
太一
「気にするな。セシリアにも言ったが俺は俺のするべき事をしただけだ。」
鈴
「う、うん…あの…アンタはやっぱり名前で呼んでくれないのかな…」
太一はあの食堂での一件以来、一度として鈴を名前で呼ぼうとはしていなかった
太一
「………。まぁ、あの時は俺も言い過ぎたしな…丁度いい機会か…」
鈴
「じゃ、じゃあ…」
太一
「鈴…これでいいか?」
鈴
「うん♪ありがとう太一♪」
アグモン
「良かったね~♪」
漸く太一が名前で呼んだ事に笑顔になる鈴
そこに【デジヴァイス】からアグモンが出て来た
鈴
「わっ!?ア、アンタ誰!?って言うか何この生き物!?」
太一
「今説明しただろ?コイツが俺のパートナーデジモンのアグモンだ。」
鈴
「コイツがデジモン!?」
アグモン
「そうだよ~♪僕はアグモン!よろしくね~♪」
鈴
「よ、よろしく…凰鈴音よ…鈴でいいわ。」
アグモン
「よろしくね鈴♪」
鈴
「う、うん…」
アグモン
「どしたの?」
自分を見る鈴の様子がおかしい事にアグモンは首を傾けた
鈴
「いやその…さっきの太一の話からデジモンってもっと恐ろしい生き物なのかなって思って…」
マドカ
「ハハハッ!確かにな…だが、お前に憑りついていた【デーモン】は恐ろしい姿だったぞ。」
鈴
「どんな姿なの?」
千冬
「こんな姿だ。」
そう言って千冬は鈴に太一と【デーモン】の戦いの映像を見せた
鈴
「こ、これが【デーモン】!?…悪魔そのものじゃない!!…それと…こっちの青いのは?」
セシリア
「太一様のISですわ!」
鈴
「コレが太一!?…確かアンタのISはデジモンをモデルにした機体よね?」
太一
「モデルと言うか…デジモンそのものだ。本物と全く同じだからな。」
マドカ
「それも【デジタルワールド】を守護する聖騎士型デジモン…【ロイヤルナイツ】だ。」
鈴
「聖騎士【ロイヤルナイツ】…私が以前見かけた白いのと姿が違うわね?」
セシリア
「鈴さんが以前見た白いのと言うのは【オメガモン】様の事です。そして、今回の戦いで使用されたのは【アルフォースブイドラモン】と言う聖騎士ですわ。」
鈴
「【アルフォースブイドラモン】か…カッコいいわね!!」
太一
「そうか?」
鈴
「うん♪ねえ、もっとデジモンの事教えてよ!」
太一
「構わないが…」
それから太一とアグモンは鈴からデジモンに関する質問攻めにあった
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
暫くして鈴が太一とアグモンにデジモンの事を聞いてる時…
セシリア
「そう言えば少し気になったのですが…何故鈴さんはこんなに疲弊しているのですか?」
…セシリアがふと思い出したかのように聞いて来た
鈴
「へ?どう言う事?」
セシリア
「わたくしは太一様に【リヴァイアモン】から助け出されてすぐに目を覚ましましたし、動けました。【七大魔王】に同じ様に取り込まれたのに何故こうも違うのかと思いまして…」
マドカ
「言われてみるとそうだな…」
セシリアの疑問にマドカ達も同意した
すぐに動けたセシリアと違い鈴はすぐに目を覚まさず、今もベッドから動けない状態だからだ
太一
「恐らく鈴を取り込んだのが【デーモン】だからだろう。」
その理由を太一が予測した
全員
「え?」
太一
「セシリアを取り込んだ【リヴァイアモン】はこの学園以上の巨体だ。俺が奴の腹の中に入れる程にな。対して【デーモン】は【リヴァイアモン】程の大きさは無い。普通のISの倍くらいの大きさだ。」
千冬
「なるほど…【リヴァイアモン】ならどれだけ暴れてもあのサイズだから体内のオルコットに影響を与えなかったという事か…」
マドカ
「それに対して【デーモン】のサイズなら戦闘による外からの衝撃の類が体内の鈴にも影響を与えていたとしてもおかしくは無い…」
太一
