作業員5人被ばく「肺から基準値超の2万2000ベクレル」グローブボックス使わず
日本原子力研究開発機構は、茨城県大洗町の大洗研究開発センターで、使用済み核燃料物質の点検作業中の作業員5人が被ばくした事故について、1人の肺から基準値を大幅に上回る最大約2万2000ベクレルの放射性物質が計測されたと明らかにした。原子力規制委員会の田中俊一委員長は7日、「これまでも何度も指摘してきたが、原子力機構の安全意識は直らない」と批判した。
この事故は6日午前11時15分ごろ、大洗研究開発センター燃料研究棟の108号室で、核燃料物質の貯蔵容器を開封して点検作業を行なっていたところ、梱包していたビニールバッグが破裂して、使用済みのウランやプルトニウムの粉末が飛散し、作業員5人の手足に付着した。
当時5人は顔の下半分を覆う半面マスクを着用していたが、肺に吸い込まれた放射性物質を体外から測定したところ、年間被ばく線量の限度を超える2万2000ベクレルの汚染が確認された。
放射性物質が体内にとどまって内部被ばくを続ける預託線量を推計すると年間で1.2シーベルト、50年間では12シーベルトに達すると見込まれており、緊急時の作業員の被ばく線量の上限(年間50ミリシーベルト)を大幅に上回ることになる。原子力規制委員会の田中委員長は「内部被ばくとしては聞いたことがないくらい大きい数値だ」と述べた。
同機構によると、肺から2万2000ベクレルの放射性物質が計測された作業員は50代で、「将来的に健康への影響が出る可能性は否定できない」という。5人は現在、被ばく医療施設がある千葉県の量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所で、放射性物質を体外に排出するためのキレート剤の投与を受けている。
使用済み核燃料を取り扱う際には、放射性物質を閉じ込めるためにグローブが装着されたボックスで作業するよう定められているが、事故発生時には低レベル放射性物質を取り扱うフード型の施設で行われていたという。
田中委員長は会見で、「プルトニウムに慣れすぎているから、このような事故が起こった。放射性物質の取り扱いは常に注意深くあるべきだ」と安全意識が欠如した機構の体質を批判した。原子力機構は、ナトリウム漏れ事故や安全管理上のトラブルが相次いで、廃炉が決まった高速増殖炉「もんじゅ」の運営主体でもある。