【J2第6節】(NACK)
大宮 2-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[大]ムルジャ(51分)、横山知伸(73分)
<警告>
[大]菊地光将(17分)、金澤慎(23分)
観衆:5,428人
主審:三上正一郎
副審:桜井大介、藤沢達也


「前半にしっかり決めることができれば、逆の結果になっていたと思う」という小野監督のインタビューは、決して負け惜しみではなく、決定機に決め切れなかったことのツケ、そして90分という時間のなかでの展開(流れ)の変化をまざまざと感じさせられた一戦でした。

J1からの降格組・大宮との初対戦。もちろん引退した藤本主税の古巣でもありますが、九州J-PARKの戦前のプレビューでは井芹さんが、「遡ればお互いにNTTのチームを母体に生まれた経緯があり、熊本の前身であるNTT西日本熊本FCに金川幸司というFWの選手が期限付き移籍で在籍したこともある」と、往年のファンにはとても懐かしい名前を挙げていました。

われわれが「青の時代」と呼んでいる、熊本のトップチームがNTT西日本熊本だった頃。同じNTTチームを母体にして、NTT東日本をバックに大宮があるのだったら、西日本は熊本を押し上げてくれるのではないかと夢見ていた頃もありました(事実、あの頃の胸スポンサーはNTT DoCoMo九州でした)。

しかし、同じNTT系列で二つもJクラブはいらないという方針のもと、企業チームの強豪NTT西日本熊本はクラブチーム・アルエット熊本に姿を代え、紆余曲折を経て、なんとか熊本にJクラブを生むことができたのですが…。いささか古い話しですが、2001年12月、三ツ沢での天皇杯横浜FC戦。完全アウェイのなかで10人あまりのわれわれのゴール裏に、NTT繋がりということで大宮サポーターの援軍が駆けつけてくれ、共に戦ったことは今でも忘れられません。

…まぁ、色々なことがありました。そんなことも思い出させる大宮とのアウェイでの初対戦でした。

20150405大宮

熊本には、ようやくキャプテン・園田の傷が癒えて先発に帰ってきました。

指揮官が言うように、前半は完全に熊本が主導権を握っていたと言っていいでしょう。それは、相手を必要以上にリスペクトするのではなく…。受け身(リアクション)ではなく、自分たちでアクションを起こす積極的な戦い。逆に言えば、解説の山口氏から「前半は寝ていた」とまで表現された大宮。実に緩いアプローチ。ほぼ自由にプレーさせてくれていました。

14分に、ハーフウェイライン付近で相手ボールを奪うと、齊藤が持ち上がって左から追走して追い抜いた平繁にパス。平繁がPA内で切り替えして右足シュート。決まったと思ったものの、これをGK加藤が鋭い反応でセーブ。20分にも、中盤でのワンタッチパス交換から齊藤がタメて平繁の上がりを待ってパス。平繁のシュートは今度はGKの脇を抜けましたが、後ろに構えたDFの残り足に当たってクリアされる。不運…。

「熊本は点を取っておきたい時間帯。ニューイヤーズカップでも、決定機を逃し続けて敗れました」と、スカパーの実況にも指摘される。

44分には、右からの齊藤のクロスに平繁がファーに走る。これは目前で敵DFがクリアしたものの、それをPA内で拾った中山がすかさずシュート。しかし、これもGK加藤にブロックされてしまいます。完全に当たってきた加藤。

解説の山口素弘・元横浜FC監督も指摘するように、大宮はアンカーの高柳をフリーにしてくれていました。もう一点は上村が大宮ボランチの金澤とのマッチアップで優位に立てていたこと。

しかしハーフタイムを挟んでの修正、後半開始から金澤に代えて横山に代えてきたことが状況を一変させます。

横山がしっかり守備を築くことで、前に顔を出すことができるようになったカルリーニョス。開始早々からの大宮の波状攻撃。なんだかバタバタした感じのなかで、51分の大宮、左前線に送ったボール。ムルジャが園田と競って勝つと、PA左から強烈に打ち込む。GK原の伸ばした手をかすめてゴールに突き刺さります。

大宮もこれでやっと落ち着いた様子。完全に主導権を奪い、格上の”威厳”を示します。熊本は前半が嘘であったかのように防戦一方。

金澤との優位に立っていた上村も、「ハーフタイムに替わるというのを聞いて、ちょっと狙うポイントをどこにするかというのをチーム全体でまた考え直すという感じだったので、その中でもうちょっと早くそこのポイントを掴めれば良かったですけど、そこが入りはあまり掴めず、結局最後まであまり掴めずに終わったという印象はあります」と言う(Jリーグブログ | J SPORTS)。

残念だったのは、ここから養父、常盤、巻と投入したにも関わらず状況が打開しなかったことそれより、73分、左CKから横山にヘッドで決められた追加点。ゾーンの隙を破られる。原が前に出たのに触れていない。前節に続く、いや前々節から続く同じような失点。過密日程の3連戦のなかで全く同じようなシーン。研究されているのか。このセットプレーからの失点の意味はとても重いと思われます。

それでも…。なんとかポジティブな点を見つけようと思うなら。決めきれなかったにしても、前半の決定機のシーン。選手同士の距離感が近く、綺麗なワンタッチパスで完全に崩し切っているということ。連携が徐々に高まってきているということ。単純化して言えば、連携と言うのは、ワンタッチパスが狙える距離感をいかに組み立てられるかということ。

先制点の責任を一身に背負い、主将・園田にとっては辛い復帰戦になりましたが、やはりDFラインの安定感は高まった。

一時期はNTT系の先輩格と慕っていた大宮との初対戦。気後れはありませんでしたが、しかし、さすがに一日の長がむこうにありました。「熊本の向かっている方向性は間違っていない」。そう断言してくれた山口素弘の言葉が、今節の救いになりました。熊本の歴史は、まだまだこれから。下は向きませんよ。

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