いま国会では「強姦罪」や「強制わいせつ罪」の厳罰化を柱とした刑法改正が議論されている。その刑法改正案が6月7日、衆議院の法務委員会で全会一致で可決された。8日にも衆議院を通過する見通し。
性暴力被害者・支援者のグループが同日夕、今国会での刑法改正を求める「要望書」と約30000筆のオンライン署名を金田勝年法務大臣に手渡した。
現行の刑法では、強姦罪や強制わいせつ罪は、次のように定められている。
強姦罪「暴行または脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする」(刑法177条)
強制わいせつ罪「13歳以上の男女に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」(刑法176条)
今国会に提出されている、改正案のポイントは次のとおり。
・強姦罪・強制わいせつ罪を、被害者の告訴がなくても起訴できる「非親告罪」にする。
・強姦罪の対象として、肛門性交・口腔性交を追加し、名前を「強制性交等罪」に変更。女性以外も被害者になりうる形にする。
・厳罰化(強姦罪は、法定刑の下限を懲役3年→5年に変更。強姦致死傷罪は、法定刑の下限を懲役5年→6年に変更)。
・親権がある「監護者」から18歳未満の子どもへの性暴力のケースでは、暴行・脅迫がなくても強姦・強制わいせつが成立。
一方、要望書の最大のポイントは、次の点だった。
"強姦・強制わいせつ罪から「暴行または脅迫を用いて」という要件を削除し、「同意に基づかず、」を挿入してください。"
そう要望する理由は、次のような点だった。
- 性暴力に直面したとき「体が動かない」「思考が停止する」状態になることがあるが、裁判では「抵抗していない=合意だった」とされることがある。
- 内閣府の調査によると、異性から無理矢理性交された女性のうち「警察」に連絡・相談した人は4.3%しかいない。
- 被害者が訴えにくいのは、性犯罪と認定されるハードルがあまりにも高いからだ。
- 社会には、被害者が抵抗しなかったことを責められ、加害者は責任を問われない風潮がある。
- 教師や上司など、立場の違いがある場合、暴行・脅迫がなくても性交を強要できる。
要望署を手渡した「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」の山本潤さんは、「本来、同意がない、本人の意思に反して行われた性行為は、性暴力とすべきだ」と訴えた。
衆議院法務委員会は6月7日、施行後3年をめどとして、実態に即した施策を検討し、必要な措置をするという趣旨の附則を改正案につけた。
さらに、付帯決議もした。
そこでは、政府や最高裁は「格別の配慮をすべき」として、暴行・脅迫要件について心理学的・精神医学的知見からの調査研究を推進し、警察・検察・裁判官に被害者心理の研修をすること、性暴力被害者に対する「ワンストップ支援センター」を整備することなどが挙げられた。
同プロジェクトの中野宏美さんは「私たちはこれまで、40人以上の国会議員に直接要望を届けてきた。その内容が附則や付帯決議に盛り込まれていた」と、国会での議論を評価した。
金田大臣は報道陣に対し「関心の高さを感じる。法案の速やかな成立をめざす」と話した。
法案は6月8日、衆議院本会議で可決され、参院へ送られる見通しだ。
バズフィード・ジャパン ニュース記者
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