海外の人々から見たらそれはかなり奇異に見えたようだ。同時に日本人の精神主義に畏怖の念を覚えたという。
現在も、形を変えながら存続しているというのが、日本企業の中間管理職たちが集い、様々なことを学ぶ「管理者養成学校」だ。海外では当時それを「地獄のキャンプ」と呼んでいた。
日本のバブル経済は、1980年代後半に最高潮になった。日本の企業は、カリフォルニアのペブルビーチ・ゴルフ場やハリウッドスタジオ、果てはニューヨークのロックフェラーセンターのような主要不動産を次々と買い占めていった。
アメリカは恐怖と憤りがないまぜになった感情で、それをただ見ているしかなかった時代である。
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kanrisha yosei gakko
以下は海外サイトがこの動画に関して考察した記事を翻訳したものである。
管理職向けの地獄のキャンプ「管理者養成学校」via:The Intense Corporate ‘Hell Camps’ of 1980s Japan translated konohazuku / edited by parumo
バブル時代、日本は飛躍的に経済成長を遂げたが、中間管理職クラスを引き締めないと日本経済の驚異的な躍進が妨げられてしまうと見たようだ。
温和で、やる気がないか、無能だと思われた管理職対策や、未来の幹部候補の出世育成準備が整っていない問題の解決法は、"地獄の訓練"つまり地獄のキャンプへの入隊切符だった。
日本の管理職向け地獄のキャンプは、軍隊の訓練をベースにした厳しいしごきで成り立っている。その目的は、できが悪い中間管理職を鍛え上げて立派な管理者にするだけでなく、欧米の競争相手と渡り合うのに不足していると日本人が感じている自己主張力を得られるようにすることだ。
管理者養成学校(KYG)は、1970年代と80年代でもっともよく知られた地獄キャンプで、13日間の厳しいコースを設定している。
一日は午前4時15分に始まり、訓練は夕方まで続く。ラジオや訪問者は禁止で、幹部候補生は目前の使命に100%集中することを義務づけられる。教官から質問されたときは、速やかにしかも大声で答えなくてはならない。
恥のリボン
2017年の為替にして4300ドル(およそ47万円)の受講費用がかかる、KYGプログラム独特の特徴は、訓練生たちは到着したそのときから、胸に"恥のリボン"なるものをつけさせられることだ。これは、訓練プログラムを修了するためにマスターしなくてはらない克服課題を書いたリボンで、項目は全部で14ある。
各項目をクリアするとリボンをどんどんはずしていき、すべてのリボンがなくなれば晴れて卒業となる。
例えば、自信、会社の誇り、報告書の書き方、チーム作り、人前での演説など、管理者が自分が有能であることを証明するのに必要なことばかりだ。
そしてさらに、最終的な試練をクリアするためには、学校のある富士宮駅前で、"セールスカラス"という学校の歌をひとりで大声で歌わなくてはならない。人前で話をすることを恥ずかしいと思う感情を克服して度胸をつけるためだという。
脱落したものは出世の階段から外される
こうした一連の試練から脱落した者は、会社での出世の階段はもうのぼれないということになる。しかし、ここ9年の間(バブル時期)、15万人以上がKYGのプログラムを卒業し、現在全国に30万人以上の卒業生がいると学校は自慢している。
管理者養成学校は海外で注目の的
この地獄キャンプの異様な性質は、当然のことながら海外の注目を浴び、マスコミがインタビューに群がった。
1986年のロン・ハワード監督の映画『ガン・ホー』は、アメリカの自動車工場を買収した日本の自動車会社のことを描いていて、地獄キャンプの訓練内容をとりあげ、恥のリボンの概念を広く世間に知らしめた。
ジャーナリストのダイアン・ソイヤーも、このKYGの地獄キャンププログラムについて、1987年のドキュメンタリー番組60ミニッツの中でとりあげている。
容赦ないほどの日本経済の躍進を手をこまねいて見ているしかなかったアメリカ人にとって、地獄キャンプの話は不安要素を増やしただけだった。
日本に続けとアメリカでも管理者養成キャンプがはじまった
80年代後半、KYG版地獄キャンプがついにアメリカでも採用されたのは、当然といえば当然かもしれない。
ロサンゼルス、マリブの施設で、日本とほぼ同じだが、アメリカ人の感覚に合うよう少し手直しした厳しい訓練が始まった。
費用も上がって、ひとり5300ドル(約58万円)。一日は午前5時に始まり、恥のリボンは"挑戦のリボン"に生まれ変わった。
候補生たちは、40キロの夜間行進や、近所のショッピングモールの駐車場で唖然とした人たちの前を歩きながら、セールスカラスを歌うといった試練をやはり行わなくてはならなかった。
現在も日本に存続する管理者養成学校
今日、時代遅れに思えるKYGは、1979年に創業して以来変わらず、富士山のふもとで相変わらず運営していて、中間管理職や、見習い社員、新卒向けの訓練プログラムを提供しているという。
経済やビジネスの環境は昔とは変わり、ほかのキャンプ学校は途中で挫折してしまったが、KYGはあくまでも、1980年代バブル期を妙に思い出させる日本の地獄キャンプや彼らの恥のリボンにいまだにこだわっているという。
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コメント
1. 匿名処理班
鍛えるなら軍隊式が効率はいいだろうけども
現代は反発も多そうね
2. 匿名処理班
メンタリティだけあるゴミ管理職作ってどうするんだよ。
キーパーソンを以下に見つけるか、部下の扱い方、プロジェクト管理方法、見やすいグラフの作り方を教えろよ。
3. 匿名処理班
これって効果あるの?
