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2015年7月 1日 (水)

路上ライブを警察に止められた

 

 友だちと二人でフォークギターのライブユニットを組んで駅前の歩道で路上ライブをしていたら,警察官に止められて,交番に連れて行かれ,「もう二度としない」と誓約書を書かされました。路上ライブって,犯罪になるんですか?

 

 人や車の通りに,とても大きな影響がある路上ライブなら,

 警察の許可をもらっていないと,犯罪になります。

 でも,

 人や車の通りに,とても大きな影響まではない路上ライブなら,

 警察の許可はいりません。



 道路は,人や車が通るための場所です。

 人や車が安全に通れるように,

 「道路交通法」という法律が,道路のルールを細かく決めています。



 道路を,人や車が通る以外のために使うときは,

 道路ほんらいの役割の「人や車が安全に通れること」と両立するかどうかを,

 警察がチェックすることになっています。



 道路で工事をする,

 道路に銅像や広告を置こうとする,

 道路に屋台などのお店を出そうとする,

 そういったときには,警察に申請をして,許可をもらいます
【★1】


 警察は,

 「人や車が安全に通れるから大丈夫」,

 「条件を付ければ安全だ」,

 そう判断したら,許可を出さなければいけないことになっています
【★2】


 その警察の許可をきちんともらわないで,

 工事をしたり,銅像や広告を置いたり,屋台などのお店を出したりしたら,

 犯罪として処罰されます
【★3】


 ところが,「路上ライブをするときに警察の許可がいる」とは,

 道路交通法には,書かれていません。



 じつは,路上ライブについては,

 道路交通法という法律ではなく,

 都道府県の「公安(こうあん)委員会」がつくったルールで,

 「警察の許可が必要」とされています
【★4】

 「公安委員会」というのは,警察の上にある,警察を管理する組織のことです
【★5】


 道路交通法は,

 「工事をする,銅像や広告を置く,屋台を出す以外にも,

 警察の許可が必要なものを,都道府県の公安委員会が決めていい」

 と,一部をまかせています
【★6】


 しかし,公安委員会が何でもかんでも好き勝手にルールを決めていいわけではありません。

 法律は,選挙でみんなから選ばれた議員が,議会で作ったものです。

 でも,公安委員会の人たちは,選挙で選ばれていません。

 だから,公安委員会は,法律が決めたワクの中でしか,ルールを決められないのです。



 道路交通法が言っているのは,次のようなことです。


 「お祭りや,映画・テレビの撮影みたいに,

 人や車が通ることに『著(いちじる)しい』影響があるときには,

 警察の許可がいる。

 お祭りや映画・テレビの撮影以外に,どんなものがあるかは,

 都道府県の公安委員会で決めてください。」



 「著しい」というのは,「とても大きい」という意味です。

 この「著しい影響」というのが,法律が作ったワクなのです。



 有名なバンドだったり,

 大きな音量で派手なパフォーマンスだったりしたら,

 人がたくさん集まって,人や車が通るのに影響が「著しい」かもしれません。

 大きな駅の改札の目の前だったり,

 乗り降りのとても多いバス停のすぐ横だったりしたら,

 人がたくさん行き交(か)いますから,「著しい」影響があるかもしれません。



 でも,路上ライブすべてが,人の通りに「著しい」ほどの影響が出るわけではありません。


 たしかに,路上ライブの演奏に聴き入ってくれる人たちがその場に立ち止まれば,

 その道路を通る人たちの行き来に,多少の影響はあるでしょう。

 でも,その影響は,お祭りや映画・テレビ撮影ほどの「著しい」ものではないはずです。

 人の行き来に「著しい」影響まではない路上ライブなら,

 警察の許可をもらう必要は,ないのです。



 路上でビラを配ることも,

 法律ではなく,公安委員会のルールで,

 「警察の許可が必要」とされています。



 これまで,警察の許可なく路上で政治的な意見を書いたビラを配った人が,警察から止められたり,逮捕されたりして,裁判になったケースが,いくつかあります。

 それらすべてのケースで,裁判所は,

  「そのビラ配りは,人や車が通るのに『著しい影響』まではなかった。

  だから,そもそも警察の許可が必要なかった。

  警察が止めたり,逮捕するのはおかしい」,

 そう言っています
【★7~9】


 もちろん,路上ライブの内容や,演奏する場所・時間によっては,

 人の行き来に「著しい」影響が出てしまうものもあるでしょう。

 また,将来,あなたたちのライブユニットがとても人気になって,

 路上ライブにたくさん人が集まり,人の行き来に「著しい」影響が出ることがあるかもしれません。

 そういう場合には,きちんと警察に許可をもらうための申請をしてください
【★10】

 もし,申請をしても,警察がまったく許可しないなら,弁護士に相談してください。




 どんな人にも,「表現の自由」があります
【★11】


 自分の思いや,気持ちや,考えを,いろんな形で表現することは,

 その人自身にとっても,

 その表現を受け取る人にとっても,

 そして,社会全体にとっても,

 非常に大切なことです。

 いろんな人の,いろんな表現が行き交い,混じり合うことで,

 一人ひとりが成長していくことができ,

 そして,社会も豊かなものになるからです。



 だから,憲法は,

 表現の自由を,とてもだいじなもの,よっぽどのことがなければ制限できないものとしています。

 お金や財産のことも,もちろん大切ですが,

 表現の自由は,お金や財産のことよりも,よりいっそう,だいじにされなければならないのです
【★12】


 ところが,じっさいには,

 お金もうけのためにいろんなお店がビラをたくさん配り,駅前で大音量の音楽を流して宣伝していても,警察は止めないのに,

 若い人たちが,素朴(そぼく)な気持ちや,真面目な意見を,音楽に乗せて路上ライブをしていると,すぐに警察が止めに来てしまいます。

 これは,まったくおかしなことです。



 道路は,みんなのもの,公共のスペースです。

 そして,「表現の自由」は,社会にとって,非常に大切なものです。

 だから,

 道路は,たんに,人や車が移動するためだけの場所ではなく,

 いろんな人の思い,気持ち,考えが行き交う,表現のための場所でもあるのです。

 道路交通法は,「表現の自由」と「人や車の安全」とのバランスをとるように作られています。

 それなのに,警察が,「人や車の安全」ばかりを大切にし,それを理由にして,「表現の自由」をないがしろにするのは,あってはならないことです。



 今,多くの若い人たちが,

 首相官邸前や国会前で抗議行動をしたり,

 デモやパレードをしたりして,

 いろんな形で,路上で声を上げています。

 私は,それを,とても嬉しく,とても心強く思っています。

 私たちの大切な社会を守り,そして,よりいっそう良いものにしていくために,

 子どもも大人も,それぞれが,

 自分の思い,気持ち,考えを,公共のスペースで表現できる世の中であり続けることが必要なのです。



 ぜひ,路上ライブを続けて,

 道を行き交う人たちに,あなたたちの思いを届けてください。

 

