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6000年前 富大、遺伝子分析で新説 温暖化の緩和後に ライチョウ再増加

 富山県の立山連峰に生息する国の特別天然記念物「ニホンライチョウ」が、約九千年前に始まった地球温暖化で激減した後、温暖化が緩和し始めた約六千年前から再び増加し始めたとの推定結果を、富山大の研究グループがふんによる遺伝子分析で明らかにした。温暖化以降、個体数は減少し続けたという従来の見解を覆す内容。成果は五月三十日発行の研究誌「保全生態学研究」で発表した。

 富山大理学部の山崎裕治准教授(46)=保全遺伝学=らは二〇一三〜一四年、立山連峰に生息するニホンライチョウ百二羽のふんを採取し、うち五十羽の遺伝子分析に成功。三つの遺伝子型を見つけ、立山連峰以外の生息地と同程度の多様性を保持していることを突き止めた。

 さらに、遺伝子の配列の比較や過去の気候変化などを参考にして分析を進めた結果、約九千〜六千年前の温暖化で個体数が減ったが、生息環境が改善し始めた約六千年前から回復したと結論づけた。山崎准教授は「遺伝子データを詳しく分析することで血縁関係も分かり、(人工繁殖で)個体の多様性を保ちながら増やすことが可能になる。他の生息地と比較すれば、生き方の違いも調べられる」と話している。

 ニホンライチョウは特別天然記念物のため体を傷つけることができず、遺伝子調査はこれまでほとんど行われていなかった。山崎准教授は「傷つけずに調査する方法を確立できたのも一つの成果」と強調した。

 ニホンライチョウは、富山や長野県などの山岳地帯に千七百〜千八百羽が生息。立山連峰には氷河期だった約一万年前までにすみ始めたとされ、現在は約三百羽が生息している。 (山中正義)

 

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