英総選挙 与党・保守党過半数割れ メイ首相は政権維持の意向

英総選挙 与党・保守党過半数割れ メイ首相は政権維持の意向
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EU=ヨーロッパ連合からの離脱の方針などが争点となったイギリスの総選挙は、これまでの開票の結果、与党・保守党が第1党にはとどまるものの、過半数の議席を維持できないことが決まりました。メイ首相は引き続き政権を担う意向を示していますが、選挙の結果について責任を問う声が強まることも予想され、EUからの離脱に向けた交渉にも影響がでるのは避けられない情勢です。
8日、投票が行われたイギリス議会下院の総選挙は開票作業が進み、日本時間の午後5時50分現在、議会下院の650議席のうち649議席が確定しました。

その結果、与党・保守党が318議席、最大野党の労働党が261議席、スコットランド民族党が35議席、自由民主党が12議席などとなり、保守党はこれまでの330議席から議席を減らし、過半数の326議席を維持できないことが決まりました。

ただ、メイ首相は引き続き政権を担う意向を示していて、日本時間午後8時すぎに首相官邸を車で出発してバッキンガム宮殿に向かい、エリザベス女王と謁見して政権の樹立に向けて了解を求めるものと見られます。

BBCは、選挙で10議席を獲得した北アイルランドの地域政党の協力を得ることで合意したと伝えています。

しかし、みずから総選挙の前倒しを決めながら過半数の議席を維持できなかったことについては、野党だけでなく与党の内部からも批判が上がっていて、今後首相の責任を問う声が強まることも予想されます。

さらに、政治の混乱が続けば、今月中旬から始まる予定だったEUからの離脱に向けた交渉の日程にも影響を及ぼすことになり、EU側でも懸念が広がっています。

労働党党首 政権に意欲

第2党にとどまったものの獲得議席を伸ばした労働党のコービン党首はイギリスのテレビ局のインタビューに答え、与党・保守党が議席を減らしたことについて「どちらが選挙で勝利したかは明白だ。メイ首相はみずからの決断として選挙に臨んだが政府は弱く不安定になった。メイ首相は辞職すべきだ」と述べ、改めて退陣を求めました。そのうえで、「われわれはEUとの離脱交渉を引き継ぐ用意はできている。雇用を最優先にした交渉を行いたい」と述べ、保守党にかわって政権を担うことへの強い意欲を示しました。

EU「離脱交渉は英の準備整ってから」

イギリスの総選挙でメイ首相率いる保守党が過半数の議席は獲得できず、連立政権を組む必要性が高まっていることを受けて、イギリスとの離脱交渉にあたるEU=ヨーロッパ連合のバルニエ首席交渉官は9日、「離脱交渉はイギリス側の準備が整ってから始めなければならない。交渉を合意に導くことに注意を傾けよう」と述べ、今月19日にも予定されている交渉の開始に遅れが出ても容認する考えを示しました。

一方、EUのトゥスク大統領は自身のツイッターに「われわれは離脱交渉がいつ始められるかわからないが、いつまでに終わらせなければならないかはわかっている。交渉が合意にいたらないということがないよう力を尽くしてほしい」とするメッセージを投稿し、原則として2年となっている期限内に交渉をまとめるため交渉の開始を急ぐよう求めました。

独外相「政権発足を早く」

イギリスの総選挙の結果を受けてドイツのガブリエル外相は9日、「真剣に離脱交渉が行えるようイギリスで早く政権が発足することを望む。できれば、イギリスにはEUと近い関係を維持してほしい」と述べ、今後の離脱交渉でイギリスがより柔軟な姿勢を取ることに期待を示しました。

官房長官「日本企業への影響 最小限に」

菅官房長官は臨時閣議のあとの記者会見で、「EU=ヨーロッパ連合からの離脱交渉については最大限の注視を払っていきたい。また世界経済への影響や、英国で活動しているわが国の企業に対する影響は最小限にすべきだ。政府としてはしっかりと対応していきたい」と述べました。

経団連会長「冷静に受け止めたい」

イギリスの総選挙の結果について、経団連の榊原会長は都内で記者団に対し、「イギリス国民が選んだことであり、冷静に受け止めたい。どういう影響が出てくるのか、今の時点では予測できないが、EU=ヨーロッパ連合からの離脱がどういう形で収まっていくのか、注意深く見守っていきたい」と述べました。