研究分野をサーベイする

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お茶の水女子大学伊藤研究室ゼミ資料

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  • 遠い昔、教授から「お前のサーベイは全然ダメだ。こんな論文があるじゃあないか。」と論文を叩きつけられたのを思い出します。こういうきちんとした説明は初心者にはとてもありがたい。
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研究分野をサーベイする

  1. 1. 研究分野を サーベイする お茶の水女子大学 伊藤研究室 ゼミ資料 ※2017年6月現在 (まだまだ書き直し中)
  2. 2. サーベイとは何か  語意  もともとは「調査」  研究業界では「既存の関連論文を網羅的に調査・勉強すること」  なぜサーベイするのか…例えば:  自分の興味ある研究分野を一から勉強する  研究テーマのヒントを探す  自分が実現したい研究に必要な前提知識・要素技術を探す  新規性や優位性が本当にあるのかを事前に検証する  新規性や優位性を発表時に示すための証拠を揃える
  3. 3. サーベイ不足がもたらす罰ゲーム  あとになって同じような研究(あるいは自分より優れた研究) があるのを見つけて研究自体を練り直すハメになる  学会発表時に「○○という研究があるけど知らないの?」と 吊し上げられる  …(他にも思い出したら書き足す)
  4. 4. いつやるの?いまでしょ…とは限らない  [方法例1] 分野全体をサーベイしてから研究テーマを考える  まず分野全体を網羅的に理解し、いま着手すべきテーマを絞る  その分野の知識全体を道具として活用する  その分野で研究者になりたい人は分野の全体像を知る必要がある  [方法例2] 研究テーマ案をたててからサーベイする  「研究のアイディアやニーズが最初にありき」という場合に  その研究に新規性や優位性があるかを短時間で見極める  学会投稿前の再サーベイにも有効な手段 ※研究分野・研究室状況・経験値などによって選ぶべき方法が異なってくる ※伊藤研の中でも方法例1,2は混在している (両方やるに越したことはない)
  5. 5. 文献を集めるための出発点  昔からの方法  自分の研究に関係ある国際会議や論文誌の目次から論文を探す  サーベイ論文を最初に読む  論文の参考文献から別の論文を探す  現代ならではの方法  気になる著者のウェブサイトから論文を探す  学術用の検索エンジンを使う (例) Google Scholar (scholar.google.com)  協調的な方法  同じ分野の学生と共有する (例) Wiki や Slack などの協調環境にサーベイ結果を書きこむ  勉強会・輪読会を企画する
  6. 6. 検索エンジン…Google Scholarの場合 検索ワードに合致する論文のリストが表示される…だけで満足してはいけない この論文を引用している 新しい論文のリスト この論文を紹介している数々のサイト (どこかに論文PDFが載っているかもしれない)
  7. 7. 広く調べる・深く調べる  広く調べる  自分の研究と同じ論文がないことを示す唯一の方法は 「1本でも多くの論文をサーベイする」ことである  少しでも関係ありそうな論文は全部ざっと目を通す (×熟読 ◯速読)  「網羅的に論文を探したが全て自分の研究と異なる」という証拠を作る (論文に掲載する参考文献の【数】が説得力になりえる)  深く調べる  自分の研究に最も近いいくつかの論文を厳選する →自分の研究の優位性をどこに確保できるか徹底的に探す  自分の研究が研究室内の先行研究にもとづいている場合 →先行研究からの進歩をどこに作るかを熟考する
  8. 8. ざっと読む  一般的な方法  アブストラクト・1章・最終章などを最初に読む  伊藤研の分野でありがちなこと  1ページ目にいきなり図1があって重要な結果が示されている  長大な図題を読むだけで論文の要約になっている  手法を読むより先に結果を見たほうが話が早い  特に英語の速読を早く覚えてほしい  初学者が英語論文講読に苦労するのは英語能力のせいではない (多くの場合、単に知らない単語が多いだけである)  自分の研究に関係ある論文はたいてい似た単語ばかり使っている →たくさん読んで単語に慣れればきっと速読できるようになる
  9. 9. 自分の研究に似ている論文が 見つかったら  落ち込む必要はない  むしろ自分の方向性は間違ってなかったと解釈すべき  よく読むべし  自分のアイディアのどこに優位性があるか見極めよう  場合によっては研究の作戦変更を考えよう  アラ探しに終始してはいけない  既存研究のやり残しを埋めるだけの研究に終わるより、 もっと新しい方向性を打ち出せる研究をしよう
  10. 10. 自分の研究に似ている論文が 見つからなかったら  世紀の大発見!?の可能性は低い  まさか世界の誰も考えてないなんて…  探し方を変えてみよう  別の雑誌の目次をみる  検索ワードを変える  詳しそうな人に相談する  その研究は本当にいまやるべき研究なのか  誰にも実現できない困難すぎる研究かも?  誰一人おもしろいと思ってくれない研究かも?
  11. 11. サーベイの書式を定める  書き慣れた書式により効率よくサーベイを進められる 例: 筑波大学 落合陽一先生の書式 http://lafrenze.hatenablog.com/entry/2015/08/04/120205
