百田尚樹独占手記、講演会中止騒動の全内幕
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百田尚樹独占手記、講演会中止騒動の全内幕

「私の講演中止が波紋を広げています」。作家、百田尚樹氏が登壇予定だった一橋大の講演会中止騒動をめぐり、渦中の百田氏がiRONNAに独占手記を寄せた。「差別扇動者」とレッテル貼りした圧力団体の存在、主催者に中止を執拗に迫った卑劣な手口…。一連の騒動の全内幕がついに明らかになった。

「私の講演中止が波紋を広げています」。作家、百田尚樹氏が登壇予定だった一橋大の講演会中止騒動をめぐり、渦中の百田氏がiRONNAに独占手記を寄せた。「差別扇動者」とレッテル貼りした圧力団体の存在、主催者に中止を執拗に迫った卑劣な手口…。一連の騒動の全内幕がついに明らかになった。

チャンチャラおかしいのはどっちだ

都合が悪ければ無視する

反対派の言動こそ「違法行為」

百田氏講演会中止の波紋

 「圧力に屈したという見方をされても仕方がない」。一橋大の学生から届いた1通のメールに、こう書かれていた。
学園祭「KODAIRA祭」を前日に控えた一橋大のキャンパス=東京都国立市
 一橋大の学園祭「KODAIRA祭」で6月10日に予定され、開催の約一週間前に突然中止が決まった作家、百田尚樹氏の講演会をめぐる一連の騒動。学園祭の実行委員会は、警備上の理由としているが、これまでの百田氏の発言などに嫌悪感を抱く反対派の圧力があったとみられ、iRONNA編集部が実行委に取材を申し込んだメールの返信には、企画した学生の悔しさがにじんでいた。
 一方、渦中の百田氏は10日、自身のツイッターで「本当ならこの時間、一橋大学で講演しているとこだったが、中止になったのでこうしてツイッターで遊んでいる。けど、講演するよりも大きな影響力を与えたように思う。『差別』を錦の御旗にして『言論弾圧』をもくろむ得体のしれない団体の存在を、多くの人が知ったことの意義は非常に大きい」と書き込み、一連の騒動に言及した。
 講演会の中止は、百田氏が3日、「企画した学生たちは、サヨクの連中から凄まじい脅迫と圧力受け続けていたらしい」などとツイッターで明かし問題が表面化した。講演中止を問題視する声の中には「言論弾圧だ」とする批判のほか、「反対派の圧力に屈するべきではなかった」といった声が相次ぎ、波紋が広がっている。
 そもそも講演のテーマは「現代社会におけるマスコミのあり方」だった。企画した学生は、英国のEU離脱や米大統領選など大手メディアが予想できない結果となった背景に、偏向報道があった可能性を重視し、百田氏が適任だと判断したようだ。
 これに対し、講演会に猛反発したのは「反レイシズム情報センター」(ARIC)と「百田尚樹氏講演会中止を求める一橋生有志の会」の2団体。両団体は署名活動のほか、実行委員会に講演会の内容の変更や中止などを求めたという。
 こうした騒動となった一橋大の学生らはどう受け止めているのだろうか。学園祭前日の9日、東京・国立市にあるキャンパスで聞いた学生の思いはさまざまだ。「多様な意見があるので講演自体はやっていいのでないかと思う。百田さんがヘイトスピーチをしていると聞いたことがあるが、放送作家や小説家として活躍しており、そういう内容の講演であれば問題ないのでは」。商学部2年の男子学生は講演中止に疑問を抱く。その一方で、台湾人の女子学生(語学研究科修士2年)は「なぜ大学がヘイトスピーチをする人を擁護するのか」と指摘し、講演会に反対する署名をしたという。
 また、経済学部4年の男子学生は「講演中止になって初めて今回のことを知ったが、多様な考えを知る良い機会になったのではないか。実際には今回の講演中止を言論弾圧とか社会的な問題として捉えている学生はあまりいない。ただ、反対している学生はごく一部で、むしろ教授陣が問題視しているようだ」と内情を語った。
 一方、iRONNAは一橋大広報室に11項目にわたって回答を求めた。学園祭実行委員会との意思疎通については「学生団体とは学生の自治活動、課外活動を所管する部局が連絡を取り合っています」とし、大学としてのサポートに関しては「大学管理上必要な措置は常に検討しており、学生の安全につきましても引き続きその確保に努めてまいります」とメールで回答。だが、反対派の圧力や交渉の詳細、教職員の反応、百田氏への見解など9項目については回答がなかった。
 今回の問題をめぐっては、反対派団体が、百田氏について「ヘイトスピーチを繰り返している」と主張するが、昨年6月の「ヘイトスピーチ解消法」施行からまだ一年であり、どういった文言が対象になるのか、模索が続いている。差別の根絶はもちろん大切だが、憲法が保障する集会や表現の自由を侵すことはあってはならない。今回、学生たちが結果的に「自主規制」の道を選ばざるを得なかったこと、そして「多様な意見」に触れる機会が奪われた事実は重く受け止めるべきではないだろうか。(iRONNA編集部 嶋諒子、中田真弥)