「それと、超究極体に進化した事も影響しているんだろう。」
セシリア
「超究極体が?」
太一
「究極体を超えた究極体…それが超究極体だ。そんな強大な力を持つデジモンの体内にいて、ただの人間が無事でいる方がおかしい。」
鈴
「じゃ、じゃあ…もしアンタが【デーモン】を倒すのに手間取っていたら…」
太一
「死んでたかもな…むしろこの程度で済んだのは運が良かったと思った方がいいだろう。」
鈴
「ア、アハハハ…そ、そうなんだ…」
太一の救出が遅れたら死んでいたかもしれない
それを聞いた鈴は冷や汗を流し、その笑い声は乾いていた
千冬
「ん?それなら八神…お前は平気なのか?今回使った【アルフォースブイドラモン】も超究極体になっただろ?」
太一
「俺の【ロイヤルナイツ】は元からその辺りの事も考えて【イグドラシル】が造ったものだ。そもそもあの【デーモン】が取り込んだ人間を一々気にかけると思うのか?」
全員
「思いません!!」
太一の問いに全員が口を揃えて答えた
太一
「だろ?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
千冬
「あ!そうだ八神!実は私も聞きたい事があったんだが…」
今度は千冬が太一に尋ねてきた
太一
「何だ?」
千冬
「お前が【デーモン】と戦っている時にオータムから聞いたんだが…お前が11歳の頃にデジモンとの戦いで東京のお台場を廃墟にしたと言うのは本当なのか?」
セシリア&鈴
「へ?」
太一
「ああそれか…そうだな…そんな事もあったな…」
鈴
「ちょ、ちょっと待ってよ!それ本当!?」
マドカ
「本当らしいぞ?私もオータムと一緒に聞いた話だからな。東京のあちこちで戦って色々壊したと言っていたが…」
セシリア
「色々って…何を壊したんですか?」
千冬
「聞いた話だと…東京タワーは折れ曲がって…レインボーブリッジは半分落とされて…後はフジテレビが完全に破壊されたそうだ。」
鈴
「その3つって東京で特に有名な建造物じゃない!アンタなんて物を壊したのよ!!」
太一
「人聞きの悪い事を言うな!壊したのは俺や仲間達じゃない!敵対していたデジモン達が破壊したんだ!!」
セシリア
「それでも破壊された事は否定しないんですね…」
太一
「事実だからな。」
マドカ
「付け加えるならその戦いは成熟期と完全体だけでやったそうだぞ。究極体は最後の戦いにしか出てなかったそうだ。その時点でお台場は廃墟にしていたらしい。」
鈴
「………マジで?」
太一
「マジだ!」
セシリア&鈴
「………」
太一の話にセシリアと鈴は言葉を失い、改めてデジモンの力を思い知るのだった
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
太一
「所で鈴…俺の方も一つ聞きたい事があるんだが?」
鈴とセシリアが落ち着いたので今度は太一が鈴に聞いて来た
鈴
「何?」
太一
「さっきも言ったが、お前には【七大魔王】の【デーモン】が宿っていた。」
鈴
「…うん…」
太一
「奴が司るのは【憤怒】…つまり【怒り】だ。お前はあの試合の時、一体何が原因で【デーモン】が目覚めるだけの【怒り】を持ったんだ?」
鈴
「【怒り】…か…そんなの決まってるじゃない…」
太一
「やはり一夏か…」
鈴
「分かってたの?」
太一
「あの状況でお前を怒らせるなんてアイツしかいないだろ?それに【デーモン】自身が自分が蘇ったのが一夏のお陰と言っていたからな。俺が知りたいのは一夏がお前に何を言ってそこまでの【怒り】を持たせたかだ。」
鈴
「…それは…少し長くなるんだけど………」
そして鈴は自分と一夏の間に起きた事を話した
鈴は昔、転校する際に一夏に『料理が上達したら毎日私の酢豚を食べて欲しい』と言う告白をしたらしい
ところがこの学園で再会した時その事を聞いたら『酢豚を奢ってくれる』と言って鈴の告白を間違えて記憶していた