  12. 12. サーベイ結果を可視化する  数十~数百の関連論文を整理する  論文群を階層的に分類する → そのまま論文の「関連研究」の章構成にもなる  論文群の散布図やマトリクスを作る → 例えば2軸を定義して各論文の位置づけを図示する  自分の研究がこれらの構造の中でどこにあるかを明示する  最も重要な関連研究との比較を詳細化する  いくつかのチェックポイントを定義して自分の研究と比較する (例えば○×表をつくるとよい) → 比較実験により自分の研究の優位性を示す際の参考になる
  13. 13. 可視化によりサーベイ結果を説明する  関連研究紹介の章構成 (論文)  論文の階層的分類から  関連研究紹介の箇条書き (スライド)  論文の階層的分類から  関連研究群の俯瞰図 (論文・スライド)  散布図やマトリクスをそのまま使う  最も関係ある関連研究に対する優位性の主張 (論文・スライド)  ○×表など
  14. 14. 参考文献に載せる論文の優先度 (1)  当然ながら自分の研究との関係の深さ  「論文の主旨や構成」と「参考文献選び」の整合性が大切  英語論文  そもそも日本語より英語のほうがいろんな論文があるのは当たり前  英語で投稿するときには原則として英語の論文を引用するので 日本語論文ばかり先に調べてると二度手間が生じる →伊藤研では「まず日本語論文を先に検索」を禁止 ※ 日本特有の題材が絡む研究の場合にはこの限りではない  論文以外の文書  研究を引用するときは論文で ※ウェブサイト等での研究解説の引用はできるだけ避ける  専門知識の引用は書籍でもよい  ウェブサイトは更新が容易なので引用文献向きではない ※引用の必要がある際には閲覧日を書き添えることが望ましい
  15. 15. 参考文献に載せる論文の優先度 (2)  論文選びの無難かつ客観的な基準の例  新しい論文 (論文を見つけたら発行年をチェックするクセをつけよう)  厳格な査読を通った論文 (ジャーナル・有名国際会議などの論文) ※日本の査読なし講演の予稿はこれに該当しない  論文の種別の簡単な判別方法(初学者向け)  海外のジャーナル: 出版媒体名にJournal, Transactionなど  国際会議: 会議名にConference, Symposium, Workshopなど  国内のジャーナル: 出版媒体名に「論文誌」「論文集」など  査読なし国内講演: 会議名に「全国大会」「研究会」など  権威ある著名学会名 (伊藤研の場合例えばIEEEやACM) も覚えておく  普通の検索エンジンではなく論文検索エンジン(Google Scholarなど) を使う習慣をつけておくと論文種別を判断しやすい
  16. 16. サーベイ内容をゼミで紹介する  関連論文群の全体像(≒サーベイ可視化結果)を示す  論文群の分類結果を示す →発表者の論文の「関連研究」の章構成を想像できるようにする  各論文がなぜ紹介されているのかを明確にする  全体像の中での発表者の研究の位置づけを示す  最も重要な特定の論文を深く紹介する  その研究のポイントを著者になったつもりでアピールする  その研究の課題、その研究に対する発表者の研究の差分や優位性 などを重点的に説明する  サーベイ結果から導かれる発表者の研究の課題を議論する
  17. 17. サーベイは一度ではない  定期的に繰り返すべし  新しい関連論文が常に発表されている  研究の進展とともに関連分野は拡がっている  学会投稿の前に  論文の主旨や構成にあわせて文献を追加調査したいときも  修士論文・博士論文の執筆時に  学会論文よりも俯瞰的に研究分野を語る必要がある
  18. 18. 最後に一言  時に学生はサーベイで評価されている  知識の広さを感じさせる研究発表は信頼される  よく勉強している学生には有益なアドバイスが返ってくる  サーベイしたことに満足してはいけない  たくさん論文を読んだら自動的にいい研究ができるわけではない  勉強会に出たから勉強になったとは限らない  研究職を目指さない人にも重要な経験  技術動向や市場動向を調べるのと方法論が似ている
  19. 19. もっと役に立つページ  文献の調べ方(大学院生の方へ) http://siva.cc.hirosaki-u.ac.jp/usr/koyama/lecture/bunken/search.htm  サーベイの仕方・論文の読み方 https://written.4403.biz/source/how-to-survey.pdf  CV分野におけるサーベイ方法 https://www.slideshare.net/HirokatsuKataoka/ss-43935588  文献調査をどのように行うべきか https://www.slideshare.net/YuichiGoto1/ss-62062085  論文の探し方・読み方 – 情報工学分野 - https://www.dropbox.com/s/z54d7ff4hu8i9rp/%E8%AB%96%E6%96 %87%E3%81%AE%E6%8E%A2%E3%81%97%E6%96%B9%E3% 83%BB%E8%AA%AD%E3%81%BF%E6%96%B9.pdf?dl=0
  20. 20. Slideshareでこの資料を見つけた方へ: 国立大学法人の運営は税金で賄っているという事実にしたがい、 どなたかの役に立つかもしれない資料は積極的にウェブに載せる、 という拙教員の方針から本資料をSlideshareに載せています。 拙いゼミ資料ではございますが、何らかの参考になれば幸いです。

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