6月6日、日本原子力研究機構の燃料研究棟において、核燃料物質を収納した貯蔵容器の点検作業中に、貯蔵容器内の樹脂製の袋の破裂を確認し、作業員5人が被曝しました。ここで起きた汚染事故を受けて、研究所の安全への取り組みについて、私の考えを述べたいと思います。
日本原子力研究機構はめっちゃ大きい研究機関
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA:Japan Atomic Energy Agency)は、日本で唯一、原子力に関する総合的な研究と技術開発を行なっている国立研究開発法人です。
JAEAは、(以下Wikipedia引用)
日本原子力研究所 (JAERI、略称:原研) と核燃料サイクル開発機構(JNC、略称:サイクル機構、旧動力炉・核燃料開発事業団 = 略称:動燃)を統合再編して、2005年10月に独立行政法人日本原子力研究開発機構として設立され、2015年4月に国立研究開発法人に改組した。2016年に一部の組織を国立研究開発法人放射線医学総合研究所に分離し、放射線医学総合研究所は量子科学技術研究開発機構となった。
職員の総数はおよそ3600名(組織概要や情報公開方第22条第1項に基づく情報提供の情報から、職員は約3100名。任期付研究員、博士研究員はおよそ500名程度)いると考えられ、JAEAは非常に大きな研究機関となっています。
あなたは原子力って何か知ってますか?
あなたは原子力って何か知っていますか?と、言われても原子力について詳しく知っている方はその道の研究者くらいなものですよね。私も深くは知りません。分野は異なりますが研究者の端くれなので一般の人の平均よりは知っていると思います。が、学生の頃に大学で放射能の半減期について実験をした経験があるくらいで、正直に言って、原子力については、全然知りません。
JAEAみたいに原子力を専門に研究する大きな研究機関があるくらいなので、原子力の持つ力には不明なところが多いのでしょう。
原子力っていうとあなたはどんな印象を持ちますか?
広島や長崎に落とされた原子爆弾、東日本大震災で起きた福島第一原子力発電所事故(これは事故なのか?)など。福島の原発事故は今も除染作業が続けられているなど、原子力については怖い印象たっぷりですね!!
とまあ、一般的には、原子力に対して怖い印象を持っている方が多いと思います。
原子力はよくわからない。そして怖い「印象」
つまり、私も含めほとんどの人は、原子力についてよく知らず、ただただ怖い「印象」を持っています。
余談ですが、最近、学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡る問題で、安倍晋三首相が国会審議で「印象操作」と繰り返し発言していますね。
JAEAのやってる研究
JAEAはこのよくわからなくて怖い原子力を研究の対象とし、袋が破けてよくわかない物が散らばっただけでこんなに大きくニュースで騒がれるようなものについて、日々、研究しています。JAEAで行なっている研究の一部を紹介すると、福島第一原子力発電所事故への対処に関わる研究開発や、自らの原子力施設の廃止措置及び高レベルの放射性廃棄物の処理技術に関する研究開発です。
今回の事故
6月6日、日本原子力研究機構の燃料研究棟において、核燃料物質を収納した貯蔵容器の点検作業中に、貯蔵容器内の樹脂製の袋の破裂を確認し、作業員5人が被曝しました。一度は作業員5人の体内からプルトニウムが検出され、内部被曝したとされましたが、体の表面に付着したものを検出した可能性が高く、今後も検査が必要とのことです。
また、核燃料の外部飛散については、飛散した実験室の壁や非常口、隙間への汚染はなく、その後目張りされました。また、廃棄ダストモニタは通常の指示範囲内であり、外部漏洩はないとされています。
つまり、作業員は外部被曝したが、内部被曝については今後の詳細な検査待ちで、外部への放射性物質の漏洩はない。と言うことです。
私は、こう考える。
事故は避けたかった。作業者の健康状態やこれからが一番心配です。有効な対策もして欲しいです。でも、これからも円滑に研究が進むように、声を上げて責め立てるのではなく、あえて今回のケースはナイストライと言いたい。 (作業員が、怒り狂っているなら、話は別です。)
事故は避けたかった。
避けたかった!けど、誰もわざと事故を起こしたい訳ではないですからね。作業者の健康状態やこれからが一番心配なところです。周辺住民の方にも不安を与えたかと思います。
有効な再発防止策をしてほしい
私の所属する研究所でも、安全については過剰なくらい叫ばれています。安全に対する取り組みは、私たち研究者の身を守るためのものではあるのですが、その過剰さゆえに、「これ、対策をした後の方が危険だよね?」みたいな本末転倒している対策もあります。
