作業員被ばく事故 「おなかに風圧感じた」

作業員被ばく事故 「おなかに風圧感じた」
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茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構の施設で作業員が被ばくした事故で、現場にいた職員が原子力機構の聞き取りに対し、放射性物質が入った袋が破裂した際、「おなかに風圧を感じた」と話していることがわかりました。原子力機構は、放射性物質の粉末が部屋の広い範囲に飛び散ったおそれがあると見て、今後、部屋の除染を進めることにしています。
この事故は6日、茨城県にある日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターの施設で、点検をしようとした核燃料の貯蔵容器の内部の袋が破裂し、プルトニウムなどを含む放射性物質の粉末が飛び散ったもので、現場にいた5人のうち、50代の職員1人の肺から2万2000ベクレルの放射性物質が計測されました。

原子力規制庁は8日、原子力機構の担当者から当時の状況などを聞き取りました。
この中で原子力機構は、この50代の職員がフードと呼ばれる放射性物質などを扱う設備に手を入れて、中に置かれた核燃料の貯蔵容器のふたを開けようとした際に、袋が破裂し、そのときの状況について職員は「おなかに風圧を感じた」と話していると説明したということです。

この設備は当時、外に放射性物質が漏れないよう内部の気圧を下げていたということで、原子力機構は、破裂に伴う風圧が強く、放射性物質の粉末が部屋の広い範囲に飛び散ったおそれがあると見て、今後、立ち入りを制限しているこの部屋の除染を進めると説明したということです。

これに対し規制庁は、汚染状況の記録を取りながら適切な装備で除染するよう指示しました。
原子力機構は引き続き、袋が破裂した原因や当時の作業状況を調べることにしています。

なぜ袋が破れたのか?

今回の被ばく事故では、核燃料物質のプルトニウムやウランの粉末が入った容器を包んでいた袋が破裂したことがわかっています。
放射性物質を外に漏れ出さないための袋がなぜ破れたのか。事故が起きた大洗研究開発センターに過去に所属し、核燃料の性質に詳しい、東京都市大学の佐藤勇教授は、2つの可能性を指摘しています。

1つは、プルトニウムが自然に違う物質に変わる際などに発生する「ヘリウム」です。長期間、容器に保管されている間に発生したヘリウムガスが蓄積され、袋の中の圧力が高まって破裂した可能性です。

もう1つが、プルトニウムなどから出る放射線によって袋や容器の成分が分解され、水素ガスなどが発生した可能性です。同じようなケースが平成22年7月に起きていて、このときは、茨城県東海村の研究施設で核燃料を入れていたプラスチック製の容器が放射線によって分解され、水素が発生し、火災になっています。

原子力機構は袋が破裂したことについて「想定していなかった」と話していますが、今回のような保管容器はほかに20個あり、今後同じような点検作業を行う必要があることから、佐藤教授は「核物質の量からどのくらいのガスが出るかなどを調べて、原因を究明する必要がある」と話しています。