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不動産投資において、自分の大切な収益物件にどのような入居者を入居させるかということは、とても重要なことになります。当たり前のことですが、入居者が家賃を入れてくれなければキャッシュフローが悪化してしまいますし、入居者が収益物件の中でトラブルを起こせば、収益物件の資産価値が大きく下がってしまうということも十分考えられるからです。
それほど重要なことなのにも関わらず、どのような入居者を入居させるかということを全く考えていない投資家も多いものです。全国さまざまなエリアには、多種多様の入居需要があると思いますが特に気をつけなければいけないのは、価値感が違ったり文化などが違う外国人を入居させる場合です。
価値観や文化などが違うと、想定外の問題やトラブルが起きる可能性があります。特に日本は今後、人口が減り続ける宿命にあります。外国人があなたのアパートやマンションを利用する機会も多くなっていくことでしょう。そこで、今回は外国人を入居させたことによる失敗談と外国人を入居させる際の注意点について考えてみたいと思います。
入居審査をしていない外国人が勝手に住んでいる!
久保隆彦さん(仮名)は、駅から徒歩10分、築40年の鉄骨造マンションを1棟所有しているサラリーマン投資家です。久保さんの所有する物件のあるエリアは大手機械メーカーの企業城下町で、外国人労働者が多い地域のため、アパートやマンションへの外国人の入居需要がとても多いことでも知られています。
外国人は少々古い物件でも文句を言わずに借りてくれるので、久保さんは家賃保証会社の審査が通り、さらに連帯保証人がいて支払いに問題が発生しなければ入居をさせていました。
久保さんは本業があるので、物件の管理は管理会社に全て一任していたのですが、あるとき管理会社から連絡がありました。家賃滞納者がいたので家賃の督促に物件を見に行ったところ、玄関脇の駐輪場には住人の倍以上の数の自転車が止められておりました。
よくよく調べてみると、物件を借りた人の部屋には入居審査もしていない不法滞在の外国人が勝手に住んでいるということが判明したのです。ここまで問題が拡大するまで様子がおかしいということに気がつかなかった管理会社にも問題がありましたが、久保さんも同行して物件を一度見にいくことにしたのです。
部屋の痛みが酷すぎてリフォーム代の出費が…
物件を見に行った日には、家賃滞納者には会えなかったので、連帯保証人に連絡したそうです。ところが、連帯保証人は自分が連帯保証人になった覚えがないとのこと。保証人承諾書を見せても自分の自筆ではないと言う始末。
さらに近隣の人に聞き込みをしてみると、入居審査を経ていない不法滞在者が増えたことで最近では、自分の物件で深夜のお酒がらみの喧嘩が多くなっているそうなのです。しかも、人間関係のトラブルで派手な喧嘩に発展することも多く、警察沙汰になることも多いそうです。
また、生活習慣の違いも大きな問題になっていました。外国人の入居者たちは、ゴミの分別をするという習慣がありませんでした。管理会社が、いくら注意してもゴミの分別はできなかったようです。そして、靴を脱ぐという習慣がない外国人が住んでいる部屋では土足で上がり込み、床に水が漏れても掃除をしようという感覚がないため、床の痛みがひどくなっていました。
こうした生活習慣の違いから、退去をするときにはリフォームを全面的に行わなければならず非常に費用がかかるということが判明しました。更に、追い打ちをかけるように物件自体の悪い噂が広がってしまい、優良な入居者を集めるのも難しくなってしまいました。家賃を安くしたり、入居審査を緩くすれば、属性のあまり良くない人たちは入居してくれるのですが、一方で物件はどんどん荒れていきます。
属性の悪い人たちが引き起こすトラブルで、属性の良い人たちは全く寄り付かなくなってしまったそうです。空室が目立つようになりローンを返済するためのキャッシュフローも確保できなくなってしまったので、久保さんは、泣く泣くその物件を売りに出したとのことでした。
外国人入居者に慣れている管理会社に依頼する
外国人の入居需要が高いエリアでは、外国人を対象に入居者募集を掛けている大家さんが少なくありません。外国人の入居者は文化や価値観の違いもあるため、共同生活が送れないケースも出てきます。ですので、そうした文化の違いから来る問題に対しては、入居審査には細心の注意が必要になることもあります。
ある管理会社の話では2007年、2008年頃は不法滞在をしている外国人の方が、すでに賃貸契約を結んでいる外国人入居者の部屋に、勝手に住んでいる事例というのは、よく聞く話でした。しかし、最近ではアジア諸国の所得水準が上がったため、そのような外国人入居者はかなり少なくなったといいます。
こうした事情があるために最近、不動産投資をスタートしたという人の中には外国人入居者に対して寛容な人も多くなっています。事例で出てきた久保さんのように、家賃保証会社の審査が通りきちんとした会社に所属して支払能力さえあれば入居を許可している方も多いようです。しかしながら、久保さんの事例ほどひどい問題ではないにしても、文化や価値観の違いからトラブルを起こすケースもあるようです。
