「退位」特例法成立 明治以降で初の退位実現へ

「退位」特例法成立 明治以降で初の退位実現へ
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天皇陛下の退位に向けた特例法は、参議院本会議で採決が行われ、退席した自由党を除く全会一致で可決・成立しました。特例法は近く公布される予定で、即位後は、生涯、天皇であり続ける仕組みになった明治以降で初めてとなる天皇の退位が実現し、退位後の称号は「上皇」となります。
天皇陛下の退位に向けた特例法案は、先週、衆議院を通過したのに続き、7日の参議院の特別委員会で質疑の後、採決が行われ、退席した自由党を除く全会一致で可決されました。これを受け、9日開かれた参議院本会議で採決が行われた結果、特例法は、委員会での採決と同様に退席した自由党を除く全会一致で可決され、成立しました。

特例法は、立法趣旨として、天皇陛下が、今後ご活動を続けることが困難となることを深く案じておられ、そのお気持ちを国民が理解し共感しているなどとして、天皇陛下の退位と、皇嗣、つまり皇太子さまの即位を実現すると明記しています。また天皇陛下が退位される日は、法律の公布から3年を超えない範囲内で政令によって定める日とし、退位後の称号を「上皇」とすることなどが盛り込まれています。

特例法は近く閣議などを経て公布される予定で、即位後は、生涯、天皇であり続ける仕組みとなった明治以降では初めてとなる天皇の退位が、遅くとも3年以内には実現することになりました。

政府は今後、退位後の天皇陛下を補佐するための宮内庁の組織やお住まいなどの検討と準備を進めるとともに、国民生活や政治日程への影響も考慮しながら、具体的な退位の期日や新たな元号などの検討を進める方針です。

また特例法を審議した衆参両院の委員会が、安定的な皇位継承を確保するための課題や女性宮家の創設などを、特例法の施行後、速やかに検討することなどを求める付帯決議を可決したのを受け、政府は、具体的な検討を行うことにしています。

宮内庁 儀式や活動など本格検討へ

天皇陛下の退位に向けた特例法の成立を受けて、宮内庁は、天皇陛下の退位の儀式や退位後の活動の在り方などについて本格的な検討を始めることにしています。

天皇の退位は、江戸時代後期の光格天皇以来、およそ200年ぶりのことで、宮内庁は、皇居・宮殿で天皇陛下の退位の儀式を行う方向で平安時代の儀式書「貞観儀式」などを参考に内容についての検討を始めることにしています。

一方、皇太子さまの即位に伴い、今の憲法のもとで初めて即位された天皇陛下の例を参考に「即位の礼」と「大嘗祭」が行われる見通しで、宮内庁は「即位礼正殿の儀」など5つの儀式からなる「即位の礼」を終えたあと、再来年11月に皇居・東御苑で「大嘗祭」を行う想定で政府とともに検討を進めることにしています。

また、特例法の成立によって、近代日本で初めて天皇と上皇が同時に存在することになり、新たな皇室の活動の在り方についても検討が本格化します。

このうち、退位後の天皇陛下の上皇としての活動について、宮内庁は、「象徴としての行為は基本的にすべて新天皇に譲られる」と説明しています。同時に、上皇の活動は、私的なものだけでなく公的色彩のあるものもあり得るとし、実際に活動していく中で形作られていくという見方を示しています。

具体的には、国内外への私的な旅行や、親交を深めてきた海外の賓客や国内外の文化人などとの懇談、それに、音楽会や展覧会への出席などが想定されていて、皇室の一員として新年の一般参賀などで国民の前に姿を見せられることなども検討されるものと見られます。

天皇陛下 きょうもふだんどおり公務

天皇陛下は、9日もふだんどおり公務を務められました。

皇居・宮殿で新しい外国の大使から信任状を受け取る儀式に臨んだあと、会計検査院の院長などを招いた昼食会に秋篠宮さまとともに出席されました。天皇陛下は、一人一人から自己紹介を受け、「日々のお務めご苦労さまです」などと言葉をかけたあと、隣の部屋に移ってテーブルにつかれました。

午後からは、皇后さまとともに、皇居などの清掃を行う「勤労奉仕団」との懇談に臨み、その後、8日、ブータンから帰国された秋篠宮ご夫妻の長女の眞子さまのあいさつを受けられたということです。

宮内庁によりますと、天皇陛下は、退位に向けた特例法の成立について、午前中、宮殿で、側近から報告を受けられたということです。