 講演会企画担当の男子学生がiRONNA編集部の取材に回答したメール全文は以下の通り。

―講演会の講師に百田尚樹氏を選んだ理由は
「昨年は、アメリカの大統領選やイギリスのEU離脱などメディアの予想を覆す出来事が相次ぎました。それはマスコミの偏向報道に問題があったのではないかという見方も一部ではなされています。その中で、マスコミの偏向に対して舌鋒鋭い百田尚樹氏をお呼びすれば、興味深いお話で講演会が盛り上がると考えたからです。また、度々その発言が物議をかもす百田氏ですが、堅い内容のテーマに対しても関西人ならではのユーモアで多くの人を惹きつけるお話をしてくださると期待したからです」

―百田氏の講演会のテーマは「現代社会におけるマスコミのあり方」だが、百田氏との打ち合わせも含めて聴衆にこんなことを伝えたかった、というような講演会への思いはどのようなものだったか
「上記の選んだ理由とほとんど重複しますが、それに加えて純粋に来場者に楽しんでもらいたいという思いがありました」

―反対派と直接の交渉はどのようなものだったのか
「ARICは、反差別ルールの制定を要求し、在学生有志の会は講演会の中止若しくはテーマの変更を要求しました。交渉の場においてそれらの団体は当委員会に継続的な話し合いを求め、また話し合いを重ねるたびに要求がエスカレートしていきました」

―百田氏のツイッターで「4ヵ月近くも執拗に中止要請を続ける」とあったが、実際にどのような圧力があったのか
「反対運動は執拗に続けられましたが、圧力はありませんでした」

―一部の「学生は圧力に屈した」「圧力に屈するべきではなかった」の声をどう思うか
「圧力に屈したという見方をされても仕方がないと思います」

―今回の公演中止は「言論弾圧」と思うか
「言論弾圧かどうか判断しかねます」

―いま、百田氏に対してどのような気持ちか
「直前になっての中止連絡となって大変ご迷惑をおかけしてしまったので、申し訳ない気持ちでいっぱいです」

言論弾圧に右も左もない

伝統に泥塗った残念な事件

 一橋大学の学園祭「KODAIRA祭」で予定されていた、作家、百田尚樹氏の講演会が、一部の在学生と、彼らに呼応した外部勢力による反対運動で中止に追い込まれた。
百田尚樹氏の「講演中止」に揺れる橋大のキャンパス=東京都国立市
 一橋大学は東京都国立市にキャンパスがあり、商、経済、法、社会学部の4つの文系学部からなる、比較的小規模な国立大学である。政財官界にそうそうたる人材を輩出してきた名門だが、明治末期や戦前には、東京帝大に肩入れする文部省や大蔵省に対抗し、教職員だけでなく学生と同窓会も一丸となって闘い、商業学校から大学への昇格や、存続を勝ち取った歴史を持つ。良い意味での「リベラルな校風」であり、石原慎太郎元都知事や田中康夫元長野県知事がOBというのも、分かる気がする。
 私は昨年12月、一橋大学OBが中心メンバーの「新三木会」に招かれて、千代田区一ツ橋にある如水会館で講演した。質疑応答や懇親会の雑談を通じて、OBの方々の優秀さをよく知っている。だから、今回の件は名門大学の校名や伝統に、少数の在学生が泥を塗った残念な事件と捉えている。
 民主主義国家に必要不可欠な人権として「表現の自由」がある。米国では合衆国憲法修正第1条がこれを保障し、日本国憲法では第21条1項に、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」という条文がある。民主主義は、人間の意見は必ず対立することや、人間は必ず間違いを犯すことを前提にした制度である。対立や間違いを修正して前に進むには「表現の自由」を保障し、誰もが自由に主張や議論ができる環境が必要なのだ。
 自分の意見は声高に叫ぶが、他者の発言機会は奪っても構わないという考えは、独裁者や全体主義者と同じであり、民主主義国家では、最も忌避すべき幼稚な考えだ。
 報道によると、百田氏の講演に猛烈に反対した勢力に、「反レイシズム」を掲げるNGO(非政府組織)があるという。代表は同大大学院に籍を置く学生だ。結社の自由は尊重するが、国立大学で学ぶ学生は、私を含む日本の納税者のおかげで「勉強させていただいている立場」と言える。「表現の自由」を奪うような活動はいかがなものか。一橋大学のリベラルな校風が、特定の思想勢力に悪用されている印象を受けた。
 一橋大学に限らず、大学は学生を日本の国益に貢献する人材に育てる場所だ。中には、入学式や卒業式で「日の丸掲揚」や「君が代斉唱」を行わない大学もあると聞く。主客倒愚の骨頂である。(弁護士、ケント・ギルバート「ニッポンの新常識」2017.06.10
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