やってるときは当然モチベーション上がってるだろうけど、1か月後、半年後、1年後はどうなんだろう?
4. 匿名処理班
地獄のキャンプってネーミングはアメリカのアメフト部のキャンプから取ったのかな
5. 匿名処理班
こんな養成所なんてブラック企業を増長させるためだけの存在でしょ
時代錯誤おこがましい、モーレツ社員が頑張ってきた結果が今の日本ならば
はっきり言ってここを卒業しても効果が無いに等しいのでは?
6. 匿名処理班
>しかし、ここ9年の間(バブル時期)、15万人以上がKYGのプログラムを卒業し、現在全国に30万人以上の卒業生がいると学校は自慢している。
その卒業生とやらが企業や日本の経済に有益であるとしたら、今の日本の経済状況は彼ら故なのか、はたまた彼らがいてもこの程度なのかどっちであろう?
7. 匿名処理班
富士の麓で参加したけど、数日経つと段々楽しくなってくるんだよこれが。
正直大したことない。
8.
9. 匿名処理班
こういうのは人権侵害だと思うから反対だけどね
この前富士宮駅前で歌っている人を見たよ、5人くらい行列してた
人通りは少ないけど街のイメージが悪くなるからやめれ
10. 匿名処理班
こんなもの今の時代何の役にも立たないぞ、今必要なのは柔軟さ・適応力・機転だろう
11. 匿名処理班
50代以上の世代にはこうした学校の光景が
「古き良き時代」と言えるのか?
それ以下の人間から見たら
もっと違う方法があるんじゃないか、他のやり方で業績を上げられるんじゃないか
という風にしか思えない
12. 匿名処理班
こんな洗脳教育が正しいと言われたら世の中が気まずくなるわ
13.
14. 匿名処理班
まだ普通にあるんだなこの学校
15. 匿名処理班
この手の「モーレツ社員育成スクール」に限らず、一般社員の研修に軍隊式を取り入れた企業は1970年代には普通にありました。城山三郎の企業小説にも普通に登場していたし、学生時代に駅前で社歌やスローガンをさ叫ばされている新入社員を見かけたこともあります。バブル期のテレビドラマ「不揃いの林檎たち2」第一話にも登場していました。
しかしながら「忠誠心」「滅私奉公」「根性論」などが非合理的・人権無視・法律的にNGであるばかりか、目的と手段が本末転倒になったり、ノルマのために精神的に追い込まれての自爆営業、法律無視の販売手法(過量販売など)などが社会問題化しただけでなく、結局は主体性、創造性の無いロボットのような同じタイプの社畜人間が増えただけで、若手社員が大量に退職したりて急速に廃れたのでした。しかしながら、座禅やサバイバルなど効果に相当疑問を感じる新入社員研修がいまだ一部に残っています。これから就活される方はOB訪問の際に企業体質を知るためにこのような研修が無いかさりげなく聞いておかれた方が良いかと思います。
16. 匿名処理班
たまたま景気が良かっただけなのを自分の才能だと勘違いした経営者の夢
17.
18. 匿名処理班
管理者なんて考える力が必要なのにそれを奪ってどうする笑
19.
20. 匿名処理班
この手のセンシティビティ・トレーニング(感受性訓練:ST)が
中心の自己啓発セミナーは、
米国の差別撤廃運動に関わった亡命ユダヤ人、クルト・レヴァンが
撤廃運動のリーダーを養成する過程で生まれ、
それが米メイン州べセル(Bethel)のNTL(ナショナル・トレーニング・ラボラトリー)が
推進母体となって全米各界に広まったんだけどね。
米国では40年代後半から30年以上も続く大ブームだったのに。w
日本のSTについては「ARCインターナショナル」をググって遡れば
米国が日本のことを笑えるのかって思うはず。
21. 匿名処理班
露骨に軍隊式にはしてないけど、今も似たような新人研修はあるな。
22. 匿名処理班
KYGって空気 読めない 学校?
23. 匿名処理班
ST(センシティビティ・トレーニング:感受性訓練)を大きく取り入れた
自己啓発セミナーの始まりは米国。
40年代後半から30年以上も続く一大潮流で
教育界から宗教界、産業界、果ては軍隊まで各界で行われていた。
日本のSTについては
【ARCインターナショナル】とか【ライフ・ダイナミックス】から遡れば、
米国が日本を笑えるのかって思えるはず。
24.