tofubeatsが考えるポップ・ミュージックとは?新作アルバム『FANTASY CLUB』と合わせて読み解く10曲


mysoundイチ押しのアーティストにテーマに合わせた楽曲をピックアップしてもらい、その曲にまつわるエピソードから本質を掘り下げていくプレイリスト企画。今回は注目の若手トラックメイカー/プロデューサー、tofubeatsさんの登場です。神戸在住の彼は、自身の楽曲に加えてメジャーから気鋭の若手まで多岐にわたるアーティストのリミックス/楽曲提供などでも人気を拡大。KANDYTOWNのYOUNG JUJU、sugar me、中村佳穂さんを迎えた今回の最新作『FANTASY CLUB』では華やかな前作から一転、心のひだをそっとなぞるような、メロウでタイムレスなポップ・チューンを広げています。今回は「FANTASY CLUBな楽曲のプレイリスト」から、最新アルバムの魅力を語ってもらいました。

“人とは共有できないこの人だけのゴールがある”


―今回は「FANTASY CLUBな楽曲のプレイリスト」というテーマで選曲をしてもらっただけに、どの曲も新作に影響を与えたものになっていそうですね。1曲目は『FANTASY CLUB』の収録曲「YUUKI」に参加したsugar meさんの「夜明けのうた」です。

sugar meさんはファーストをCD店の試聴機で見つけて以来、ずっと好きで聴いていて。この曲を聴いて日本語の曲もやるんだと思って今回オファーをしました。岸洋子のカヴァーというチョイスもグッとくるし、オシャレなEPの最後がこの曲というのもやられたなぁと思いました。次の具島直子さんの「CANDY」は、昔から大好きな曲。18~19歳の頃、当時からokadadaさんたちがやっていたイベント<ナイトメロウ>でかかっていたんですよ。今はMVも観られないし、(ライブをほぼ行なっていなかったため)ライブ映像もないですけど、この人の曲って、それでもいいんですよね。僕も『FANTASY CLUB』ではライブでやれる曲を作らなきゃ。世間との接点を作らなきゃという邪念を捨てようと思ったので、そうじゃなくてもいいものは残るという意味で、改めて聴き直しました。具島さんの曲はどれも優しくて、どの曲もよくて、他に替えがきかない。それはきっと、(音楽性を越えたところで)人とは共有できないこの人だけのゴールがあるからですよね。それは自分が目指すアーティスト像でもあるんですよ。
    • Candy/具島直子

      シングル

      Candy
      具島直子

  • ―今回の『FANTASY CLUB』のようにメロウな作品も、それとは対照的な前作『POSITIVE』のような作品も、その両方を楽しんでくれたら嬉しい、ということですね。

    そうですね。自分の中では、2つの作品でやりたいことはそう変わらないんで。次のソランジュは、この歌詞が好きです。次のブレット&バターは「トゥナイト愛して」が天気予報のバックか何かで流れていて、それがほしくてアルバムを買ったら、「あの頃のまま」の方を好きになってしまって(笑)、「BABY」でサンプリングしました。今回は早い段階である程度曲ができて、ライブで詰めていったんで、「BABY」も一年半ぐらいライブでやっていましたね。

  • ―続くThe B.B. & Q Bandは「Genie」です。tofubeatsさんはもともと「Dreamer」が好きでしたよね。

    「Dreamer」は、自分が一番好きなディスコと言ってもいい曲で、確か、京都のVINYL7 RECORDSで教えてもらったんですよ。当時のディスコやブギーの中で音に断トツで厚みがあるし、イタロディスコも混ざっていてちょっと異質で。これも替えがきかないサウンドだと思います。今回は「Genie」にしましたけど、この曲はサンプリングネタとして有名で、歌メロにも不思議な魅力がありますよね。一方で、チェリボさん(CHERRYBOY FUNCTION)の「Word In The Petals」は16年の新譜のタイトル曲。自分のテクノ観に影響を与えた人です。07年の「The Endless Lovers」も最高ですけど、今回のアルバムは“年の功”という感じがして、長く続けることっていいなと思わせてくれる。それから、『FANTASY CLUB』の「THIS CITY」はキーがずっと上がっていきますけど、これはチェリボさんがライブでやっていることですよね。神戸市の『U30 CITY KOBE』のタイアップ曲として若者を高めていってほしいと言われたので、どんどん高める・・・?と考えて、実際にキーを上げました(笑)。
    • Genie/The B.B. & Q Band

      シングル

      Genie
      The B.B. & Q Band

“自分で音を作るというのは、「愛着を持つ」ということです”


―ケンドリック・ラマーの「LOYALTY. Ft. Rihanna」はどうですか?

