買い物をしたり、ゴミを出すのに使用するビニール袋。ビニール袋をはじめとするプラスチック製品は爆発的に増えており、ちゃんと処分されなかったそれらのものは、海に流れ着き、海洋中には無数のビニール袋が漂っている。
もともと自然界には存在しなかった物質であり、このままでは海がプラスチック製のゴミであふれかえってしまう。大変だ。
ところが、スペイン、ポンペウ・ファブラ大学のリカルド・ソレ氏の調査では、思ったほどプラスチックのゴミが見つからなかったそうだ。
なんと微生物が進化を遂げ、プラスチック製のゴミを食べて分解していた可能性が高いというのだ。
スポンサードリンク
消えたビニール袋の謎
発見されたビニール袋(プラスチック製品を含む)は、予想の1,000分の1でしかなかった。数学モデルからは、こうしたことは物理プロセスによっては説明できないことが明らかになったという。
代わりに、プラスチックを生分解可能な能力を進化させた微生物が増加しているのではなないかと研究チームは推測する。
だがこれは、必ずしも良いこととは限らない。
微生物の生分解によって大きなプラスチックが大量の微細な断片に分解される速度が速まったなら、生態系に大きな影響を与えるかもしれない。
プラスチックには各種の添加剤が含まれているが、これが生分解によって放出され、食物連鎖に侵入する可能性もあるのだ。
プラスチック問題に本気で取り組もうというのであれば、そもそもそれを海に流さないことが大切となるのである。
微生物が進化した可能性は大いにあり
理論的には、微生物がプラスチックを生分解するよう進化することはあり得る。オランダ海洋研究所(Netherlands Institute for Sea Research)のリンダ・アマラル=ツェットラー氏の研究では、海を漂うプラスチックをコロニーにする微生物は周辺のものとはかなり違っており、その一部が汚染物質を食べていることが推察された。
実際に、プラスチックはまったく新しい生態系を作り出しており、ツェットラー氏らはそれを”プラスチック圏(plastisphere)”と呼んでいる。
しかし北大西洋のプラスチックに付着する生物のDNAからは、プラスチックを分解できるような微生物は発見されなかった。その理由は今のところ発見されていないだけなのかもしれない。未知の微生物はまだ無数に存在するからだ。
ツェットラー氏らは、海のプラスチックは微生物がコロニーを作ると重くなって海底に沈んでしまうか、調査船の網にかからないほど小さな断片に分解されてしまう可能性の方が高いと考えている。
また他の生き物によって飲み込まれている可能性や海流によって予想外の場所に運ばれている可能性も考えられる。
ソレ氏は、漂流するプラスチックに増加傾向が見られないことは、プラスチックの増加と比例して増加する生物的な反応によってしか説明できないのではないかと述べる。物理プロセスによるものであれば、依然として増加傾向が見られるはずなのだという。
ビニール袋などのプラスチックは、絶海の孤島の浜辺や深海にいたるまで、海のいたるところを汚染している。大きいものは亀などの動物の体内に詰まり、餓死させてしまう。
発見された量が予想より少なかったとしても、大量のプラスチックが亜熱帯還流で発見されていることは間違いない。
太平洋ゴミベルトという用語からは海を覆うガラクタの類が想起されるが、そのほとんどは数ミリしかない肉眼ではなかなか確認できない小片である。その海洋生物に対する影響は定かではない。
via:biorxiv・newscientist・iflscience/ translated hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
「植物・菌類・微生物」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 3498 points | 猫をモフモフするだけの簡単なお仕事です。アイルランドの動物病院で一日中猫を撫でたり抱っこするスタッフを募集中 | |
2位 2934 points | 睡眠不足になると脳は自らを食い始め、ダメージを負う(イタリア研究) | |
3位 1844 points | 世界最辛の記録がまた更新。気道が焼かれ皮膚をマヒさせる、殺人兵器となりうる激辛トウガラシ「ドラゴンの吐息」 | |
4位 1773 points | 涙で視界が見えなくなる「もしもボクが人間の言葉を話せたら・・・」犬の最期の想いを綴ったショートフィルム | |
5位 1312 points | 皮も果肉もピンク色!乙女めいたパイナップルがこの夏よりアメリカで販売開始 |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
プラスチックが分解されるなら
世界的に問題にマイクロビーズなんてすぐに分解されてるんないの?
2. 匿名処理班
最近有名な人食いバクテリアってもしかして進化の結果…
3. 匿名処理班
魚が飲み込んじゃってるか、色々なものが付着して重さで深海まで落ちちゃってる気がする
4. 匿名処理班
微生物がプラスチックを分解出来る「進化」じゃなくて、微生物がプラスチックを分解出来る「生分解性プラスチックの普及」の方が大だと思うんですが。
それに最近のコンビニ袋は太陽光の下に晒してれば2週間後くらいは粉々になったりするものもあるし。
まあ国外のは知らないけど。
5. 匿名処理班
東野圭吾の毒笑小説のエンジェルを思い出す
6. 匿名処理班
プラスチックがないと生きていけないように進化したらプラスチックがなくなると絶滅することになるな
7. 匿名処理班
単にプラスチックが認識できないサイズまで細かくなっちゃってるだけでは?