【★1】 道路交通法77条1項 「次の各号のいずれかに該当(がいとう)する者は,それぞれ当該各号に掲(かか)げる行為(こうい)について当該行為に係る場所を管轄(かんかつ)する警察署長…の許可…を受けなければならない。
 一 道路において工事若(も)しくは作業をしようとする者又(また)は当該工事若しくは作業の請負人
 二 道路に石碑(せきひ),銅像,広告板,アーチその他これらに類する工作物を設けようとする者
 三 場所を移動しないで,道路に露店,屋台店その他これらに類する店を出そうとする者
(略)」
【★2】 道路交通法77条2項 「前項の許可の申請があった場合において,当該申請に係(かか)る行為が次の各号のいずれかに該当するときは,所轄警察署長は,許可をしなければならない。
 一 当該申請に係る行為が現に交通の妨害(ぼうがい)となるおそれがないと認められるとき。
 二 当該申請に係る行為が許可に付(ふ)された条件に従(したが)って行なわれることにより交通の妨害となるおそれがなくなると認められるとき。
 三 当該申請に係る行為が現に交通の妨害となるおそれはあるが公益上又は社会の慣習上やむを得ないものであると認められるとき。」
【★3】 道路交通法119条1項 「次の各号のいずれかに該当する者は,3月以下の懲役(ちょうえき)又は5万円以下の罰金に処(しょ)する。…(略)…
 十二の四 …第77条(道路の使用の許可)第1項の規定に違反した者」
【★4】 たとえば,東京都の場合は,公安委員会が作った「東京都道路交通規則」で,次のように決められています。路上ライブは(6)の「奏楽」,ビラ配りは(8)の「物を…交付」にあたります。
 東京都道路交通規則18条 「法第77条第1項第4号の規定による警察署長の許可を受けなければならない行為は,次に掲げるとおりとする。
(1) 道路において,祭礼行事,記念行事,式典,競技会,仮装行列,パレード,街頭行進その他これらに類する催(もよお)し物をすること。
(2) 道路において,旗,のぼり,看板,あんどんその他これらに類するものを持ち,若しくは楽器を鳴らし,又は特異な装(よそお)いをして,広告又は宣伝をすること。
(3) 車両等に広告又は宣伝のため著しく人目をひくように,装飾その他の装い(車両等を動物,商品その他のものにかたちどることを含む。)をし,又は文字,絵等を書いて通行すること。
(4) 道路において,ロケーション,撮影会その他これらに類する行為をすること。
(5) 道路において,拡声器,ラジオ,テレビ,映写機等を備え付けた車両等により,放送又は映写をすること。
(6) 演説,演芸,奏楽,放送,映写その他の方法により,道路に人寄せをすること。
(7) 道路において,消防,水防,避難,救護その他の訓練を行なうこと。
(8) 交通の頻繁(ひんぱん)な道路において,寄附を募集し,若しくは署名を求め,又は物を販売若しくは交付すること。
(9) 道路において,ロボットの移動を伴う実証実験又は人の移動の用に供(きょう)するロボットの実証実験をすること。」
【★5】 地方自治法180条の9第1項 「公安委員会は,別に法律の定めるところにより,都道府県警察を管理する」
 警察法38条1項 「都道府県知事の所轄(しょかつ)の下に,都道府県公安委員会を置く」
 同条3項 「都道府県公安委員会は,都道府県警察を管理する」
【★6】 道路交通法77条1項(★1の条文)四号 「前各号に掲げるもののほか,道路において祭礼行事をし,又はロケーションをする等一般交通に著(いちじる)しい影響を及(およ)ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で,公安委員会が,その土地の道路又は交通の状況により,道路における危険を防止し,その他交通の安全と円滑(えんかつ)を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者」
【★7】 東京高等裁判所昭和41年2月28日判決(高等裁判所刑事判例集19巻1号64頁)は,次のように判断して,一審の無罪判決を維持(いじ)しました。
