読売社員「政権べったり」前川前次官報道に困惑
「あの報道以降、SNSで『読売新聞へ不買運動を起こそう』という呼びかけが起こった。それに同調した人たちなのか、読者センターに『購読をやめる』というメールが寄せられているようだ。さすがに不買運動にまで発展するとは思わなかったようで、上層部も気にしていると聞いています」(読売新聞社員)
不買運動の有無について読売新聞広報部に問い合わせたが、回答は得られなかった。
●明らかに「ワケアリ」
元上毛新聞記者で、民進党衆院議員の宮崎岳志氏は「読売内部の記者も嘆いている」と語る。
「私が知る読売記者は『こんなことをやらされるなんて』と泣いていました。他にも、複数の記者が会社のやり方に怒っていて、『すべての読売の記者が同じだと思わないでください』と。8割はそういう良識のある記者でしょう。でも、越えてはならない一線を越えてしまった」
元読売新聞大阪社会部記者でジャーナリストの大谷昭宏氏は、「あの記事の書き方は完全に『ワケアリ』だとわかる」と語る。
「同じニュースでも東京、大阪、西部それぞれの本社が編集するので、見出しや記事の大きさは異なる。でも、あの記事はすべて同じ。これは依頼が断れない記事を指す『ワケアリ』の特徴です。官邸との癒着を読売は否定するだろうが、内部にいた人間なら誰でもわかる」(大谷氏)
さらに、記事にはもうひとつ不自然な点があるという。
「『教育行政のトップとして不適切な行動に対し、批判が上がりそうだ』と演説を入れている。社会面の事件報道で『容疑者に世間の怒りがわき起こりそう』などとは書かない。原稿の趣旨まで決められている。政権のために、社会部がアシとなって記事を書く。こんな理不尽になぜ記者は抵抗しないのか」(同)
安倍首相は、今国会でも自身への批判に「印象操作だ」と繰り返す。その言葉が向けられるべきは、官邸ではないのか。(本誌取材班)
※AERA 2017年6月12日号