企業のマーケティング関連の部署で働く皆さん。日々の業務で悩んでいることはありませんか?
一口にマーケティングといっても、業務内容は多岐に渡るもの。中には、1人で広域な業務を担当している方も多いのではないでしょうか。
現在、多くの企業のマーケティング関連の部署は、慢性的なマンパワー不足。パンク気味な状態で働いていると、「上手くいっていないけど、何が問題なのか振り返る暇がない」という悪循環に陥ってしまいます。
今回は、企業のマーケティング関連の部署に所属する113人を対象にアンケートを実施し、日々の業務の悩みや課題を聞いてみました。
他のマーケティング関連部署で働く人がどのようなことに困っているのかを客観的に知ることで、自身の仕事を振り返るきっかけにしてみてください。
共通の悩み
まずは、どのような業務をするにあたっても起こりうる「共通の悩み」に関するアンケート結果をご紹介します。
01.社内コミュニケーションについての悩み「部署内外でトラブル多し」
社内コミュニケーションの悩みについて見ていきましょう。社内コミュニケーションは、業務を円滑にしていくための基本中の基本。しかし、意外とおざなりにされていることがアンケート結果からも分かります。
悩みの傾向
- 部署内の意思疎通
- 他部署との連携
01. 部署内の意思疎通
正解が見えにくく定量的な目標設定がしにくいマーケティング関連の部署では起こりやすいもの。特に、「なぜするのか」という “why” の部分をきちんと伝えないと、いくら説明しても納得してもらえないので、意識的にコミュニケーションの中に取り入れる必要があります。
02. 他部署との連携
これもマーケティング部署にありがちな問題。特に、犬猿の仲とされている営業部とのコミュニケーションをいかにとっていくかは、皆さんの腕の見せ所でしょう。トラブルの原因としては、「そもそもの目的が一致していない」ということがよくあります。意見が合わないときには、必ず目的が一致しているかを確認するようにしましょう。
今後の課題
- 「なぜするのか」という “why” の部分を意識しながら伝える。
- 他部署と議論するときには、「目的が一致しているか」を特に気をつけるようにする。
02.社外コミュニケーションについての悩み「外注先の選定と、進行管理が課題」
続いて紹介するのは、「社外コミュニケーションについての悩み」。マーケティング施策の一部をアウトソーシングするときの悩みについて聞いたものです。結果を見てみましょう。
悩みの傾向
- 連絡が取りづらく、プロジェクトが前に進まない
- 外注先の仕事のクオリティに不満
1.連絡が取りづらく、プロジェクトが前に進まない
「相手からメールが返ってこない」「電話してもつながらない」など、直接コミュニケーションが取りにくいがゆえに起こるこの問題は、誰しも経験があるはず。相手に求めすぎるだけではなく、こちらの返信スピードを早くすることによって、相手に素早いレスポンスを意識づけるようにしましょう。
2.外注先の仕事のクオリティに不満
「要求に応えてくれるものの、先方からあまり提案してこない」「納品されるもののクオリティがあまり高くない」など、外注先の仕事のクオリティに不満を感じる声が多く見受けられます。相手との関係性を崩すことなく、業務姿勢を改善してもらうよう促すか、コンペなどを通じて事前に仕事のクオリティが高い会社を見極めることが求められます。
今後の課題
- こちらのレスポンススピードを早めて、相手の素早い返信を促す。
- 相手との関係性を保ちつつ、クオリティの改善をしてもらうように伝える。
- 仕事のクオリティが高い会社を事前に見極めて、アウトソーシングする。
03.データ分析についての悩み「これからの時代に求められるのは、複数のデータ同士を結びつける力」
マーケティング関連の業務をするにあたって、データを分析する力は必要不可欠。『週刊東洋経済』や『週刊ダイヤモンド』などのビジネス系雑誌でも、ここ数か月の間で「データ分析」の特集が組まれているなど、スキルの必要性が高まっていることが伺えます。それでは、アンケート結果を見てみましょう。
悩みの傾向
複数データを結び付けて考えたり、戦略を立てたりするのが難しい。
複数データを結び付けて考えたり、戦略を立てたりするのが難しい
IT技術の発展により、1つのデータを分析する精度は飛躍的に向上しています。したがってこのスキルだけでは、競合他社との差別化を図ることはできません。データの重要度が増している現在において、横断したデータを戦略的に結合するサイエンティストとしてのスキルが求められているかもしれません。
今後の課題
- 一見すると関係のない事象の中から関連性を見出し、新たな仮説を立てる。
- 立てた仮説をもとに、具体的な戦略に落とし込む。
業務別の悩み
ここからは、業務別の悩みを紹介します。皆さんの業務に関係するものに関してはもちろん、業務外の項目であっても皆さんの業務効果を最大化するために関係の深いものだと思いますので、ぜひご覧になってください。
