生産性を向上させるには4つの方法がある

日本では製造現場における改善活動の効果が高く評価され、オペレーション効率こそ企業競争力の源泉と考えがちだ。そして、生産性向上すなわち改善によるコスト削減という一種の先入観がある。しかし、生産性を高める方法は4つある。

成果を大きくすることには
理論上の制限がない

 人手不足が深刻化しています。4月の有効求人倍率は1.48倍で、1974年2月以来43年ぶりの高水準、失業率は2.8%で、労働者の供給余力は小さくなっています。

 建設や小売など多くの労働現場で人手が足りず、納期に間に合わなかったり開店時間を短縮したり、あるいは既存の従業員に過重労働を強いたりしています。

 6月6日に閣議決定した2017年版「ものづくり白書」には、16年末の調査で約8割の企業が人材確保を課題と認識し、22.8%がビジネスに影響が出ていると記されています。また、「現場力の維持・強化での課題は?」という問いに対する最多回答数は、人手不足により人材の確保が難しくなっている、というものです。

 限られた数の従業員でより多くの仕事をこなすため、1人当たりの成果を増やす、すなわち生産性向上が、多くの企業や職場で求められています。

 そこで、6月9日(金)発売のDHBR7月号の特集は、「生産性」です。

 特集の冒頭で、日本電産会長兼社長の永守重信氏と対談するのは、元マッキンゼー・アンド・カンパニー人材育成マネジャーの伊賀泰代氏。ベストセラー『生産性』(ダイヤモンド社)の著者です。

 同書は読み始めると、目から鱗が落ちる思いの連続となりますが、特に第1章の冒頭が強烈です。「日本では、製造現場における改善運動から生産性という概念が普及したため、『生産性を上げる手段=改善的な手法によるコスト削減』という感覚が定着してしまっています」とあります。

 生産性=(成果)÷(投入資源)です。すると、生産性を向上させるには、「成果を大きくする」、「投入資源を少なくする」の2つの方法があります。伊賀氏は、それぞれに改善と革新による2つの方法があり、計4つの方法があると説きます。

 すなわち、①改善により投入資源を小さくする、②革新により投入資源を小さくする、③改善により成果を大きくする、④革新により成果を大きくする、の4つです。①や②のように投入資源を縮小することには限界がありますが、③や④のように成果を大きくすることは理論上の制限がなく創意工夫でどんどんと伸ばせます(詳しくは、是非、同書をご一読ください)。

 今回の特集では、それぞれの論考が①〜④の発想で、生産性向上策について論じています。特集で扱っているのは、企業における生産性向上策ですが、著名な経済学者、ポール・クルーグマン氏は、国が長期的に生活水準をどれだけ上げられるかは労働生産性でほぼ決まる、と書いています(『クルーグマン教授の経済入門』(筑摩書房)など)。

 日本企業の競争力を高めるためにも、また、日本が成長し、個人の生活を豊かにするためにも、生産性向上が必要です。それは永遠のテーマであり、人口減少が長期間続く日本では最大の経済テーマであります。(編集長・大坪亮)
 

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