その事で鈴は一夏に間違えて覚えていた事を謝れと言ったが肝心の一夏は何が間違っていたのか分からず謝ろうとしなかった
その後も売り言葉に買い言葉を続けて今日の試合の日にまでなってしまった
そして、試合中一夏を追い詰めた鈴は改めて謝る様に言ったが、一夏は謝るどころか勝手にキレた鈴の方が悪いと言って来た
その言葉で鈴の我慢も限界となり怒りが爆発
【デーモン】が復活してしまったという事だった
鈴
「………という訳…」
太一
「はあぁぁ~~…あの男…そこまで馬鹿だったのか…救い様が無いな…」
鈴からの話を聞き、太一は盛大な溜息を吐き、一夏の行動と言動に完全に呆れ果てていた
千冬
「スマン鈴!!…あの馬鹿が!!」
マドカ
「今回の事は明らかに一夏兄さんが悪い!!妹として謝らせてくれ!!」
鈴
「…別にいいわよ…二人に謝られても意味無いし…」
セシリア
「そうですわね…謝るなら張本人が言うべきですが…」
太一
「自分に非があるとも思ってないあの馬鹿が謝る訳無いか…」
太一とセシリアは鈴の話から自分が悪いと思っていない一夏が謝るとは考えられなかった
鈴
「…私もそう思う…」
そんな二人の言葉に鈴も同意していた
太一
「…千冬…前々から聞こうと思っていたんだが…お前アイツをどう言う育て方したんだ?いくらなんでも常識と言うものが無さ過ぎるぞ?」
千冬
「そ、それは…その…」
太一
「まさかとは思うが…放ったらかしにしたらああなったとは言わないよな?」
太一がそう言いながら千冬を睨むと視線を逸らし口籠り始めた
千冬
「…いえ、完全に放ったらかしと言う訳では…無いです…ただ…生活費を稼ぐのに必死でアイツの面倒をあまり見てなかったのは…本当です………」
太一に睨まれながら答える千冬だが、太一の威圧感に圧されたのか敬語になっていた
太一
「つまりお前は面倒は殆ど見ずに半分は放ったらかしにしていたという事か?お前それでも姉か?いくら親に捨てられたからっていくらなんでも放置し過ぎじゃないのか?鈴の話を聞くと一夏の鈍さの被害者は相当いるみたいだが?何故それだけの数が出るまで放っておいたんだ?同じ女としてその子達が可哀想だとは思わなかったのか?」
太一の言葉を否定する千冬だが、同時に肯定もしていた
それを聞いた太一は更に矢継ぎ早に問い質してきた
千冬
「い、いや…私も時々だがアイツにその事を言ってはいたんです…その…八神さんの言う通りその子達が可哀想だったから…で、でもアイツの鈍感さは生まれつき凄まじいもの…でし…て…」
太一
「…一応指摘はしていたのか…だがな…お前が放置した事が拍車をかけたんじゃないのか?」
千冬
「…その通りです…」
千冬の言い分を聞いて多少は納得した太一だがそれでも反論を許されなかった
そして千冬は見事に凹んでしまった
鈴
「こんな千冬さん始めて見たわ!?」
セシリア
「そう言えば彼…割と世間で知られている事もあまり知りませんでしたわね?…ニュースとか見ないのでしょうか?」
千冬
「…言われてみると…余りそう言うのは見てなかった気が…」
太一
「だからあんな常識外れの大馬鹿になったのか…全く…お前達はやはり姉弟だな…面倒な事はやらない怠け癖はそっくりだ…」
千冬
「…はい…言い返す言葉もありません…」
千冬は自分の私生活の事を思うと太一の言葉を言い返せなかった
太一
「マドカ…まさかとは思うが…お前も…」
マドカ
「私がこのズボラ女みたいな事をすると思ってるのか?」
千冬
「うぐっ!?」
太一
「だよな。まあいい…これ以上あの馬鹿の事を考えると頭が痛くなる………それで鈴…お前その馬鹿とこれからどう接するつもりだ?」
鈴
「どうって?」
太一
「今回の事があっても変わらずアイツと接していくのかって事だ。」
鈴
「あ…それか…」
鈴が答えようとした時…
コンコン!