04.店舗側とのコミュニケーションについての悩み「現場とマーケティングの認識のズレをいかに修正するか」
自社商品を店舗で販売する場合、店舗側とのコミュニケーションが必要になります。皆さんはそれぞれどのような悩みを抱えているのでしょうか。
悩みの傾向
- 提案内容が現場の店長に理解されない。
- 現場視点とマーケティング視点とのかい離。
1.提案内容が店長に理解されない
市場調査などの分析によって得られるマーケティングの視点は、普段親しみのない人にとっては理解するのが難しいもの。図や表など、説明内容をできるだけ直観的に伝えられるような工夫をすることが必要です。
2.現場視点とマーケティング視点とのかい離
店舗に毎日立っている人からしてみれば、「実際に商品を売っていない人に何が分かるんだ」と思ってしまうのが本音でしょう。現場を見て初めて得られる発見があるのも事実なので、実際に店舗に赴き、店長の声を反映させた提案をするようにしてみてはいかがでしょうか。
今後の課題
- 図や表を用いて直観的に理解しやすい説明を心がける。
- 実際に店舗に行き、現場の感覚を理解する。
- 現場の感覚を活かした内容も提案に盛り込むようにする。
05.商品の企画・設計についての悩み「市場調査の結果を活かして、いかにアイデアを出すか」
続いては、「商品の企画・設計」についての悩みを紹介します。商品の企画・設計は工数がとても多いため、課題を感じるポイントも自然と多くなる傾向があります。商品企画の大まかな流れは以下の通り。
商品企画の大まかな流れとして、「商品のコンセプト決め」→「市場調査」→「アイデア出し」→「アイデアを商品に落とし込み」→「モニター調査」→「修正・完成」というような流れが一般的です。商品企画を求められている担当者はどのような悩みを抱えているのか、見ていきましょう。
悩みの傾向
- 市場調査の活かし方
- アイデア出し・コンセプト設計
1.市場調査の活かし方
新商品を開発するにあたって、顧客の声を聞く「市場調査」は必須。しかし、せっかく調査をしても、自社のビジネスモデルに合う形でどのように活かしていくか悩んでいる担当者が多いようです。市場調査を効果的なものにするためには、「調査目的」「調査方法」「調査後のフロー」が明確になっているかチェックするようにしましょう。
2.アイデア出し・コンセプト設計
商品の良し悪しを決定づける最大のポイント。思いつくアイデアは、得てして既に世に出ているものかボツになっているものになってしまいがち。既存のものの組み合わせから、いかに新しくて面白いアイデアを出せるかどうかが、商品企画力を大きく左右する要因なのではないでしょうか。
今後の課題
- 「調査目的」「調査方法」「調査後のフロー」が明確で問題がないかを改めて確認し、市場調査の精度を上げる。
- 時勢と既存市場を理解し、そこから新しくてユニークなアイデアを出していく。
06.販売促進(営業力向上は除く)についての悩み「最大の課題は、セグメンテーションの切り方」
販売促進(営業力向上は除く)も、企業によってはマーケティング部の仕事になります。下の結果をご覧ください。
悩みの傾向
効果的な販促キャンペーンが思いつかない。
効果的な販促キャンペーンが思いつかない
効果的な販促キャンペーンが思いつかない理由はいくつかあります。1つは企画力。しかし、それと同じかそれ以上に重要な要素が、1番の悩みに挙がっていた「顧客のセグメンテーション」です。
女子高生向けのボディケアブランドとして有名な「SEA BREEZE(資生堂)」。以前は「サーファー」をターゲットにしていたことをご存知でしょうか。業績が思うように伸びない時代が続いたため、ブランド担当メンバーは方針を大きく転換し、ターゲットを「女子高生」に変更。結果、ターゲット顧客を変えるだけで売り上げは低迷期の8倍になったのだそうです。
既存のターゲットを集めるための面白い企画を立てることはもちろん重要ですが、「セグメンテーションを変える」という発想は、頭の中に常に持っておきたいところです。
今後の課題
- 企画力の向上。
- 「顧客のセグメンテーションを変えたらどうなるか」と常に考える癖をつける。
07.販売促進(営業力向上)についての悩み「勝ちパターンを確立する販促マニュアルをいかに作るか」
「営業力向上」も、数ある販売促進施策のうちの1つです。アンケート結果は、他のものよりも悩みがより顕著に現れました。
悩みの傾向
販促マニュアルを作るのが難しい。
販促マニュアルを作るのが難しい
マニュアルがない状態だと、営業手法がどうしても属人的になってしまいがち。このままでは、「優秀な人が辞めたら、営業成績がガタ落ちした」ということになりかねません。安定した営業力を築くためには、個人のノウハウを蓄積させ、「商品を確実に売るための必勝パターン」を作る必要があります。
