出張先から自宅へ戻るために新幹線に乗っていたら、娘から電話がかかってきました。
「お父さんの本棚にあった本を読んでたら、『金魚がさなかになった』って書いてあったけど、金魚はさかなじゃないの?」
おそらく娘は、古い児童詩集を読んだんだと思います。
今回は、さかなについて書いてみます。
魚の意味
手元にある辞書で、魚という漢字を調べてみると、
うお【魚】
水中をすみかとし、主としてえらで呼吸し、ひれで運動する脊椎動物。古くは「いお」とも言った。
ぎょ【魚】
水中動物で、うろこやひれがあるもの。
さかな【魚】
食べるものとしての「うお」。魚類。
といった解説が書かれています。
当用漢字音訓表
1948年(昭和23年)に、当時の内閣が告示した『当用漢字音訓表』というものがあります。
これを調べてみると、「魚」という字の読み方は、音読みで「ギョ」。訓読みで「うお」としか書かれていません。
1973年(昭和48年)に告示された『当用漢字改定音訓表』には、「魚」という字の読み方に、音読みは「ギョ」。訓読みは「うお、さかな」と書かれています。
時代が進むにつれ、漢字の読み方が変化してきたため、改定音訓表が告示されまました。
少なくとも、『当用漢字音訓表』が告示された昭和23年頃は、「魚」を「さかな」と読んでいなかったようです。
「うお」と「さかな」の違い
昭和40年代前半頃までは、「うお」と「さかな」は異なるものでした。
当時は、生きている状態の魚類が「うお」で、うおが死んだら「さかな」になると区別されていました。
だから「さかな」と言えば、「食べる状態のうお」の事を指していました。
この時代の人からすれば、「金魚はさかなではない」という事になります。
全国共通語(標準語)と方言
「うお」と「さかな」の使い分けについて、更に調べてみたら方言も関係しているようでした。
現在の全国共通語(標準語)では、「うお」と「さかな」の違いはあまりない気がします。
調べてみたら、関西地方の一部の地域では、昭和40年代以降も「うお」と「さかな」を明確に区別している地域があったようです。
今回娘が見つけた児童詩集の詩の作者が、関西地方出身だったとしたら
「金魚がさかなになった」
という詩は、
「金魚が死んだ」
ということを、直接的ではなく詩的に表現したものになると思います。
そんな詩だったからこそ、児童詩集に掲載されたのかもしれません。
娘は寝てしまったので、どの本に載っていたのか、今から探してみようと思います。
参考文献
当用漢字音訓表・送り仮名の付け方―内閣告示・内閣訓令 (1973年)