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230.オルティアの命
くじ引き五巻発売中、よろしくお願いいたします。

オリビアの背中に乗って、空を飛んでいた。
エレノアとひかりだけをつれて北に向かってとんでいた。
(こっちであってるのか?)
「と、エレノアは聞いてるけど?」
「人の子の匂いは一度会ったらわすれん、生きてさえいればどこであろうと辿れる。あの人の子は特に強い匂いを発しているのだから、間違えようがない」
ドラゴンのオリビアは重厚さを感じさせる口調でいった。
図体がでかい分、口調だけじゃなくて声そのものも重々しく響いて聞こえる。
普通の人間だと会話しただけでビクビクしてしまう程度の威圧感がある。
もっともその威圧感は半分ほど台無しになってる。
ひかりが首にぶら下がっているからだ。
オリビア、おーちゃん。
実質的には別人でも、ひかりはチビドラゴンとまったく変わりない接し方をしている。
それをオリビアも受け入れている、微笑ましさがまして、ますます威圧感が駄々下がりだ。
それはそれで別に構わないから、おれは無視して、さらにオリビアに話かけた。
「このままいくと何があるんだ? オルティアはロドトスの事を気にしてたから、都か?」
そう、オルティアだ。
メルクーリを国としてなりただせるには、帝国を倒したあとの内政が必要不可欠だ。
他の四カ国はどうにかなりそうだが、メルクーリだけおれが祭り上げたレクスとソーラの二人だ。
方や田舎村の男、方や下界と自ら断絶を選んだ里の娘だ。
政治など、出来るはずがない。
そこでオルティアだ。
大賢者オルティア、ロドトスの右腕だった女。
元の時代でも政治的な手腕をちらっと見せてたし、彼女なら出来ると思った。
「帝都・イーリオンならばあっちだ」
オリビアはかぎ爪の手をすぅと出して斜め前をさした。
「聞かない名前だな。そうか都じゃないのか」
(われがああなってたし、のうのうと都にはおらんだろ)
「そうだな……」
☆
それから一時間くらい飛んで、深い森に真上から着陸した。
森の中にひっそりと佇む秘密の隠れ家、山小屋程度の庵の前に下ろされた。
オリビアは竜人の姿に戻って、ひかりはその首にぶら下がったまま。
「ここか」
「うん、中にいるよ」
竜人の姿だと完全に口調が変わってしまうオリビア、こういう時の彼女は親しみやすい近所の幼なじみって感じにある。
ひかりがぶら下がってるのとお似合いの口調だ。
「おろろ」
「どうした」
「遠くからだと気づかなかったけど、人の子、死にかかってる?」
「何だって!?」
(うむ、中にいる人間の生命力がヤケに弱々しい)
オリビアとエレノアに立て続けに言われて、おれは扉を半ばぶち破るかのように中に飛び込んだ。
饐えた匂い、停滞した空気、薄暗い小屋の中。
うっすらと浮かび上がってくる人の姿。
相手は地べたに座っていて、壁の方を向いている。
長い髪にみた事のある服装、オルティアだ。
「オルティア!」
名前を呼びながら駆けつける――顔をあげた彼女の姿にぎょっとした。
老婆。
会ったのはほんの数日前だってのに、若々しかったオルティアはしわくちゃの老婆になっていた。
「きたのね……来ると思ってたわ」
口調は若々しいのに、声がしわがれて完全に老婆のそれだ。
「それよりどうしたオルティア、何があった!」
「報い、ね」
「報いだと?」
「ああ、また来たわ」
「なに?」
オルティアは反対側に視線を向けた。
その視線を追っていくと、黒がかった半透明のなにかが壁をすり抜けてきた。
「ひかり!」
「うん!」
ひかりを魔剣にして、母娘を構えてそいつと向き合う。
「亡霊か、一気に払う」
「待って」
「え?」
しわくちゃの手でおれを掴むオルティア。
「なんで待つんだ」
「あれは……かれは……」
(ロドトス、か)
「なに?」
オルティアとエレノアが共に言う。
驚いてパッと振り向く、原型をとどめてない亡霊、こいつがロドトスだってのか?