私の研究所では天ぷらを揚げれない。
例えば、うちの研究所では、天ぷらを揚げる作業は、危険という判断がなされ、揚げることができません。油を直火にかけるなんて言語道断!もし仮に天ぷらを揚げるとなると、ドラフトという目の前に透明な樹脂製の防護窓がついた換気扇付きの閉鎖空間で、直火ではなく電気式のヒーターで油を温めながら、手に油がはねても火傷しないようにグローブをつけて、作業着、保護メガネ、安全靴という完全防備の中、何かあってもすぐに対処できるように、二人以上で作業をする必要があります。そして、揚げる食材は水分が含まれていると油はねの危険性があるとみなされ、乾燥したものや、水分量が多いものはしっかりと水分除去する工程を経ない限り、揚げる対象として承認されることはありません。
正直こんな状態になると、なんだかなぁと思います。家で実験設備や試薬が揃うなら、プライベートで実験した方が良いなと強く感じます。
すみません、日頃の不満思いが噴出しました。話をJAEAに戻します。
研究が滞るのは避けて欲しい
対策について、当事者やその部署の人は恐ろしいまでの時間をかけます。もはや安全のための対策を研究対象にしたかのように、本来対象としている研究は全くできない状態になります。そして、新規の実験の立ち上げに際して、これまで4つくらいのプロセスを経て承認されていたものが、対策を経た後ではなぜか10くらいのプロセスを経ないとできなくなってしまいます。
安全は大切。でも、過剰に対策をして、研究が滞るのは避けて欲しい。
作業員の声が大切
もし、被爆した5人の作業員の方がこの事故について、「こんな作業をやらせたJAEAが悪い!」的なことを言っているのであれば、JAEAはその意見を真摯に捉え対策を立てる必要があります。けど、そうでなければ、外部の人が声を大きくしてとやかく言うことではない気がします。近隣住民に悪影響を及ぼすような実験であるならともかく、今回の作業は「貯蔵容器の点検中」に起きたのであって、この作業は近隣住民の安全を確保するためにも、行う必要があった作業なのです。
近隣住民の人からしたら「勝手な他人事の意見」だと思いますが、今回のケースは、何よりもまず、作業者の声が大切なのではないでしょうか。実際に被曝したのは、私たちの安全を確保するために作業していた人たちです。
ナイストライ!とあえて言いたい。
何度も言いますが、事故は避けたかった。作業者の健康状態やこれからが一番心配です。有効な対策もして欲しいです。でも、これからも円滑に研究が進むように、声を上げて責め立てるのではなく、あえてナイストライと言いたい。 (作業員が、怒り狂っているなら、話は別です。)
原子力によってこれまで散々ひどい目にあったり、今後の私たちに及ぼすリスクが高いからといって、原子力に対する研究をやめる・滞らせるという対策は、如何なものかと思います。
まず、原子力という力で、特に日本人は散々な目にあってますが、それは使い方の問題であって、原子力が悪いということではないですし、研究をやめる理由にはなりません。危険だからやらない。常識や今の理論の範囲外だから認めない。として研究しなくなってしまったら、困りませんか?私は困ります。この記事を見ているあなたも困るはずです。なぜなら、パソコンやスマホはもれなく、昔の人たちの常識範囲を超えた研究によって確立した技術なのですから。この記事を見ているあなたも、もれなく、こういった研究成果の恩恵を受けているんです。また、常識に捉われていたら青カビから生まれたペニシリンという抗生物質は発見されないまま、感染症でいつ死ぬかビクビクするって言う世界です。
また、そんなに危険だと考えるものがあるのに、今の理論や常識で判断して、わからないままにしていく方が、よっぽど怖くないですか?原子力が危険であるという認識があるなら、知らずに放置するなんていうそんな未来、私は怖いです。
そんな、怖い原子力について、被曝の危険がある中にもかかわらず研究をしてくれているJAEAにナイストライとあえて言いたい!(作業員が、怒り狂っているなら、話は別です。)
最後に
最後に、被曝した作業者とそのご家族、また不安を抱いた周辺住民の方たちには、このたびのご災難、お見舞い申し上げます。
何度も言いますが、事故は避けたかった。作業者の健康状態やこれからが一番心配です。有効な対策もして欲しいです。でも、これからも円滑に研究が進むように、声を上げて責め立てるのではなく、あえてナイストライと言いたいです。 (作業員が、怒り狂っているなら、話は別です。)
失敗から学ぶことは多いので、それをただ責めるのではなく、それを糧にもっといい研究が進むように対策をしていって欲しいです。
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