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 事故はなぜ起きたのか、内部被曝(ひばく)を防ぐことはできなかったのか、徹底した調査が必要だ。

 茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで、燃料の保管容器から放射性物質が飛散し、複数の作業員が被曝した。

 50代の作業員は、肺から2万2千ベクレルのプルトニウムが検出された。1年間に1・2シーベルト、50年で12シーベルトの内部被曝をするのに相当する。原発作業員の被曝限度を上回るのは確実とみられ、内部被曝としては国内で過去最悪のケースだ。作業員はいずれも体調不良を訴えてはいないというが、健康影響は長期的にフォローしていく必要がある。

 事故は、燃料のウランやプルトニウムの保管状況を調べる作業中に起きた。

 点検のため容器のフタを開けたところ、燃料を密封していたビニール袋が破裂し、放射性物質が飛散した。なぜ破裂したのか、作業手順に問題はなかったのか等、解明すべき点は多い。

 問題は「ビニールが破れることは想定していなかった」と機構が説明していることだ。

 プルトニウムは体内に取り込まれると長期間とどまり、放射線を出し続け、がんなどの原因となる恐れがある。施設外に飛散すればリスクは周辺住民にも及ぶ。どんな作業でも扱いには最大限の注意が必要で、機構の認識が甘かったのでは、との疑念を抱かざるを得ない。

 機構によると、事故のあった燃料研究棟には密閉状態で放射性物質を取り扱う設備もある。だが、今回はこの設備を使わず、作業員は防護服を着ていたが、顔全体を覆う全面マスクではなく、口や鼻を覆う半面マスクを着用していたという。

 通常、被曝のリスクのある現場では全面マスクをつける。今回はそもそも被曝を想定しておらず、半面マスクも念のためつけたのだというが、作業現場の安全管理のあり方としても十分だったのか、疑わしい。徹底して検証してほしい。

 原子力機構は15年、高速増殖原型炉「もんじゅ」をめぐり、原子力規制委員会から「安全に運転する資質がない」と指摘された。使用済み燃料再処理工場「東海再処理施設」でも、放射性物質のずさんな管理が明らかになっている。

 今回事故のあった燃料研究棟は廃止の方針が出され、閉鎖に向け放射性物質の種類や状態の確認が進められている。研究開発の役割を終え、気の緩みはなかったのか。放射性物質を扱う際のリスク認識について、機構は厳しく再点検すべきだ。

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