(間違いない、ヤツだ)
「……ええい、だったらとりあえずここから出るぞ!」
一気に払うわけにもいかなくて、おれはオルティアを抱き上げて、小屋から飛び出した。
☆
小屋からだいぶ距離をとった、まだ森の中だが、一段と静まりかえった空気は更に深いところに入った事を実感させた。
ひかりは魔剣の姿になってて、おれとオリビアがオルティアと向き合っていた。
そこでオルティアに説明してらった。
エレノアに精神を侵食されつつあるロドトスを助ける為に、オルティアは秘薬を使ってエレノアを実体化させ、その取引でロドトスを解放した。
解放されたロドトスはすぐに力尽きたが、魂はそのまま解放された。
「――はず、だったわ」
「解放されなかったってのか」
「一度はそうなった、しかしかれの魂は完全に天には帰らなかった。見ての通りになって、わたしを襲うようになった」
「それでこうなったのか?」
「やっぱり生に執着があるのか、わたしの精気をすって生き返ろうとしてるいるのかもしれないわ」
「そうなのか?」
エレノアに聞いた。
(故意かそれともどうでもよかったからか、われの力が魂に残ったのだろう。たまにある、われのちからを持ったまま死ぬとああして生に執着する怨霊となるのだ)
「あなた自身肉体に執着していたものね」
(この頃はな、いまはもうない)
「それもかれのおかげ?」
(うむ)
間に通訳で入ってやって、オルティアとエレノアの橋渡しをしてやった。
「かれを解放したい、どうすればいいの?」
(簡単だ、こいつに頼めばいい)
「おれ?」
(ヤツを斬るのだ、魂ではなく、魂に取り憑いているわれの力だけを斬るのだ)
「なるほど」
「出来るの?」
「まかせろ、次に来たら昇天させてやる」
エレノアがいったそれはさほど難しい事じゃない、むしろエレノアになかった力を引き出せたおれからすれば自転車の片手運転程度の難易度でしかない。
オルティアの頼みだ、後でさくっとやってやる。
「それよりもお前だ。その姿、だいぶやばいんじゃないのか」
「そうね、寿命を50年は持ってかれた感じ。もう長くないわね」
「どうにかならないのか」
「こればっかりは」
オルティアは苦笑いした。
大賢者オルティア、世の全てを知る女。
全てを知っているからこそ寿命にあらがえない、といっている。
(……なるほど、そういうことか)
「どういう事だエレノア」
(今理解した、何故ただの人間であるこやつが貴様と出会えたのかを)
「おれは何をすればいい」
(物わかりが早すぎる)
エレノアはくっくと笑った。
オルティア、ただのオルティア。
初めて出会った時は人間の精気を吸い取る老婆だったから人外の長命種だと思ってたけど、この時代で出会ったオルティアは自分を「ただの人間」だといった。
なぜ彼女が行き続けて未来でおれと出会ったのかは密かに疑問だった。
(覚えているか、メルクーリの女どもを抱いた後にわれが貴様にいったこと)
「シーマたちのことか? …………お前の女の抱き方?」
「もしかして……これ?」
オルティアがそう言って、おれの手を掴んだ。
未来のオルティアといつもやってること、手を掴んで精気を吸い取るあの技。
それとまったく同じつかみ方だった。
「ロドトスがやっていたあれね」
おれがエレノアから聞いたのを、オルティアは実際にみていたようだった。
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【同時連載作品】
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■レベル1だけどユニークスキルで最強ですリンク
ブラック企業で過労死した佐藤亮太は異世界に転移して、レベルが1に固定される不遇を背負わされてしまう。
レベルは上がらない一方で、モンスターからその世界に存在しないはずのチートアイテムをドロップするという、彼だけのユニークスキルをもっていた。
それを知った彼は手始めに能力アップアイテムでステータスMAXになって、更に自分にしか使えない武器やアイテムの数々を揃えていった結果、レベル1のまま能力も装備も最強になって、好きに生きられる第二の人生をはじめられることになった。
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