オータム
「ちょっといいか?」
扉を叩く音がしたので全員がそちらを向くとオータムが立っていた
千冬
「オータム…避難させた生徒達は?」
オータム
「全員シェルターから出て部屋に帰らせた。…それから凰。」
鈴
「は、はい!何ですか?」
オータム
「お前のISを預からせてくれ。さっき束から連絡が来てオルコットと同じようにお前の機体も調べたいそうだ。」
鈴
「し、篠ノ之博士が!?わ、分かりました!」
オータム
「後、こっちに織斑が向かって来てるぞ。」
鈴
「え?」
太一
「どうする鈴?俺達はいた方がいいか?」
鈴
「………太一は…この部屋にいてくれない?…他の皆は席を外して欲しい…」
太一
「分かった…なら俺は隠れているから何かあれば呼べ。」
鈴
「…うん…」
太一はそう言って空いてるベッドの一つの陰に隠れた
オータムは鈴から【
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
それから暫くして…
一夏
「鈴!!」
一夏が医務室に駆け込んできた
鈴
「…一夏…」
一夏
「大丈夫か!?」
鈴
「見ての通りよ。疲労感がするだけで体に異常は無いわ。」
一夏
「そ、そうか…良かった…」
【デーモン】に取り込まれた自分を心配してくれている一夏に鈴は今度こそ自分の否を認めて謝ってくれるだろうと思った
鈴はその時は笑って許してあげようと考えていた
だが…
一夏
「…俺にもっと力があれば…あんな化け物…俺が倒してやれたのに!!」
鈴
「………は?(コイツ…いきなり何言ってるの?)」
…一夏は鈴の想いとは別に違う事を言い出した
一夏
「…何で太一なんだ!…俺にも【ロイヤルナイツ】みたいな強い機体があれば…俺にも同じ力があれば…アイツが出しゃばる前にあんな化け物…俺が倒せたんだ!!………鈴もそう思うだろ?」
自分に謝るどころか太一に対して悪態を吐き、さらには同意を求めてきたのだ
鈴
「(まさか…コイツ!?)…ねえ一夏?」
一夏
「何だ?」
鈴
「アンタ、今日の一件…何が原因で起きたのか分かってるの?」
一夏
「え?…何が原因って…
それを聞いた瞬間、鈴は一夏が自分が原因だと言う自覚が無い事に気付いた
鈴
「………今の…本気で言ってるの?(太一や千冬さんが言うには【デーモン】は自分の復活の理由を一夏に話していると言ってた…)」
一夏
「何言ってるんだよ?お前が吠えたらああなったんだぞ?何か間違ってるのか?」
鈴
「…そう…それがアンタの答え(…コイツがこんな事を言うって事は…そう言う事か…)」
それはつまり一夏は【デーモン】に言われた事を忘れているという事だった…
一夏
「鈴?」
その瞬間…鈴の中で何かが一気に冷めていく感覚がした
鈴
「…一夏…アンタさ、私が昔言った約束…もう一度言ってくれない?」
一夏
「え?何だ急に?…え~っと…確か『料理が上達したら酢豚を奢ってあげる』だろ?それがどうしたんだ?」
鈴
「…アンタまだ思い出さないのね…もういいわ…間違いを教えてあげる。あの時ね、『料理が上達したら毎日私の作った酢豚を食べてくれる』って言ったのよ。」
一夏
「そうなのか?それが一体…」
