ノルウェン・ルロワに引き続き、フランスのアーテイストをご紹介します。
フランスの歌手の中では最初に知ることになったミレーヌ・ファルメールです。
透明感が印象深いサウンドや、深いテーマの込められた歌詞だけでなく、映画のようなMV、何歳になっても変わらず美しい外見など、大御所要素をいくつも従えた女性です。
ミレーヌ・ファルメールのプロフィール
ミレーヌ・ファルメールはカナダ・モントリオール生まれで、現在55歳です。
パリの演劇学校に通っている時に、後に彼女の歌の作曲やMVを数多く手がけることになるローラン・ブトナと出会い、活動を開始します。
1986年にファーストアルバムを発表し、この時の作曲と映像制作はブトナが担当します。
ブトナの映像の特徴は後述するように映画を強く意識した作風です。
ロサンゼルスへ拠点を移したり、ポップシンガーAlizéeをプロデュースしたりしながら、現在までヒット曲を生み出し続けています。
こちら↑は初めて聴いた彼女の曲で、挑発的なイントロのみならずセクシーな映像が印象に残りました。
単に視覚的印象のかっこいい映像を繋ぎ合わせるのではなく、ドラマチックなストーリーが感じられるところが新鮮でした。
テーマを持った歌詞
単に神秘的だったり意味深そうな言葉を並べるだけでなく、深いテーマを持った歌詞が書かれているところも、ミレーヌ・ファルメールの曲の特徴です。
こちら↓の曲は性の同一性の揺らぎに焦点を当てた歌詞が綴られていますが、こうした歌詞が1980年代に書かれていたと言うのが驚きです。
Apple Musicで検索すると、この曲は今でもしばしば上位に出てきます。
私はフランス語力がまだまだ足りないので、歌詞の英訳を探して、しかるのちに理解する、というステップを踏まねばならないのが歯がゆいところです。
また、こちらの↓曲はWikipediaによると世界の崩壊感を歌った作品とのことですが、映像は第二次大戦中のユダヤ人ゲットーを意識しているものと思われます。
映画のようなMV
上記のSans ContrefaconやDesenchanteeもそうですが、ローラン・ブトナの手による映画を意識した映像が作られています。
映像は曲そのものよりも長く製作されており、前者は9分弱、後者は10分程度の長さがあります。
長いMVで世界的に有名なのはマイケル・ジャクソンの『スリラー』ですが、ヨーロッパの代表選手にはミレーヌ・ファルメールとローラン・ブトナがいたんですねえ。
初期の代表作Tristanaに至っては11分半あります。
長いと言うだけでなく、隙のない世界観の作りこみが窺える作品です。
それぞれ曲のテーマに沿ったうえで製作されているのも見どころの一つです。
歌手としてのキャリアの途中で東洋的要素に影響を受けたのか、映像にアニメーションを取り入れたり、『Point de Suture』のアルバムジャケットをゴスロリ人形作家の三浦悦子が手掛けたり、たまに日本や中国のモチーフが登場するのもいち東洋人として気になってしまいます。
おわりに
ミステリアスな曲の雰囲気や、内面の精神世界を辿るような歌詞が、映像美によってパワーアップされているところに、ミレーヌ・ファルメールの特別感があります。
映像まで含めて、存在が作品になっているアーティストと言っても良いと思います。
近年はブトナ以外の人物がプロデュースを担当したり、よりポップ色の強い曲を出したりしているようですが、より新しいミレーヌ・ファルメールが見られると思うとそれも楽しみです。
自分自身が曲を発表するだけでなく、発掘した若手をプロデュースもしていますので、いずれそのアーティストもご紹介したいと思います。