重大な病気が隠れていることもある大人の夜尿症

更新日:2016/12/09 公開日:2016/02/11

夜尿症の基礎知識

大人の夜尿症は意外にも珍しいものではありません。しかし、子供の夜尿症と違い、裏に別の重大な病気が隠れている場合があるので注意が必要です。大人の夜尿症の原因と、夜尿が症状として現われる可能性のある病気について詳しくご説明します。

大人の夜尿症に隠れている可能性のある病気についてご説明します。

大人にも見られる夜尿症

夜中に布団の中で排尿してしまう夜尿症。夜尿症は、多くの場合年齢とともに治まっていきますが、大人になっても夜尿症が続いているケースもあります。成人の0.5%くらいが夜尿症であるといわれ、女性に多く見られます。

大人の夜尿症の原因

大人の夜尿症の原因としては、抗利尿ホルモンの不足がもっとも多いとされています。夜間抗利尿ホルモンが十分に分泌されずに尿量が多くなってしまうことで夜尿を生じますが、この場合は薬で抗利尿ホルモンを補うことでコントロールできることが多いです。また、睡眠ホルモンであるメラトニン(日本では未認可)を服用すると、間接的に抗利尿ホルモンを増やし、夜間の排尿回数を減らすと言う報告もあります。

一方、大人になって突然始まる夜尿症の場合は、心因性であることが考えられます。排尿のコントロールは自律神経によって行われますが、自律神経は感情と深い関わりがあるので、強いストレスは夜尿症を引き起こしてしまうことがあるのです。

病気によって引き起こされている可能性も

上記であげた原因のほかにも、深刻な病気が背後に隠れていて、その症状のひとつとして夜尿が現われているケースもあります。

夜尿の原因となりうる病気には、以下のようなものがあります。

睡眠障害

・睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸がしばしば止まる病気です。夜中の尿量を調節する抗利尿ホルモンに影響が出て、夜間の尿の量が増えることがあります。

十分に寝たはずなのに日中眠い、いびきがうるさいと言われる、などあれば家族に睡眠時の様子を観察してもらってください。

・睡眠時遊行症(夢遊病)

睡眠中に脳の一部が覚醒し、意識のないまま行動してしまう病気で、夜尿の症状もよく見られます。こちらも、就寝中に無意識な行動をとっていることがないかなど、家族に確認してもらいましょう。

神経の病気

排尿は神経によって制御されるので、神経の病気の症状として夜尿が見られることもあります。

・脳血管障害(脳卒中)、脳腫瘍、多発性硬化症

高血圧の合併症としてよく知られる脳血管障害、脳にできる腫瘍、免疫異常によって神経が障害される多発性硬化症などによって、神経に異常が起こり排尿のコントロールがうまくいかずに夜尿症を起こすことがあります。ただし、この場合は夜間にのみ起こるわけではありません。排尿のトラブルによってこういった脳の病気が判明することもあります。

尿量が増える病気

・糖尿病

糖尿病になると異常な量の尿がつくられるので、夜尿の可能性も高くなります。やたらのどが渇く、体がだるい、手足がしびれるなど症状が感じられたら内科、できれば糖尿病に強い病院を探して受診しましょう。

・尿崩症

急に尿量が多くなる病気で、中枢性と腎性がありますが原因ははっきりしていません。抗利尿ホルモンの分泌や作用が障害されて、日中、夜間に限らず尿量が増えてしまい、夜尿症になる可能性があります。激しいのどの渇きと尿量の増加を感じたら、内分泌科を受診してみるとよいでしょう。

膀胱や前立腺の病気

膀胱の病気として、過活動膀胱、膀胱炎、膀胱がんなど、また男性の前立腺の病気として、前立腺肥大症、前立腺がんなどが頻尿や尿漏れの原因となっていることがあります。

このように、大人の夜尿は原因がさまざまあり、夜尿がきっかけとなって重大な病気が見つかる可能性もあります。命に関わる病気を見逃さないためにも、一度専門医を受診することをおすすめします。

この病気・症状の初診に向いている科 小児科