近年、児童虐待やそれによって亡くなった子どものニュースを目にする機会が増えました。一方で、虐待がどのように発見されるのか、その後子どもたちはどうなるのかについてはご存知ない方が多いと思います。
こういった児童虐待の発見や対応は主に児童相談所という各自治体にある機関が税金によって運営していますが、果たして私たちがおさめた税金だけでどこまで十分に対応できているのでしょうか。
児童相談所が虐待について対応した件数は1999年から比較すると、およそ10倍の10万件を超えているという速報値もあります(厚生労働省「児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値)」より)。
さらに、児童虐待件数自体も増加傾向にあるものの、これはあくまで"見えている虐待"を数値化しているものです。
虐待は家庭の中で起きており、周りからは見えづらく、虐待の一種である「育児放棄」「心理的虐待」「性的虐待」などは「身体的虐待」に比べてわかりやすい傷もつきません。つまり、10万件自体がそもそも氷山の一角である可能性があります。
次に、虐待の発見・対応数が増えた原因ですが、その一つは潜在的な虐待の数が明るみに出たことだと言われており、現在でもその数は多いと考えられています。
虐待が「しつけ」の延長にある各家庭の問題として捉えられていた時代から、虐待防止法に基づいて「あってはならないもの」として法律化されたことで、家庭の問題ではなく「社会の問題」として扱われるようになりました。
現在、虐待は発見したら通告する「義務」が全国民にあります。特に、学校の先生や、病院のお医者さんなど、子どもたちの体や生活の異変を察知しやすい立場の人たちへの通告義務はより厳しいものとなりました。
また、虐待の増加のもう一つの要因として、子育てが「親任せ」になっている点が挙げられており、これは、昭和の頃によく見られた親類の連携や地域の連帯の崩壊が進んでいると考えられます。
特に、虐待で保護される子どもの親を見ると、ひとり親であったり、親自身が虐待を受けてきて自身の親に頼れなかったりと、社会から孤立したケースが多い印象があります。核家族が進み、育児における親の負担が重くなっていく中で、虐待に発展しやすい時代になったともいえます。
このような虐待を避けるためには、ひとり親の家庭はもちろん、一般家庭についても常に周囲からサポートを得られる環境を整えることが重要です。しかし、現状は非常に深刻な状態にあると考えられています。