8. 匿名処理班
むしろ、微生物の分解のせいでマイクロプラスチック(ビーズ)の割合がどんどん増えているのではないかと疑ってしまう。本気で大きいほうのプラスチックごみを海に捨てないようにしないとマイクロプラスチックの量も減らないだろう。
9. 匿名処理班
100年前まで自然界には存在しなかったというだけで、プラスチックだって有機物なんだから独占的にエネルギーとして利用できれば自然界では有利になるだろうね
10. 匿名処理班
ウミガメが食べてるって昔は聞きましたが
11.
12. 匿名処理班
これは進化ではなく、もともとプラスチックを分解可能な種がいて、プラスチックの増加に伴って勢力を拡大したと考えるべに
よく言われる蛾の工業暗化も、この理屈で説明がつく
→もともと一定割合、黒い個体がいて、それが生き残って繁殖した
13. 匿名処理班
数年前、中学生だかが、プラスチックであっても時間をかけて土に戻ることに疑問もって
プラを分解する微生物を特定したってニュースあったよね。
14. 匿名処理班
可塑剤がプラスチックの崩壊を早めているだけだと思う
15. 匿名処理班
やっぱ地球すげぇわ
完璧って地球のことなんじゃないか?
16.
17.
18.
19.
20.
21. 匿名処理班
500年後くらいには
男「一番の深海にたどり着いた人工物ってなんだか知ってるか?」
女「深海、ってことは潜水艦かしら?」
男「コカコーラの缶だぜ」
女「さすが。宇宙だけじゃなくて深海でも売ってるのね」
二人「HAHAHA」
とかゴミが積もったせいで深海が「底上げ」されてるとか言われそうだな
22. 匿名処理班
単純に潮の流れで他の国の浜辺に打ち上げられてるんじゃないのと思ったけど違うのかなw
23. 匿名処理班
紫外線で劣化して粉々になっただけで微生物は関係ないんじゃ無いかな?
24.
25. 匿名処理班
ナウシカの世界も遠くないね。
人間が生み出した有害物質を分解する為に微生物が進化を遂げ、腐海ができてくん。
26. 匿名処理班
環境問題の一番の障害は非協力的な大国なんだよね。
一番排出してる国が対策を講じない以上環境問題が改善することはない。
27. 匿名処理班
これって地上でもプラを分解する
微生物が発見されてるから
おかしな事じゃないでしょ
でも怖いのはここから
良いと思うことでも
それが長期間続いた時
どのような副作用が出るのか?
未知のグレーゾーンは
本当の意味で怖い
後戻りできないもの
28. 匿名処理班
今ある石炭も、かつて植物を腐敗させることができる菌が居なかったからできたらしいしね。
現在は、植物を食べてしまう微生物がいるから石炭は作られない。
29. 匿名処理班
どこかの浜辺に打ち上げられてるんじゃなくて?
地元の海とかしょっちゅう色んな物が流れ着いてゴミだらけだったけど
30. 匿名処理班
そこでプラを分解する微生物がいると仮定してだ
それが大量発生して地上に上ってきたなら
工業製品や建築物がかなりのダメージを負うことになるかもしれない
大部分の人間は自分の生活に影響がなければ行動を改めたりはしない
影響が出てからでは遅いんだけどね。。。
31. 匿名処理班
※4
これだと思うな
アンテナケーブル敷設で一時的に作業中断してコンビニ袋かけてたら
数週間後にボロボロになった
32. 匿名処理班
マイクロプラスチックがどうとかってニュースとこれは関係ないのか?
どっちも石油由来の製品だと思うんだが
33. 匿名処理班
紫外線でポリマーが壊れてるだけですよ、研究者さ〜ん。
微細なプラスチックになってるから見えないだけ
まあそこまで小さくなったら取り込んで分解する微生物がいてもおかしくないけど
34. 匿名処理班
これが「海を大事にしよう」って働きがあって
人間の投棄が減ったっていうならいい話なんだけど
微生物が分解せざるをえないほどのことを強いたってことだよね
微生物に申し訳ないよ
35. 匿名処理班
楽観的になれないと思います。
なぜならビニールをクラゲと間違って食べる生物が多いという事。
例えば、マンボウ、ウミガメ類
マイクロプラスチックの問題と含めて海洋投棄されないよう努力すべきだと思います。
36. 匿名処理班
進化じゃなくて元々そういう能力のある微生物もいるって事かもね
37. 匿名処理班
※8
だよね
「見えない=存在しない」ではないからね。
微生物やUVで粉々にされて漂ってると思う。
あとコーティング紙やセルロースと混ぜたプラッチックとか製造をやめたほうがいい。
38. 匿名処理班
プラスチックやビニールの微細粒は、人間も水や空気や食物とともに大量に取り込んでしまっているのだから、こりゃ、もう誰もが他人事では済まされないぞ!
今もこの瞬間に、取り込まれた目に見えないサイズの微粒が、ありとあらゆる生物の体を内部から…
39. 匿名処理班
深海に溜まってるんじゃないかしら
(・ω・`)
40. 匿名処理班
長年浜で仕事をしているがビニル袋は半年もせずに消えていく
これ自体はほぼ紫外線劣化だろうけど
マイクロプラスチックまで分解されたら水を濾過する貝や
砂に着いた付着物を食べる蟹やナマコなどのエサになってると思われる
ヒメハマトビムシやヨコエビあたりかもしれない