 「道路交通法第77条第1項第四号により公安委員会が定めることを委任(いにん)されている行為の範囲は,法自体において明示するところの,一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為であることを前提とするものであることは,法文上疑をいれる余地がない…から,法第77条第1項第四号の規定により公安委員会が定めた行為であっても,一般にそれが法にいわゆる一般交通に著しい影響を及ぼすような行為に該当(がいとう)すると解することができなければ,法定の要許可行為とならないことはいうまでもない。そして,…その『一般交通に著しい影響を及ぼす』ということが意味する一般交通に与える支障の程度については,法が例示する『祭礼行事』や『ロケーション』の概念(がいねん)から一般に連想されるところの内容にかんがみ,又法第76条において道路において禁止行為として掲げるものの多くが,道路においてそのようなことをする行為自体において不当視されるものか若(も)しくは社会的に無用行為と見られるもの等であるのに反し,法第77条の定める道路の使用に関する要許可行為の中には,その道路における行為自体が公益上若しくは社会の慣習上有意義であると考えられるものあるいは個人の表現の自由,生活上の権利に関するもの等も含まれるので,これと道路における危険の防止ないし交通の安全と円滑を図る必要とを調和させその妥当な限界を画(かく)するため,とくに『一般交通に著しい影響を及ぼすような行為』でなければならないという条件が置かれたものと考えるときは,それ(前述の「一般交通に著しい影響を及ぼす」ということが意味する一般交通に与える支障の程度)は相当高度のものを指すと解さなければならない。…本件において…前認定の本件印刷物交付の方法ならびに同所における当時の交通状況にかんがみ,一般交通に著しい影響を及ぼすことが通常予測し得られるほどの条件が達成される状況にあったとは証拠上これを認めることはできない。…してみれば,被告人らの本件印刷物の交付は法第77条第1項第四号所定の要許可行為に該当するものとはいえない。したがって被告人らの本件所為(しょい)はいずれも罪とならないものとして被告人らに無罪の言渡をした原判決には,何ら所論(しょろん)の法令の解釈を誤った違法は認められず,本件控訴(こうそ)は理由がない」
【★8】 大阪地方裁判所昭和55年11月26日(判例時報992号21頁・国鉄大阪駅広場・無許可ビラ配付規制の国家賠償請求事件判決) 「当裁判所は,ここで,傍論(ぼうろん)として道交法77条1項四号,規則15条9号に関する見解を付け加えておく。
 道交法77条1項四号…をうけた規則15条9号は,「交通のひんぱんな道路において通行する者に印刷物その他の物を交付すること」を要許可行為と定めている。
 ところで,右道交法の規定は,「祭礼行事をし,又はロケーションをする等」と例示しているのであるから,その他の行事行動も,これらに類似する通行の形態や方法による道路の使用又は集合で,一般交通に著しい影響を及ぼすような行為を規制の対象としているといわなければならない。したがって,右道交法の規定は,これと類型を異にしているビラ配付まで規制の対象として予定してはいないと解するのが相当である。すなわち,ビラ配付は,配付者がほぼ一定の場所に立ちどまり,通行の流れを利用して手早く行なうのが普通であるから,多くの場合,そのこと自体によって人の集合が予想されるものではないし,広範囲の場所が排他的に占有される関係にもない。…(略)…
 そうだとすると,規則15条9号は,道交法77条1項四号の規定をうけて定められているものであるから,右規則において要許可行為とされている「交通のひんぱんな道路において通行する者に印刷物その他の物を交付すること」の解釈としても,交通のひんぱんな道路で行われるビラ配付はすべて一律に右条項に該当するものと解することはできず,むしろ逆に,少人数で通常の方法でなされるビラ配付は,交通のひんぱんな道路で行われる場合でも,許可を要しないと解する余地がある。
 本件の場合,場所的には,大阪市内でも,公衆が多数通行するところであり,時間的には,土曜日の午後であるから,ビラ配付者の数や,ビラ配付の方法によっては,本件現場の交通に著しく影響を及ぼすことになり,道交法上の許可が必要である。しかし,前記認定のとおり,原告らは,10名前後であり,二列に並んでビラ配付をしており,交通の著しい妨(さまた)げになったといえないのであるから,この限りでは,道交法及び規則の許可が必要な場合には当たらないというほかはない。」