よくあるトラブルのケースとしては、ゴミの分別ルールが守れない、料理の食材や香辛料の臭いをそのまま放置している、騒音に関するトラブルなどです。ある物件の事例では、自宅のお風呂の中で香辛料をいっぱいにまぶした漬物をつけていたというケースもありました。
彼らにとっては、そうやって漬物を作るのが日常生活の一部なのかもしれませんが、日本ではそのように共同住宅では漬物をつけたりしないので、価値観の違いや文化の違いを理解してもらう必要があるのです。
外国人をターゲットにして入居者を募集するのであれば、外国人入居者の管理に慣れている管理会社に依頼するのが基本的に良いと思います。価値観や文化の違いというのは、なかなか事前の書類審査や面談などの入居審査だけではわからないものです。前述のお風呂の中で漬物をつけていた事例でも、その外国の方が働いている会社は一流企業で審査上はなんの問題もなかったということでした。
ところが、外国人入居者で実績を持っている管理会社では、さまざまな方法で優良な入居者を判別するノウハウがあります。ですので、過去に外国人の管理で経験があるなど、きちんとノウハウをもった管理会社に依頼するというのが基本中の基本になります。
経験の豊富な管理会社に依頼すれば、事前の入居審査でもかなり厳しくチェックしてもらえますし、実際にトラブルが発生したときにも独自の解決のノウハウがあるので問題は最小限度に抑えられるでしょう。
外国人入居者の入居審査で注意すべきこと
自分で管理している物件で外国人入居者によるトラブルを防ぐためには、事前の入居審査でチェックを厳しくすることが重要です。たとえば、不法就労者かどうかを調べる外国籍の本人確認は、市区町村が発行する外国人登録証明書を調べることである程度判明します。
外国人登録証明書は2012年から氏名や住居地、在留資格、在留期間などが記載された在留カードと特別永住者証明書に変更されたので、まずはそちらの証明書を見て本人確認を行うことが原則です。併せて勤務先の健康保険証など本人を確認できる証明書もチェックして、勤務先に在職確認を行い勤務実態があるかどうかを確認しましょう。そこまで審査で行なっておけば、不法就労者を審査でお断りすることができます。
入居審査時での面談でトラブルを未然に防ぐ
一方で、審査だけでは判断できないのが、勤務実態の虚偽報告になります。このため勤務実態などの虚偽報告があった場合、賃貸借契約を即解除するという項目を賃貸契約書に入れておくことも重要になります。
ただし、書類だけで不法就労者や不良入居者を見分けることはなかなか難しいものです。また、トラブルを起こすような人なのか、その人となりを判別することもできません。そこで、オススメの審査方法が実際に会って審査をすることです。アナログな方法ですが、実際に会うと問題を未然に防ぐことができるケースが多いようです。
外国人でもきちんとコミュニケーションが取れるのかどうかを見分けるのは非常に大事です。片言の日本語であっても話し方や雰囲気などでコミュニケーション能力が高いのか、それともそうではないのかは良くわかります。
こちらが話しかけているのに、何も反応をしなかったり、不機嫌そうな顔で応対していたら、ちょっとしたコミュニケーションのズレで大きなトラブルになる可能性もあります。また書類が不備であったり、面談の時間に遅れてきたりなどその人のいい加減さも面談で把握することができます。物事を処理するときにいい加減であったり、怠けていたりする人は、家賃の振り込みなどもいい加減になるものです。その人の人となりを判断する貴重な機会になりますので、きちんと対応するようにしましょう。
自主管理における入居審査については、家賃保証会社で審査を通ったからといってすぐにOKとするのではなく、賃貸借契約書を面談時に書いてもらうなど、なるべく面談の機会を増やし入居者の人となりを見るなどして、きちんと自分で判断をしましょう。自主管理が難しいという人は、入居審査を厳しめに行なって欲しいとか、きちんと審査するように伝えるなど、管理会社に依頼しておくことも重要です。
また、よく発生するという臭いや騒音トラブルについては、価値観や文化の違いという大きな壁が存在します。前述したように外国人の入居者の中には、その行為がトラブルだと思っていない人も多いものです。
そのため、問題行為を理解してもらうことに、難しいところもありますが、入居者に対して「●●の理由でクレームが発生した事例があるので、気をつけてください」と貼り紙をしたり、直接相手に伝えたりなどして事前に注意しておくことが有効な方法になってきます。そして、なるべく物件の巡回を増やすようにして、問題行為が発生したらその場で注意するということを地道に繰り返すしかありません。
地道な積み重ねによって、入居者に理解してもらえることも多いのです。外国人入居者が得意な管理会社であれば別ですが、入居者管理には色々と配慮が必要なので、外国人入居者を管理したことがない管理会社に丸投げをするのは止めた方がいいでしょう。
まとめ
人口減少社会に突入している日本では、外国人入居者をターゲットに入居者を募集する機会は今後増えていくと考えられています。しかし、そこには価値観や文化の違いの壁が必ず存在します。壁を乗り越えて、物件の資産価値を下げずにキャッシュフローを生み出していくためには、優良な入居者を選別するための入居審査がとても重要になります。手を抜かず積極的に関わってビジネスを成功させるという強い気持ちが成功のカギとなるのです。