政府から国家戦略特区に指定され、農業分野などの規制緩和に取り組んでいる兵庫県養父(やぶ)市。民間出身で新規事業の立ち上げなどを担ってきた三野昌二副市長が任期を6ヵ月余り残して、7月31日付けで辞任した。
公式には、退任は「健康上の理由」となっているが、実際は特区の進め方などを巡って議会の攻撃にさらされるなど、政治的な攻防に巻き込まれた結果にも見える。
10月には市長と市議会議員の同時選挙が控えている。当初は広瀬栄市長が無投票で3選を果たすとみられていたが、ここへ来て、対抗馬が立ち8年ぶりに選挙になる気配が濃くなっている。安倍晋三内閣が規制改革の突破口と位置付ける「特区の先進地域」だっただけに、選挙で住民の信任が得られるのかどうかに注目が集まっている。
三野氏は広島県出身で、リゾートホテルの運営や、長崎県のハウステンボスの経営、栃木県の旅館の再生などに携わった経験を持つコンサルタント。俳優業や客船「飛鳥」のパーサーなど多彩な経歴を持つ。広瀬栄・養父市長に一本釣りされ、2013年2月に副市長に就任した。
養父市が100%出資する地域おこし会社「やぶパートナーズ」の社長を兼務。養父市が国家戦略特区として新規事業を始める仕掛け人の役割を果たしてきた。
やぶパートナーズが主体となって山間地の棚田のコメを企業と連携して売り出したり、耕作放棄地を再生させるなど農業活性化に取り組んだ。また、特産品ながら販路が限られていた朝倉山椒をパリやミラノに売り込むなど、民間出身ならではの活躍をしてきた。
退任の記者会見の翌7月29日、退任式を終えた直後の三野氏に話を聞いた。
――突然のようにみえますが、なぜ任期途中に退任されるのでしょう。
三野 健康上の理由ということになってますが、政治的な問題がある時はだいたい「健康上の理由」というわけです(笑)。
ひとつは、市議会で一部の野党から私が集中攻撃されていて、そろそろ限界だと感じていました。私はもともと民間で仕事をしてきて、政治は素人ですから、政治家の理屈には正直付いていけません。
――前々から「もう1人副市長がいたら助かる」と仰っていましたね。
三野 隣の豊岡市には、職員上がりと民間出身の2人の副市長がいて、職員出身の副市長が行政や議会の対応をこなしているようです。養父にも職員から副市長が出て、行政部分を担当していただければ、私が全国を飛び歩くことももっと容易になるのに、と思っていました。
養父の良い農産品を売り込むにしても、直接足を運ぶことが大事です。それができるのは民間出身の私の特技ですから。