【★9】 千葉地方裁判所平成3年1月28日判決(判例時報1381号89頁) 「道交法77条第1項は,所轄警察署長の許可を受けなければならない行為を一号ないし四号に定めるが,四号は,「前各号に掲げるもののほか,道路において祭礼行事をし,又はロケーションをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で,公安委員会が,その土地の道路又は交通の状況により,道路における危険を防止し,その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとするもの」と規定する。そして,施行細則11条は,「法77条1項四号の規定により公安委員会が署長の許可を受けなければならないものとして定める行為は次の各号に掲げるものとする。」としてその各号が道交法77条1項四号の授権に基づく規定であることを明らかにした上,九号で「交通のひんぱんな道路において広告又は宣伝のため,文書,図画,その他の物を通行する者に交付すること。」と定める。したがって,千葉県において文書,図画,その他の物を通行する者に交付しようとする者があらかじめ所轄警察署長の許可を受けなければならないのは,
 <1> 一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為で,交通のひんぱんな道路において広告又は宣伝のためにする場合か,
 <2> 道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で,交通のひんぱんな道路において広告又は宣伝のためにする場合か
 であると解すべきである。そうとすると,同県においては,普段は人等の通行量が多いという程でなく,かつ,特定の状況下においても人等が一時に急激に増えて人等がひっきりなしに行き交うというような兆候(ちょうこう)のない相応(そうおう)の幅員(ふくいん)の歩道上で人等の通行が大きく阻害(そがい)されるようなおそれのない間隔である程度の人数の者が通常の方法で行うビラ配布行為は,道交法77条1項四号,施行細則11条九号に該当しないことが明らかであるから,原告らの前記ビラ配布行為は,道交法77条1項四号,施行細則11条九号に該当せず,したがって,右ビラ配布をするに当たって東金署長の許可を必要としなかったものである。」
【★10】 道路使用許可の申請は,未成年者であっても,本人がします。親の同意も不要です(2015年6月22日,警視庁交通規制課道路第二係に電話で確認済み)。
【★11】 憲法21条1項 「集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。」
 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)12条1項 「締約国(ていやくこく)は,自己(じこ)の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及(およ)ぼすすべての事項(じこう)について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において,児童の意見は,その意見の年齢及び成熟度に従(したが)って相応(そうおう)に考慮されるものとする」
 同条約13条1項 「児童は,表現の自由についての権利を有する。この権利には,口頭,手書き若(も)しくは印刷,芸術の形態又は自ら選択する他の方法により,国境とのかかわりなく,あらゆる種類の情報及び考えを求め,受け及び伝える自由を含む。」
 同条2項 「1の権利の行使については,一定の制限を課することができる。ただし,その制限は,法律によって定められ,かつ,次の目的のために必要とされるものに限る。(a)他の者の権利又は信用の尊重 (b)国の安全,公(おおやけ)の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護」
【★12】 「『二重の基準』,すなわち,表現の自由を中心とする精神的自由を規制する立法の合憲性は,経済的自由を規制する立法よりも,とくに厳しい基準によって審査されなければならない」(略)「経済的自由も人間の自由と生存にとってきわめて重要な人権であるが,それに関する不当な立法は,民主政の過程が正常に機能しているかぎり,議会でこれを是正(ぜせい)することが可能であり,それがまた適当でもある。これに対して,民主政の過程を支える精神的自由は『これわ易(やす)く傷つき易い』権利であり,それが不当に制限されている場合には,国民の知る権利が十全(じゅうぜん)に保障されず,民主政の過程そのものが傷つけられているために,裁判所が積極的に介入して民主政の過程の正常な運営を回復することが必要である。精神的自由を規制する立法の合憲性を裁判所が厳格に審査しなければならないというのは,その意味である」(芦部信喜「憲法 第4版」181頁) 

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