Prepare. Protect. Survive. Thrive.
(備えろ。守れ。生きのびろ。そして繁栄しろ。)
こんなテーマのもと、来たるべきアポカリプスに備えるためにアメリカ最大級のサバイバル博覧会「PrepperCon」が今年もサンディ(ユタ州)で開かれたそうです。
日本でも北の脅威をふまえて核シェルターの販売数が今年の4月のみで去年の年間販売数を超えたり、地震に備えて備蓄したりと、防災メンタリティーが定着してきているように思えます。しかし、アポカリプスに備えて準備をしているプレッパーたちとはスケールが違う気がします。
2017年で3年目をむかえた「PrepperCon」には、今年約13,000人も訪れたようです。会場内には子ども用防弾リュックや、1800万ボルトの電流をくらわす電子タバコ風スタンガン、銃、剣など、ちょっとショッキングなアイテムが…。でもそれと並んで、至って無害な電気不要の湯沸かし器、園芸用品や種子貯蔵庫など多彩なサバイバルグッズが会場いっぱいに並べられていました。
終末後の快適な暮らしを提案する200近い販売ブースのかたわらには、サバイバル講習会が行われていたり、バーチャル銃撃戦や「ハリケーン・ハウス・シミュレーター」など災害体験スポットも。そこでは、世界の終わりを楽しく疑似体験していたそうですよ。
…ん、楽しく?
米ギズモードのライター、Peter Ruggの体験レポートによると、「PrepperCon」はサバイバリストの集まりにしては、やや緊張感に欠けているうように思われたそうです。アメリカでは年間約200人が悪天候によって命を落とすというのに、「ハリケーン・ハウス・シミュレーター」では子どもたちがケラケラ笑いながら揺さぶられていました。また、銃撃戦を体験できるコーナーでは、頭に銃撃をくらってもみんな大爆笑しているので、銃乱射事件が絶えない国に住んでいる危機感がほど遠く感じられたそうです。
今年の「PrepperCon」にせっぱつまった雰囲気が感じられなかったのは、アメリカのプレッパーズ市場が大きく変わってきているからかもしれません。
「PrepperCon」を創立したスコット・スターリングスさんによると、これまではプレッパーに不可欠なテントや、自家栽培キット、貴金属類、銃などを提供する会社の顧客層は主に保守系でした。ところが、トランプ政権下で銃の取り締まりにおびえる必要がなくなった保守系サバイバリストの多くは、銃に投資する必要を感じなくなってきているそうです。
そんなサバイバリストの一人、マイケル・ロバートソンさん(69)は「もともと銃にハマってたけど、現実的じゃないってことに気づいたよ。家を24時間体制で守りぬくとしたら、一体何人必要なんだ? 20人? 」と米ギズモードのインタビューに対してこう語っています。彼は手動洗濯機を約15万円で売りさばく販売者のひとりでした。
「いまのプレッパー市場は緊張感減ったよ」とロバートソンさんは続けました。「ただし、リベラル派以外はね。以前こういうのにまったく関心のなかったリベラル派の人たちが、今猛烈に備蓄し始めているんだ。」
以前はごく限られたミリタリー系マニアに人気があったサバイバルグッズが、トランプ就任後のアメリカではメインストリームになりつつあり、売り上げはうなぎ登りだそうです。というのも、トランプのおぼつかないリーダーシップにショックを受けているリベラル派が、サバイバルグッズのヤケ買いを始めているそうなんです。
その証拠に、Survival Frog社のCEO、バイロン・ウォーカーさんによれば、同社の売り上げは前年の11月に比べて99%、前年12月に比べて120%も上昇したそうです。
ウォーカーさんの売り上げに貢献しているのが「リベラルプレッパー」と呼ばれる新しい顧客層。トランプ就任後にわかに危機感を抱き、たとえ北の指導者がアメリカ本土まで届く核爆弾を開発しても動じないように、着々と準備を始めているようです。ソーシャルメディアやオンライン記事では数多くのリベラルプレッパーたちが銃の必要性を真剣に議論したり(「パチンコみたいな飛び道具で我が家を守れるか?」)、リベラル派からサバイバリストへの変貌を語り合ったりしているそうで、保守派がオバマ政権時代に感じていたパニックと同じものが今度はリベラル派に受け継がれたようです。
顧客が変われば、ビジネスも変わらなければなりません。ところが、プレッパー相手に商売している大半のビジネスは保守派の思想にかたよっていて、「オバマは詐欺師だ」や「ヒラリーを逮捕しろ! 」だの、リベラルプレッパーには受け入れがたいポップアップ広告が目立つウェブサイトも多いそうです。Survival Frogのウォーカーさんは「そうやって買ってくれる人の半分を失っているんだ。これから生き残れるプレッパービジネスは、保守派とリベラル派どちらにもかたよったらいけない」と語っています。
「PrepperCon」の創立者のスターリングスさんは、プレッパー市場の変化に肯定的でした。「セキュリティや銃に集中していたプレッパーの関心が最近変化してきている。私も銃は好きだけど、500ドルもらって備えるとしたら、やっぱり種子を買うね。」
そして、いつか本当に世界が終わってしまったら、保守系とリベラル系プレッパー同士がなかよくソーラーパネルについて秘訣を教え合ったり、種子を交換できる時が来るのでしょうか。
今からでも種を植え始めたほうがいいと思うんですけどね。
all images: Russel Daniels / Gizmodo US
source: PrepperCon, The Huffington Post, Wikipedia, Survival Frog, Good4Utah.com
Peter Rugg - Gizmodo US[原文]
(山田ちとら)