今日は少し、私が住んでいるテキサス州についてお話ししてみたい。テキサス州は保守派が多く住む州だが、そんなテキサスはビジネスに対してフレンドリーな土地としても知られている。アメリカの大企業や中小企業の重役たちを対象にしたウェブ・マガジン『Chief Executive』では、毎年「Best & Worst States For Business」というランキング、つまり アメリカ50州で“企業にとって”最も親切な州と、そうでない州の順位表を発表している。今年も5月中旬にその順位表が発表され、13年連続でテキサス州がアメリカで最もビジネスをしやすい州に選ばれた(ちなみにニューヨーク州は49位、カリフォルニア州は最下位)。
テキサスが「ビジネス州をしやすい州No.1」に選ばれた理由の一部は以下の通りだ。
1)企業への税率が低く、個人に対する所得税と遺産税が存在しない。
2)規模と発着数などの面から全米第2位の空港システムを誇る。
3)巨大な貨物船が入れる港が11港もある。
4)労働組合への加入が義務化されていない。
しかし、実はこれら以上に重要と言っても過言ではないことが、テキサスにはもうひとつある。それは、テキサス州とテキサスを管轄下に置く第5巡回区控訴裁判所の判事の多くが、合衆国憲法を創案者の意図に従って解釈し、憲法の条項を文字通り遵守しているという点だ。つまり判事の多くが感情や人情に影響されて法を解釈することがないと言われている。
これが会社経営と、どう関係するのだろうか?
たとえば、ある過失によって企業が訴えられた裁判にて、一般人から形成される陪審員たちが、被害にあったとされる原告に同情して多額の賠償金を与える判決を出したとする。しかしテキサスでは、そのような判決が上訴裁判所や州最高裁で覆される確率が非常に高く、たとえ原告がさらに上訴したとしても、第5巡回区控訴裁判所にアメリカで最も保守的で親ビジネスな判事が多いため、最高裁まで持ち込まれるケースがほとんどないのである。
最近の判例をひとつ紹介しよう。
2015年5月、交通事故の死者の遺族が事故の原因はグッドイヤー・タイヤ社のタイヤが欠陥品だったせいだとし、欠陥性を証明するために事故を起こしたタイヤと同じタイヤの製造過程をビデオ録画することを求める裁判を起こした。同社は既にこのタイヤの製造を中止していたにもかかわらず、第1審では「事故を起こしたタイヤに最も近いタイヤの製造過程を原告側にビデオ撮影させよ」という判決が下った。
しかし今年の4月26日、テキサス第4上訴裁判所は、「異なるタイヤの製造過程を撮影しても、事故を起こしたタイヤの欠陥性を証明できず、そもそもこれはグッドイヤー社の企業秘密保持権を無視している」として、第1審の判決を覆した。この判決が出た直後、テキサスの企業経営者たちの多くは、「この裁判がカリフォルニア州で起きていたら、最高裁まで持ち込まれたはずだ。テキサスでビジネスをしていたよかった」と胸をなで下ろしていた。
ちなみに、カリフォルニア州とカリフォルニアを管轄下に置く第9巡回区控訴裁判所は、合衆国憲法の解釈法は時代ごとの政治や文化背景やモラルに従って進化すべきだと考えるリベラルな判事が圧倒的多数を占めることで知られている。
「思っていたよりも、コーヒーが熱過ぎた」という、信じられないような理由でレストランを訴えるような人が多い訴訟大国のアメリカでは、人情に左右されずに法の条項を文字通り遵守する判決を下す判事の存在は、ビジネスが成功するかどうかの大きな決め手になるだろう。アメリカで事業を興すなら、テキサスをその候補のひとつに考慮してはどうだろう。
2017年度の50州ベスト&ワースト・ビジネス度ランキング
2017 Best & Worst States For Business
http://chiefexecutive.net/2017-best-worst-states-business/
テキサスでビジネスをしたい人たちへの情報提供サイト
https://texaswideopenforbusiness.com/
Texas Wide Open for Business