鈴が間違いを正してもまだその意味が分からない一夏だった
鈴
「アレは私の告白よ。日本の『毎日味噌汁を食べて』って言う告白を酢豚に変えて言ったのよ。」
一夏
「………え?…告白?」
鈴
「そうよ…告白よ告白…愛の告白。アンタが好きだからプロポーズしたの。ココまで言えばアンタでも分かるでしょ?」
一夏
「…あ、愛の告白!?プ、プロポーズ!?り、鈴が…俺に!?」
ココまで言われて漸くその意味を理解した
だが…
鈴
「けどもういいわ…今度こそ忘れて頂戴。」
一夏
「え?」
鈴
「もうアンタを好きでも何でも無いから忘れろって言ってるのよ。」
一夏
「り、鈴?お前何言って…」
鈴の一夏を見る眼が完全に変わっていた
その眼は一夏が始めて見るとても冷たい眼となっていた
一夏との話から鈴の気持ちは完全に冷めきってしまっていた
鈴
「言いたい事も言ったから出てって…」
一夏
「…え?」
鈴
「聞こえなかった?出て行けって言ってるのよ…今はアンタの顔なんか見たくも無いのよ…アンタの鈍感さにはもう【怒り】も沸いて来ないわ…」
一夏
「ま、待ってくれ!?は、話を!?」
鈴
「アンタと話す事なんてもう無い…」
一夏
「り、鈴!?」
鈴
「出てけ!!!」
一夏
「!?」
鈴に出て行けと叫ばれた一夏は何も言う事が出来ずふら付きながら医務室を出て行った
一夏が出て行って暫くすると…
太一
「…いいのか?…ああ言った以上、お前はアイツの隣に立つ事はもう出来ないぞ?」
隠れて二人の会話を聞いていた太一が出て来た
鈴
「…構わないわ…私があんな状態になった原因の癖にその自覚が無いんだもの…しかもアンタの文句は言うし…【デーモン】に言われた事も忘れてるし…自分に都合の悪い事はすぐに忘れるなんてハッキリ言って最低よ…だから話してる内にアイツに対する気持ちも…【怒り】も…ドンドン冷めて行ったわ…それに今回の事でアイツの鈍感ぶりにはもう嫌気が差した…あんな奴こっちから願い下げよ…」
太一の問いに答える鈴は先程までと同じ様に冷めた口調で一夏に対する気持ちを話していた
それは一夏への想いが完全に消え去った証拠だった
太一
「…そうか…」
鈴
「…私の恋って何だったのかな…何であんな奴に惚れたんだろ…」
太一
「…さあな…それはお前にしか分からない事だ。」
鈴
「…そうよね………はぁ…わざわざ無理言ってまで編入したのに…何の為にココに来たんだろ………国に帰ろっかな…」
太一
「好きにしろ。…だが一つ言っておく。アイツに惚れたその時の気持ちが本物だったのなら、それは思い出として大事にしておけ。」
鈴
「太一………」
太一はそう言って医務室から出ようとしたが、一夏と出くわすのは不味いと考え窓から外に出て行った
鈴はそんな太一の姿を見つめながら…
鈴
「………一夏より先に…アンタに会いたかったわ…」
先ほどまでとは違い、優しい笑みを浮かべながらそう呟いていた…
<予告>
鈴に完全に拒絶された一夏
もはや一夏を見る事が無くなった鈴は今の自分の気持ちを太一に伝える
そんな中、鈴に束から新たな機体が届けられる
次回!《ISアドベンチャー 聖騎士伝説》
竜騎兵、その名はドラグナー!
今、冒険が進化する!