この曲はブルーノ・マーズの「24K Magic」をサンプリングしていて、それがすべてです(笑)。『FANTASY CLUB』を作った後に出たアルバムの曲ですけど、テーマにも近さを感じました。「LOYALTY」の最後にリアーナが“It's so hard to be humble.”と言って、そこから(「PRIDE.」を経て)「HUMBLE.」に繋がるところも、今回自分が意識したことと似てるんですよ。『FANTASY CLUB』も「LONELY NIGHTS」と「CALLIN」のシンセのメロディが繋がっていたり、歌詞が繋がっていたり、曲名がすべてアルファベットの大文字で統一されていたりして。だから、先にこの作品の方が出たときは結構悔しかったです(笑)。でもいい作品だし、すごく聴いていますね。

  • ―どんどん行きましょう。次は佐藤博さんの『awakening』収録曲「YOU'RE MY BABY」。

    アルバムは超名盤ですけど、その中でも「YOU'RE MY BABY」はドラムが打ち込みなのに、マジで打ち込みなの?と思うぐらいすごい音だと思うんですよ。“ただ叩けばいい”わけではない大事さが込められていて、制御された音なのに、生ドラムに限りなく近い。そうやって自分で音を作るというのは、“愛着を持つ”ということですよね。“♪You’re My Baby~”と歌っている曲なのに打ち込みのドラムで精緻なことをやっているのがすごくロマンチックで、手法と曲の雰囲気が一致してるのが素敵だなぁと思います。

  • ―“愛着”というと、今回の『FANTASY CLUB』にも、ひとりの人間がほぼすべてを手作りで大切に作っていくような感覚がありますね。パズルを誰かと一緒にやるよりも、ひとりでほとんどのピースを埋めた方が、愛着の度合いが深まるような感じというか。

    ああ、確かにそうかもしれないです。たとえばゲームだって、裏技を知れば早く終わるのは分かっていても、やっぱり自分でそれを見つけて、クリアしたいじゃないですか。僕は昔から全部自分でやることに慣れ過ぎているんで、人に任せると、愛着が減少する部分があるんです。これって大問題ですけどね・・・(笑)。佐藤さんの音楽は、それでもどこまでだって行けるんだなと教えてくれるような気がします。

    ―最後は中澤真由さんの「他の誰でもないあなたは」。これもずっと好きな曲シリーズです。

    この曲って、きっと他の人にとってはとんでもない曲ではないと思うんですよ。でも、僕にとってはJ-POP有史に残る、一番好きな曲で、なぜかは分からないけどずっと聴いてしまう。この「何がすごいのか分からないけどすごい」のって、一番難しいことだと思っていて。今回は改めて自分の理想はこれだな。こういうものを作ろうと意識しました。

  • ―最初の具島さんの話じゃないですが、今回の新作は“自分だけのゴール”がどんなものかを、改めて見つめた作品なのかもしれないですね。

    「他の誰でもないあなたは」が入っている『STEP INTO MY HEART』には山下達郎さんの「FUNKY FLUSHIN'」のカヴァーも入っていて、申し訳ナイタズ(tofubeats申し訳EGG)をやっていたときによくかかっていたんですよ。それでアルバムを聴いたら、他の曲は結構退廃的でびっくりして。でもそこが好きで、すぐに全部揃えたのを覚えています。僕は「長く聴けるものがいい」と思っていて、そういう意味でも、本当にいい曲だと思います。世の中的に認識は低いかもしれないけど、自分はこれが本当に好きだし、今もずっといいと思える。だから今回の『FANTASY CLUB』では、一度“自分が好きなものに、正直に向き合ってみよう”と思ったんです。


ORIGINAL PLAYLIST

FANTASY CLUBな楽曲のプレイリスト

NEW RELEASE

tofubeats『FANTASY CLUB』
2017.05.24(水)Release

DISCOGRAPHY

PROFILE

1990年生まれ、神戸在住のトラックメイカー / DJ。学生時代からさまざまなアーティストのプロデュースや楽曲提供、楽曲のリミックスを行う。2013年4月に「水星 feat.オノマトペ大臣」を収録した自主制作アルバム『lost decade』を発売。同年11月には森高千里らをゲストボーカルに迎えたミニアルバム『Don't Stop The Music』でワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEからメジャーデビューを果たした。2014年10月にメジャー1stアルバム『First Album』を、2015年9月にはメジャー2ndアルバム『POSITIVE』をリリース。2016年1月にはリミックスアルバム『POSITIVE REMIXES』を発表した。そして2017年5月24日にメジャー3rd アルバム『FANTASY CLUB』をリリースしている。

tofubeats アーティストページ

LIVE

■REPUBLIC
日程:2017年6月24日(土)
会場:渋谷WOMB
時間:OPEN/START 14:00
料金:オールスタンディング:¥5,300
昼夜セットチケット:¥8,000

■SCLL LIVE “with the silence”
日程:2017年7月8日(土)
会場:渋谷WWW
時間:OPEN 17:30/START 18:30
料金:ADV ¥4,000/DOOR ¥4,500
※ SOLD OUT

■WOAL 10th ANNIVERSARY
日程:2017年7月9日(日)
会場:高崎WOAL
時間:OPEN/START 18:00
料金:ADV ¥3,500/DOOR ¥4,000

■新CHOICE 昼の部
日程:2017年7月17日(月)
会場:大阪 CONPASS
時間:OPEN/START 14:00
料金:ADV ¥2,800/DOOR ¥3,500

■加賀温泉郷フェス
日程:2017年7月22日(土)
会場:山代温泉 瑠璃光
時間:START 14:00
料金:ADV ¥4,000/DOOR ¥5,000

■Anthem & MALTINE SEED BOX & GOODWEATHER×異レギュラー
日程:2017年8月10日(木)
会場:新木場ageHa
時間:START 23:00
料金:ADV ¥3,500/DOOR ¥4,000

詳細はオフィシャルサイトで


Text&Interview:杉山仁
Photo:なかむらしんたろう

mysound編集部のその他の記事

もっと見る >

スマートフォンサイトで
購入いただけます。
詳しくはコチラ