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 北朝鮮が3週連続となる弾道ミサイルを日本海に向けて発射し、日本の排他的経済水域に落ちた。

 幸い船舶などの事故には至らなかったが、日本海には米原子力空母が展開中だ。傍若無人で危険極まりない北朝鮮のふるまいは、愚かというしかない。

 北朝鮮はおそらく国際社会、とりわけ米国との対話の足音が聞こえてきたと、勝手な解釈をしているのだろう。

 トランプ米政権は、軍事的圧力を高める一方、最近は「金正恩(キムジョンウン)体制の転換を求めない」「対話での問題解決を目指す」などの発言が目立つようになった。

 石炭の輸入制限など、制裁に本腰を入れたかに見えた中国もこれまで以上の圧力の強化には慎重な姿勢をみせ始めた。

 自らは何の譲歩もせずに対話を始めたい。その前に挑発を重ねて関係国を防衛力強化に向かわせ、地域の安全保障の枠組みにきしみを生じさせたい――。何度も繰り返してきた北朝鮮の戦術が透けて見える。

 相次ぐミサイル発射を受けた在韓米軍への新型迎撃ミサイルシステムの配備は、北朝鮮にとって中国と米韓の対立をあおる格好の材料と映るのだろう。

 日本に対しても露骨な挑発をしかけている。

 北朝鮮外務省は最近、日本に対する軍事攻撃の目標について論評した。今までは在日米軍基地を狙っていたが、日本の対応次第で「標的は(米軍基地以外に)変わるしかない」とした。

 日本国民の安全にかかわる問題である。北朝鮮の動向を十分警戒し、核・ミサイル技術の進展を正確に見極める必要があるのは言うまでもない。

 ただ、北朝鮮はミサイル実験のたびに新たな技術を手に入れたと喧伝(けんでん)するが、実際の成果については米韓の国防当局筋などから慎重な見方も出ている。

 軍事上の分析とともに欠かせないのは、彼らの意図を冷静に読み解き、交渉による緊張緩和を探る外交力の発揮である。

 北朝鮮との間では日本人拉致問題が解決していない。

 日朝が国交正常化に向かうための「ストックホルム合意」を発表して3年の歳月が流れた。

 当局間の水面下での接触は今も続くが、大きな進展をみていない。北朝鮮は、核・ミサイル問題は米国との協議事項だと主張する。それでも日本は何とか対話のチャンネルを維持しており、説得する機会はある。

 米韓と連携しつつ独自の役回りを模索する。硬軟織り交ぜた外交で、この異常な状態を落ち着かせねばならない。

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