旭化成の伝統化繊、インド女性の心をつかむ
生産開始から約90年、国内工場がフル操業
旭化成の発祥の地、宮崎県延岡市。同市内にある旭化成の繊維工場で24時間体制のフル操業が続いている。作っているのは、この地で生産を開始してから90年近い歴史を有する伝統的な化学繊維、「ベンベルグ」の原糸だ。
ベンベルグは一般的には「キュプラ」と呼ばれ、高級天然繊維のシルク(絹)に似た滑りの良さが一番の特徴。静電気が起きにくいうえ、吸放湿性の高さから肌に長時間触れてもべたつきにくく、主に背広やジャケット、コートなどの裏地素材として使われてきた。
インドの民族衣装用途が拡大
その伝統的な繊維の工場がなぜ今、フル操業で繁忙なのか――。原動力になっているのは、まったく種類が異なる2つの女性衣料用途だ。
一つ目はカジュアル衣料店「ユニクロ」の機能性インナー。さらりとした肌触りのよさに着目したユニクロが、10年ほど前から女性用の肌着で採用を開始。今では夏の大人気商品、「エアリズム」のキャミソールやタンクトップ、シームレスブラなど、同シリーズのさまざまなアイテムの混合素材に用いられている。
それ以上に大きいのがインドの衣料用途だ。ベンベルグは現地の女性たちが身につける民族衣装に使われており、その需要が順調に拡大。この10年間でインドの民族衣装向け出荷は5割以上増え、今やベンベルグ生産量の約3割を占める最大の用途になっている。