「目的は何なのか」「誰がどのようなシチュエーションで使うのか」などを最初に詳細に決めることで、最終的に出来上がるものの質を大きく左右します。新商品など、消費者を購買まで持っていくノウハウがマニュアル化されれば、成果が目に見えて出るので、妥協せずに作るようにしましょう。
今後の課題
- 目的を明確にする。
- 誰がどのようなシチュエーションで使うのかを決め、そのために適した形式を考える。
08.デザイン(UI・UX)についての悩み「Webサイトの改善が課題か」
「デザイン」の領域は、他の分野に比べてどうしても軽視されがちですが、実はマーケティングと密接に関わり合っています。アンケート結果を見てみましょう。
悩みの傾向
自社サイトに多くの課題がある。
自社サイトに多くの課題がある
自社サイトのアクセス数が伸びないとき、担当者はコンテンツの内容に原因があると判断してしまいがち。しかし実際には、UI(ユーザーの目に触れる部分)が見にくかったり、UX(ユーザーがサービスを通して得られる体験)が不便だったりすることがボトルネックになっていることも多いのです。
意識付けできている人が少ないからこそ、デザインの視点を身につければ大きな強みになるでしょう。
今後の課題
- サイトをスマートフォンで見たときに、見にくい箇所がないか確認する。
- 文字や写真をユーザーの視線に合わせて適切に配置する。
- 商品購入までの流れで不自由な箇所がないか確認する。
09.広告関連業務についての悩み「クリエイティブと実務それぞれに悩み」
続いて紹介するのは「広告関連業務についての悩み」。アンケート結果を見ていきましょう。
悩みの傾向
- 話題性のある広告が作れない。
- 広告キャンペーンの計画・広告の年間計画が立てられない。
1.話題性のある広告が作れない
伝えたいことを直接的に伝えても、内容に余程のインパクトがない限りは、話題性が生まれることはありません。伝えたい内容はぶらさずに、「いかに変わった角度から伝えるか」を考え出す企画力が必要になります。
2.広告キャンペーンの計画・広告の年間計画が立てられない
効果的な広告運用をするために不可欠なスキル。事前にどのような施策を実行するのかを洗い出し、予算の中で優先順位をつけ、どの時期に実行するのがベストなのかを考える力が求められるでしょう。
今後の課題
- 伝えたい内容を、ストレート過ぎない変わった角度から伝えることを意識する。
- データを元に広告施策を洗い出し、優先順位付けし、ベストな実行のタイミングを決定する。
10.SNS運用についての悩み「ターゲットに合った効果的な運用を」
近年、SNSを積極的に運用する企業が増えてきました。ユーザーが1日の中で接触する時間の長いSNSを効果的に運用できれば、競合企業との大きな差別化になるでしょう。アンケート結果はこちらです。
悩みの傾向
- ターゲットに応じた投稿内容・長さ・タイミング
- 炎上対策
1.ターゲットに応じた投稿内容・長さ・タイミング
一見簡単そうに見えるSNSの運用ですが、なかなか上手くいかない企業が多いのが現実。ただ単に投稿を繰り返すのではなく、ターゲットに応じて投稿時間や投稿内容を工夫したり、発信者のキャラクターを作ったりすることで、アカウントのファンを増やしていくことが求められます。
2.炎上対策
SNSを運用する上で気をつけなければならないのが「炎上対策」。1つの不注意な投稿で企業ブランドを損なってしまう可能性があるので、対策をするのは大切です。一方で、炎上した後の対応が、企業のイメージを大きく左右するので、事前予防と同時に事後のガイドラインを策定しておく必要もあります。
今後の課題
- 投稿内容・長さ・タイミングを変えてみて、どのような組み合わせがよく読まれているかを分析する。
- 企業SNSを積極的に活用しているアカウントを参考にして、自社の運用に活かす。
事例
- シャープ株式会社(Twitterアカウント:@SHARP_JP)
- サッポロビール株式会社(Facebookアカウント:https://acebook.com/sapporobeer/?fref=ts)
- 株式会社コバックス(Instagramアカウント:ofutonkobo)
まとめ
その他にも、アンケート対象者に現状の課題について聞いてみると、「人手が足りない」「やることが多すぎて、何に困っているのかもわからない」など、普段大変な思いで働いていることが分かる声が多く寄せられました。
今回挙げた悩みは、多くのマーケティング担当者が「できていないこと」。つまり、これらの課題と向き合い「できること」に変えれば、マーケッターとしての価値が大きく上がることを意味するのです。
もし今回のアンケートの中に、皆さんの業務から外れたものがあったとしても、皆さんの業務の成果と密接に関係しているものばかりなので、現状をしっかり把握しておきましょう。
次回以降、ここで紹介したマーケティング担当者の悩みの解決方法を、引き続き発信していきたいと思います。ぜひ定期的にチェックしていただけると嬉しいです。