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【社説】

加計学園問題 再調査を拒む不誠実

 獣医学部新設をめぐり、安倍晋三首相の意向が働いていたのか否か。国会が真相解明に努めるのは当然にもかかわらず、政府は理由にもならない理由を付けて再調査を拒んでいる。不誠実に過ぎる。

 国会で真相解明の俎上(そじょう)に載っているのは、学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部を愛媛県今治市に新設する計画だ。学園理事長は安倍首相の「腹心の友」であり、そのことが計画をめぐる行政判断をゆがめることはなかったのかが、問題の核心である。

 文部科学省が作成したとされる文書には「官邸の最高レベルが言っていること」「総理の意向だと聞いている」などと、内閣府が早期の学部新設を働き掛けたと、うかがえる記述があった。

 政府側は文書について内部調査を行ったものの「確認できなかった」と早々に結論づけ、内容を全面的に否定。野党側が同省内で共有したとみられる電子メールの写しが見つかったとして再調査を要求しても拒否し続けている。

 五日の衆院決算行政監視委員会では、民進党委員がメールの送受信者十人の名前を読み上げた。同省高等教育局長は「同姓同名の職員は実際いる」と答えながらも、出所や入手経路が明かされていないとして、確認は拒んだ。

 あきれるばかりの答弁である。行政府が全国民の代表である国会を愚弄(ぐろう)しているとしか思えない。国民の疑問に真摯(しんし)に答えようという公務員として当然の姿勢すら感じられない。このような人たちに私たちの子孫の未来や国の行く末を大きく左右する教育行政を任せ続けていいのだろうか。

 こうした姿勢は、安倍首相自身が真相解明に消極的であることの反映でもあろう。

 首相は学部新設計画への関与を尋ねられると「私の意向は入りようがない」と重ねて否定し、野党側の指摘には「印象操作」だと反論する。このまま追及をかわし続け、時間切れを狙うのなら、国民の知る権利の蹂躙(じゅうりん)にも等しい。

 首相は、かつて学園の監事を務め、報酬を受け取っていたことを認めている。首相のミャンマー訪問に学園の理事長が同行して、政府専用機に同乗していたことも明らかになった。

 首相と学園との親密な関係が学部新設に影響しなかったのか、国会が追及するのは当然だ。野党側は首相に「印象操作」などと言われてもひるむことなく、国政の調査という国会の責務を国民の代表として誠実に果たしてほしい。

 

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