公益社団法人
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会長短信「春夏秋冬(40)」
「“One Health”国際会議の成功を歓び、禍根を残す無責任な特区決定に憤りを」
11月10日・11日に北九州市小倉で開催された第2回世界獣医師会-世界医師会”One Health”に関する国際会議は、31カ国から639名の参加者を得て盛大に開催され、多くの方々から大成功との評価をいただきました。
開会式には秋篠宮同妃両殿下にご臨席いただき、人と動物の共通感染症に関する専門的知見を含むお言葉を頂戴いたしました。
また、福岡県と北九州市主催によるガラディナーでは、太宰府天満宮の雅楽や県産の食材を使ったお料理や地酒を楽しみつつ、国内外の来賓の方々とも親交を深めました。
2日目の最後には、「福岡宣言」を主催4団体で採択・調印し、”One Health”の実践に関する医師と獣医師の連携活動の推進を、福岡の地から世界に向けて発信しました。
我が国における医師と獣医師の連携については、平成25年11月に日本医師会と日本獣医師会が学術連携協定を締結して以降、地方獣医師会においても地方医師会との間で同様の協定締結が進められてきましたが、まさに本国際会議の開催を控えた11月8日に55地方獣医師会の全てで協定締結が完了しました。
僅か3年の間に、多くの困難を伴いながらも、日本全国で医師会との連携体制を確立された地方獣医師会の役職員及び構成獣医師の皆様方のご尽力に対し、心より敬意を表するとともに感謝申し上げます。
翌12日には第10回2016動物感謝デーが北九州市との共催、福岡県との連携の下で開催され、2万4千人の来場者に獣医師の広範な職域についてご理解いただくとともに、ホースセラピー、団体企画、地方獣医師会の出店ブースなどを大いに楽しんでいただき、配布資材や食材が早々に無くなるほどの大盛況でした。
国際会議や動物感謝デーにご参加いただいた皆様、ご後援いただいた国、地方公共団体、関係団体等の方々、出店、展示、ご寄付等ご協力を賜った関係企業・団体の方々、そのほか種々ご支援いただいた皆様方に改めて感謝申し上げます。有り難うございました。
しかし、このような大成功の陰で、厳しい事態が進展していました。
それは、かねてから本会及び日本獣医師政治連盟が最重要課題に掲げて取り組んできた国家戦略特区による獣医学部の新設案件です。
11月9日、国家戦略特区諮問会議が開催され、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。」ことが決定されました。
そして、早くも18日には、国家戦略特区による内閣総理大臣の認定を受けた獣医学部の設置については、文部科学省告示による大学設置認可基準の適用外とする内閣府のパブリックコメント募集が開始されました。
コメント募集期間は12月17日までの1カ月間とされています。
このような国家戦略特区による獣医学部の新設は、文部科学省、獣医系大学等多くの関係者による半世紀にもわたる獣医学教育の国際水準達成に向けた努力と教育改革に全く逆行するものです。
更に、TPP協定等多くの経済連携協定の締結が進められる中、近い将来において獣医師の越境サービスが認められることも視野に、早急な教育水準の引上げが必要です。
人と動物の共通感染症、畜産物の安全性確保等、獣医師が担う広範な専門的業務は、豊かで安全な国民生活の実現に直結するものばかりです。
本会としては、将来にわたって国民全体の利益を守るために、国家戦略特区による獣医学部の新設は適当ではないと考え、平成26年6月27日の第71回通常総会決議に従い強く反対してきました。
地方獣医師会及び構成獣医師をはじめ関係の皆様方には、今回の国際会議を成功させ、日本全国に”One Health”の連携体制を確立した力を結集し、必ずや将来に禍根を残すであろう無責任な決定に対し、総力を挙げて反対して行きましょう。
平成28年11月22日 公益社団法人 日本獣医師会 会長 藏内勇夫
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