6月5日、サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、バーレーンの4ヵ国が、突然、カタールとの国交断絶を宣言した。翌6日には、さらにイエメンとモルジブが加わった。
断交の公式の理由は、カタールがテロリストを支援していること。これまでカタールと友好的な関係にあったはずのサウジが、世界中にそう言い放ったのだから、衝撃は大きかった。
ただ、真の理由は、おそらくもっと複雑だ。カタールとイランの接近がサウジの逆鱗に触れたとも言われるし、アメリカが背後で危機を演出したという説もある。あるいは、カタールの膨大な資源が狙われている可能性も。オバマ政権下で小休止していたイランとアメリカの歴史的抗争が、トランプ大統領の下で復活したことと関連しているのかもしれない。
さらに7日には、ロシアがカタールの国営通信社をハッキングしてフェイクニュースを流し、危機を作ったという、アメリカの情報機関の見解とやらも飛び出した(報じたのはCNN)。
そもそも、テロリスト支援の嫌疑なら、前々からサウジにもイエメンにも掛かっていたことだし、結局、何が何だかわからない。いずれにしても、今、ペルシャ湾岸は極めて不穏な状況だ。
ペルシャ湾のノース・フィールドは、カタールの沿岸から対岸のイランまでつづく世界一広大な天然ガス田だ。カタールという小さな国が、世界で一番豊かな国の一つである理由が、このノース・フィールドなのだ。ここにはカタールの分だけでも、推定25.5兆㎥のガスが眠っていると言われる。さらにカタールは石油の大産地でもある。
今、カタールが非難されているのは、アルカイダやムスリム同胞団、そして、ハマスなどへの寛大な資金援助。シリア内戦においても、カタールの資金なしには、ISがここまで力を蓄えることはなかっただろうと言われている。ただ、この情報は西側の情報機関(おそらくCIA?)から出ているらしいので、丸ごと信じるべきかどうかはわからない。
いずれにしても、これまでのカタールではテロリスト支援などどこ吹く風で、首都ドーハには高層ビルが未来都市のように立ち並び、衛星放送「アルジャジーラ」は欧米の文化を強調した。
一人当たりの収入は世界一。近年は、この小さな国で幾種類ものスポーツの祭典が開かれたし、2022年には、サッカーのW杯も開かれる予定だ。そして西側の政治家たちは、この桁違いに裕福なカタール首長を常に丁重に扱い続けた。