2017年6月8日05時01分
日本原子力研究開発機構が起こした国内最悪の内部被曝(ひばく)事故。これまで何度も問題になってきた、原子力機構による放射性物質のずさんな管理が再び繰り返された。作業員が吸ったプルトニウムは体内に長い間とどまり、がんのリスクを高めると指摘されている。
被曝(ひばく)事故があったのは、26年前に封がされた保管容器の中身を確かめようとした時だった。
原子力機構の大洗研究開発センター(茨城県大洗町)にある燃料研究棟。6日朝、作業にあたる職員5人が分析室に直径10センチほどのステンレス製の保管容器を持ち込み、分析用の作業台に載せた。保管容器の中には、プルトニウムとウランなどの酸化物が入ったポリ容器が、二重のビニール袋に包まれて入っていた。
午前11時15分ごろ、50代の男性職員が6本のボルトを緩めて保管容器のフタを開けると、突然、ビニール袋が破れ、中にあった放射性物質が飛び散った。この職員は2万2千ベクレルのプルトニウムを吸い込み、近くにいた3人の肺からも放射性物質が検出された。保管容器は1991年にフタを閉じた後は、一度も開けたことがなかったという。
原子力機構は「この作業でビニールが破れるとは想定していなかった」と説明。作業マニュアルでも、この作業を密閉された特殊な箱の中ではなく、前面のガラスの一部が開いた状態の作業台で行う手順にしていた。
職員が付けていたマスクはフィルター付きで口と鼻を覆うタイプだった。どのような経路で吸い込んだかは不明だが、マスクと顔の間に隙間があったり、放射性物質がまだ浮遊しているのにマスクを外したりした可能性が考えられている。顔全体を覆うタイプのマスクを使っていれば、内部被曝は防げたかもしれない。
原子力機構によると、現場となった燃料研究棟は74年に完成。その3年後からプルトニウムを使った試験が始まった。高速増殖原型炉「もんじゅ」の新型燃料などを研究開発していたが、役目を終え、13年度に廃止の方針が決まった。
施設を廃止した後、放射性物質を廃棄物として処理していくには、その種類や量、状態を確認する必要がある。そこで原子力機構は今年から、施設に大量にある保管容器の状況を確認する作業を進めていた。原子力機構は「作業の手順は計画通りで、作業員の装備にも問題はなかった」と説明する。
だが、放射線防護が専門の伴信…
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