【ロンドン=原克彦】英下院議員選挙(総選挙、定数650)の投票は8日午後10時(日本時間9日午前6時)に締め切られ、開票作業が始まった。BBCなど現地メディアの出口調査によると、メイ首相の与党、保守党は伸び悩みそうだ。第1党は維持するものの、改選前の330議席を下回り、過半数を割り込む可能性がある。
英メディアは保守党が最終的に320議席程度にとどまると予想している。一方、労働党は改選前の229から270程度まで伸びるとみている。仮に単独で過半数を得る政党が出なければ、新政権の樹立は各党による連立協議が焦点になる。
英国は2016年6月の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決定。選挙は移民の流入を厳しく規制する代わりに、EUの単一市場から撤退するメイ首相の強硬離脱路線の是非が最大の焦点になった。離脱後のEUとの距離感については意見が割れ、英国民の判断が注目されていた。
メイ首相はEU離脱交渉に向けた議会運営をより円滑に進める狙いで4月に総選挙の実施を表明。その時点では保守党の圧勝が予想されていた。だが同党が5月に発表した政権公約(マニフェスト)で高齢者に社会保障の負担増を求めたことなどから支持率が下がり、リードが縮小した。
選挙の終盤戦には中部マンチェスターでの爆破事件などテロが相次ぎ、テロ対策も争点に浮上。当局のテロ防止策への批判が強まり、保守党には逆風になったもようだ。
労働党はテロ続発を受け保守党が緊縮政策で治安当局の予算を削減してきたことを批判した。コービン党首が提唱する富裕層への課税強化や鉄道の再国有化など、左派色が強い政策に賛同する層からも一定の票を獲得した。
仮に保守党の過半数割れが確実になれば、その後の連立協議も波乱含みになるのは必至。保守党はEU離脱への姿勢がスコットランド民族党(SNP)や自由民主党と相いれない。労働党はSNP、自民党とも連携の余地があるが、政権樹立にこぎ着けても安定政権となるかは不透明だ。
英国は今年3月に正式にEUに離脱を通知。離脱条件や新たな貿易協定の協議を進めようとしているが、EUとの対立点が多い。政権発足が難航すれば、離脱策の方針決定やテロ対策の強化が遅れる懸念がある。
英国では国王(エリザベス女王)が首相任命権を持ち、議会で首相指名選挙は行わない。慣例では選挙で過半数の議席を獲得した党の指導者がバッキンガム宮殿に招かれ、任命される。どの党も過半数に届かない場合は現職首相に政権づくりの主導権がある。
過去には1974年2月の総選挙で過半数に達する政党が出ず、第1党の労働党が少数与党になった。2010年には第1党の保守党が自由民主党と連立を組み政権を樹立した。