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【社説】

原発再稼働 そのたびに不安は募る

 高浜原発3号機の再稼働。全国五基目。関西電力二基目。そのたびに住民の不安は募る。動かすにも止めるにも、大きな不安がつきまとうのが原発だ。電力会社や政府には、重い責任がつきまとう。

 安心も安全もないままに、また一基、原発が動きだす。

 避難計画の不備、集中立地の危険、老朽化、核のごみ、最近ではテロ対策に至るまで、さまざまな課題が指摘されている。

 なのに、電力会社も原子力規制委員会も、そして政府も、まともに向き合う気配がない。

 電力会社の収益第一、安全は二の次のようにも映る再稼働が重なるたびに、住民の不安は募る。

 関電は、運転開始から四十年を超える高浜1、2号、美浜3号の三基(停止中)をはじめ、若狭湾周辺に集中する現有九基の原発を使い続ける姿勢を崩さない。

 一方で、管理のずさんさが、住民のいら立ちに拍車をかける。

 一月には、高浜2号機再稼働のための安全対策工事現場で、アームの長さが百十二メートルという大型クレーンが風で倒れ、建屋の一部が破損した。

 工事元請けの大手ゼネコンが、暴風警報の発令に気付かず、アームをたたむなどの対策を怠った。この期に及んで、初歩的なミスである。

 再稼働の是非に対してもの言えぬ、周辺自治体に募る不満は、怒りに近づいているという。

 高浜原発のおひざ元とも言える音海地区からさえ、老朽化した1、2号機の安全性に疑念の声が上がり始めた。

 立地地域の空気も明らかに変わり始めているという。

 なし崩しの再稼働は、もう許されない。有効な避難計画が立てられない以上、原発は減らしていくしかないのである。

 立地地域の側には別の不安もある。過疎地の経済、あるいは自治体そのものが、原発抜きで立ちゆくかどうかの不安である。

 東京電力柏崎刈羽原発を抱える新潟県柏崎市の桜井雅浩市長は一日、廃炉を地域産業に育てていけるよう、東電に廃炉計画の早期明示を促した。

 消費者には、原発なしで電気が足りるかどうかの不安もある。

 スイス政府は、二〇五〇年をめどとした再生可能エネルギーへの転換戦略を明示して、国民投票を脱原発へと導いた。

 立地地域の新産業育成支援と、再生可能エネへの政策転換は、むろん政府の責任だ。

 

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