歩道に止めた自転車、風にあおられ停止中の車を傷つけた! 責任問題はどうなる?
歩道に止めておいた自転車が、風にあおられて停止中の車に倒れかかったーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、「もし傷がついてしまったらどうなるのか」と質問が寄せられた。
投稿者がATMで用事を済ませて戻ってきたところ、自転車が近くに停止していた車のドアに倒れかかっていたという。帰宅後「車に傷つけてしまっていたのではないか」と不安になり戻ったが、既に車はなかったそうだ。
仮に車が傷ついていた場合、何らかの法的責任を問われることになるのだろうか。山田訓敬弁護士に聞いた。
●「風にあおられ」でも、法的責任はある?
「まず、刑事責任については心配しなくても良いでしょう。車を傷つけてしまった場合には『器物損壊罪』に該当することがあります。しかし、器物損壊罪はわざと(故意に)車を傷つけた場合にのみ成立する犯罪です。
今回のように、歩道に止めていた自転車が風にあおられて転倒し、車を傷つけた場合には、器物損壊罪は成立しません」
では、民事上の責任についてはどうだろうか。
「民事責任については、車に損傷があれば、車の所有者等に対して修理代の支払義務を負う可能性はあります。民事事件の場合、損害を生じさせたことに過失(不注意)があれば、その損害について賠償する責任を負うからです。
ただし、賠償する損害額は、自動車を止めた方の過失も考慮して決めますので、必ずしも損害全額の支払義務を負うことにはなりません」
●自動車を傷つけることを予見できたか?
自転車を止めた側の過失は、どのような点を検討していくのか。
「自転車を止めた側の過失の有無は、『自転車が倒れることにより自動車を傷つけることが予見できたか』(実際のその方が予想したかどうかではなく、一般の人が普通に考えて予見できたかどうか)の点などを検討して決めます。
そして、止めていた歩道の状況としては、
・既に自動車が止まっていたか
・自動車が止まりそうな場所か
・自転車の駐輪の仕方
・駐輪の場所がどのような場所だったか
・当日の風の強さ
これらの事情等を総合的に検討し、自転車を止めた側に予見ができたとなれば、過失が認められることとなります。
自転車を止めた側に過失があった場合は、自動車が止まっていた状況(自動車側の過失)等を考慮して、自転車側と自動車側の過失の割合を決め、支払うべき修理代を決めていくことになるでしょう。